2016年11月10日木曜日

コインランドリーの悪魔/tout va bien


踏切の鐘が遠くからくぐもって聞こえる
終電が息をひそめて行き過ぎる
薄く張った静寂をやぶらないように
口に指をあててタタンタタンと遠ざかる

つい昨日
世界が変わった
それ以外は万事OK
いつもどおり
ごろつきは町角で
酔っぱらいの袖を引き
野良猫が大きく
伸びをして歩き去る

千年前と同じ月明かりの下で
無人の店が眠らずにぽつんと開いている
乾燥機がワンコインで15分と書いてある

24/7/365

男がひとり、ドブに落ちたような
困惑した顔つきで首をかしげながら
くたびれて見分けがつかなくなったあれとこれを
まるめてコインランドリーに放りこんでいる

壁に沿ってずらりと並んだ乾燥機は
バカでかいフルレンジスピーカーに似ている
見ていると腹にくる低音をひとつ、ボンと
今にも鳴らしてくれそうな気がしてくる

古い木のスツール
足もとには缶から
何しろ普段からあまり
使われてないから
テーブルの灰皿に
寝転がる吸い殻
舶来、てかハイカラな
見慣れない銘柄

つい昨日
世界が変わった
それ以外は万事OK
いつもどおり
例の店は変わらず
ぽつんと開いている

24/7/365

悪魔がひとり、ドブに落ちたような
困惑した顔つきで首をかしげながら
くたびれて見分けがつかなくなった善と悪を
まるめてコインランドリーに放りこんでいる

どっちがどっちだかわからなくなるなんて
これ以上悪魔としてやっていく甲斐はまだあるのか?

「知ったことか、くそくらえだ、好きにしたらいい
こっちのテリトリーまでグレーに塗りやがって」

夜は今日も規律を重んじるマフィアの
ボスみたいな態度で昏々とふける

宵の雨で冷えたアスファルトにやわらかな
苔が絨毯を転がすように敷かれていく

つい昨日
世界が変わった
それ以外は万事OK
いつもどおり

これは録音された音声ガイダンス
子守唄代わりになる気の利いたサービス

男がひとり、ドブに落ちたような
困惑した顔つきで首をかしげながら
くたびれて見分けがつかなくなったあれとこれを
まるめてコインランドリーに放りこんでいる


2016年11月7日月曜日

形からみるテレビの歴史とその未来予想図


かつてテレビはブラウン管という一抱えもある大仰な装置が必要だったので、その形はほぼ箱でした。今は液晶だから、言ってみれば板です。僕は地デジを機にテレビを観なくなってしまったので最近の事情にはそれほど明るくない、というか率直に言って全然知りませんが、その厚みが日に日に薄くなっているだろうことは容易に想像がつきます。そのうち部屋の壁の好きな位置にぺたりと貼れるようになるのはまちがいありません。

スマホやタブレットでディスプレイをひとり1枚ずつ所有する現代にあっては、形状どころかテレビという概念そのものが薄くなりつつあるような気がしないでもないですが、それはまあともかくテレビの形とその変遷をざっくり図にするとこうなります。


療養中の友人にお見舞いとして千羽テレビを折る日もそう遠くないはずです。

2016年11月4日金曜日

タマフル缶バッジ@ラジフェス2016のこと


つい先日のこと、とあるライブハウスに「小数点花手鑑」の特装版を持っているという、たいへん貴重な青年がいたのです。

注意:スターウォーズ的に言うと「A long time ago in a galaxy far, far away……」くらい古い話なので、ひょっとするとご存じないかもわかりませんが「小数点花手鑑」というのは、小林大吾というこれまた検索してもろくにひっかかりもしない地味な中年男性が世界に向けてほそぼそとリリースした4枚目に当たる音楽アルバムです。歌は入っていません。


そんなレアアイテムをお持ちだなんて、それはさすがにちょっとしたことだとおもうし、四葉のクローバーをみつけたようなよろこびもあってあれこれお話をしていたところ

「ツイッターとかやってないんですか」
「一応、やってるんだけど、でも……」
「えー!まじですか!検索します!」
「ごめん、検索しても出てこないかも……」
「ライブとかやらないんですか」
「あ、えーと去年からちょこちょこ……」
「まじすか!どっかで告知してます?」
「うん、ブログで……」

これはまあ、このブログが普段いかに情報の発信地としての用を成していないか、やんなるほど如実に表している格好の例といえましょう。実際、2007年まで遡ってみても、それらしい活動履歴を記してあることのほうがよほど少ないのです。「需要はあるのか?」と問われれば「そのへんの石ころだって需要があるから転がってるわけじゃないだろ!」と論点を若干ずらしながら逆ギレするほかありません。

詩人を名乗る男が詩人らしい活動をせずに何をするかというのはもちろん、考え出すとキリがない難しい問題です。しかししいていえば毎週土曜日にTBSラジオで絶賛オンエア中である「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」、通称タマフルが今週末の「ラジフェス2016」@赤坂サカスにて販売する缶バッジをデザインしたりしています。

なぜだかは僕もよくわかりません。

ちょうどオントローロの「09」と「10」の間の時期だったとおもいますが、経緯はどうあれこのときほどタマフルリスナーのことを恋い焦がれんばかりに考えまくっていた男は僕を置いてほかになかったはずです。

最初にポンと思い浮かんだのはこれだったのですが



冷静に考えてみるとこれはタマフル愛というより宇多丸さんに対する僕の個人的な愛情表現にすぎません。これではダメだ……身につけるのはリスナーなのだから、リスナー同士がお互いに一目で通じ合うような、そしてできれば連帯感をより高めてくれるようなものでなくてはダメだ……!とひたすらリスナー視点を突き詰めた結果、12種類の図案をこしらえ、そこからさらに厳選された5種類がぶじ、缶バッジと相成ったのです。


図案は当日のお楽しみということなので、ここで流出するような野暮はいたしますまい。でもタマフルリスナーであればきっとご満足いただける仕上がりになっているはずです。問題はタマフルリスナーがこのブログを訪れることはたぶんないということですが、そんな身もふたもない現実はこの際脇にうっちゃっておきましょう。どうかリスナーのみなさまがほくそ笑んでくれますように。

使われなかったラフ図案

2016年10月25日火曜日

黄色いパワーショベルが池で豪快に水浴びをした夜の話



みつめ合い

恋に落ちるふたり

あっ

あー!

別れ

とまあそんなわけで、通算12回目となるオントローロも恙無く、ここで恙無くというのはもちろんいろいろあったけど死人が出なくてよかったよね程度の意味合いですが、ともあれ万雷の拍手で幕を閉じました。その熱狂ぶりたるやすさまじく、端からパタパタとドミノ倒しのように失神者続出、逃げ出そうとした人も階段でパタパタと倒れていったばかりか、路上の通行人まで巻きこんでパタパタと続き、最終的には煙草でも吸おうとマッチに火をつけた人のすそをつかんでまた倒れ、手から落としたマッチの火がたまたま道に転がっていた打ち上げ筒に引火した結果、ドカンと派手な音を立てて打ち上げられた尺玉が夜空にアメイジングな大輪の花を咲かせたというのだから、これはやはり相当なことであったと言わねばなりますまい。


ようやくお目にかかれた初めましてのみなさま、去年以来ひさしぶりのみなさま、そして欠かさずおいでくださるみなさま、本当にありがとう!

回を重ねるごとに「どの曲をやった」ということがあまり大きなポイントではなくなりつつあるので(これはたぶんオントローロというパッケージの特徴のひとつです)、何をしたと部分的に取り上げづらくて歯がゆいのですけれども、いつもと違った何かをひとつ挙げるとするなら、今回は「脱落者/formerly known as the super brother」のオンビートバージョンがありました。少なくともパフォーマンスとしては今回もっとも正統のポエトリーリーディングであったと申せましょう。ビートに絡めることでグッと心にしみる、味わい深い一編になったとおもいます。長所とか才能はこういうところにこそ、惜しみなく120%注ぎ込みたい。


初めての方はただでさえ初めて目の当たりにするKBDGの風貌とかライブアクトがこんなんでホントすみません。


次回のオントローロは12月、さっきボスに確認したところ、11日(日)とまさかのクリスマス当日、25日(日)です。クリスマス自体はとくに興味がないのでどうだっていいようなものですが、そうなると毎年それを上書きするために強行している安田タイル工業の慰安旅行は一体どうなるのか、しかしどう考えても優先順位としてはオントローロのほうがはるかに上なのであまり深く考えないでおきましょう。

ぜひおいでませ!

2016年10月19日水曜日

ヨウスコウカワイルカ的なお知らせをひとつ


最後にそんなことがあったのはかれこれ何年前のことだったか、それともそんなことはかつて一度もなかったのか、当の僕がまったく記憶にないくらいなのでこう申し上げてもオオカミ少年並みに信じてもらえないかもしれませんが、11月はMother Terecoという素敵なエレクトロユニットのお二人にお呼ばれして、ちょっとしたライブセッションをしに横浜へ参ります。

セ……

セッションですって……!

うっ……

(いかにも告知らしい告知に目頭を押さえています)

(このブログは開設以来かれこれ10年、告知らしい告知のあったためしがないのです)


Mother Tereco – Electronic & Acoustic Session
2016年 11月19日(土)
@アートフォーラムあざみ野 1F レクチャールーム
開場 16:30 開演 17:00
前売券2,000円 当日券2,500円 →チケットはこちらから

出演:Mother Tereco
ゲスト: 小林大吾(スポークンワーズ) Dustin Wong(ギター)

主催:アートフォーラムあざみ野 TEL:045-910-5723
共催:横浜アーツフェスティバル実行委員会

→詳細はこちら


そもそもオントローロを除けばライブアクト自体が皆無に等しい、セッションとなるとさらに記憶にない、したがって下手をしなくともこれが最後である可能性は十二分にありうる、たいへん珍しい機会です。先だって絶滅したはずのヨウスコウカワイルカが長江で目撃されたニュースがありましたけれども、まさかあるとおもわなかったというインパクトではこれに匹敵すると申しても過言ではありますまい。誰が驚くって、今のところ僕が率先して驚いています。

僕の出番は全体からするとちょこっとですが、今もって僕らが何をしようとしているのかまったくイメージできていないくらいなので、思いもよらないような、もしくは目も当てられないような、結果としてMother Terecoのお二人に「台無しにしやがって!」と袋叩きにされるKBDGを目の当たりにできるかもしれません。その覚悟だけならすでにできています。

すくなくとも僕が今、心から楽しみにしていることのひとつです。ぜひおいでませ!

2016年10月14日金曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その255

安田タイル工業の思い出

ちょっとうっちゃっている間に人の気配がまったく感じられないブログになってしまったので、閑古鳥に餌をまきながら久しぶりの愛らしいさえずりに耳を傾けております。

おまえの母ちゃんデビッドソンさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がなんとなくつけています)


Q: 田舎住まいなので野生のサルに悩まされています。一匹ならばシャイニングウィザードでも喰らわせてやるのですが、なにせ奴ら数十匹の集団で行動しているので…なにかいい対処法はありませんでしょうか⁈ちなみに、サルを駆除して市役所に(耳を)持っていくと、一匹5万円もらえるらしいです。


なんならこちらも徒党を組んで一斉にシャイニングウィザードでいいんじゃないかとおもいますが、どうでしょうか。それにしても1匹5万円というのはなかなか聞き捨てならない額ですね。耳か……。

大好きなGang Starrの "Moment of Truth" という曲に "Every dog has its day." というラインがありますが、同じようにサルにはサルの日々があり、おそらく彼らなりの言い分というものがあります。僕らには厄介なことこの上ない害獣かもしれませんが、彼らからすると僕らこそ勝手に土地を占拠して元々いた連中を追い払う征服者みたいなものです。語弊を気にせずに言ってしまえば、イスラエルみたいなものですね。


しかし経緯はどうあれ現実にこういうものとして定着してしまっている以上、すべてをゼロにリセットして仕切り直すのは簡単なことではありません。現実的でもないでしょう。

もちろん人道や倫理をものともしない圧倒的な武力による殲滅も、ひとつの手です。100年もすれば残るのは記録と、どういうわけだかあまり活かされた試しのない教訓だけになります。世界の歴史とはおおむねそういうものです。

ただし、殲滅の場合は文字どおり、100%でなければなりません。1匹でも残せば水をかけようと踏みつけようと決して消えない憎悪の導火線に火をつけることになります。1匹や2匹とおもうかもしれませんが、コロンビアの対ゲリラ戦だってまさか50年以上もつづくとは当時誰ひとり想像もしていなかったはずです。

こうしたリスクを考え合わせると、やはり現実的なのは粘り強い地道な交渉だけであると言わねばなりません。幸いなことに、先に挙げたコロンビアはケーススタディとして格好の対象になるでしょう。なんとなれば政府と革命軍が和平交渉のテーブルにつき、半世紀もの時を経て少なくとも代表同士では包括的な合意にこぎつけた結果、現大統領がノーベル平和賞を受賞するまでに至ったからです。

サルに悩まされる地域で多数決をとったら「条件がいささかサルに有利すぎるのではないか」と言って否決される可能性もあります。しかし重要なのは対立する双方が交渉のテーブルにつくことです。すべてはそこから始まります。純粋に生物学的な理由から対話それ自体に多くの時間を費やすことになるとおもいますが、僕らも服を着てしっぽがないことを除けばほぼサルです。人智を尽くせば彼らとツーカーの関係を築くことも夢ではありません。

個人的にはサルの群れに政治参加を認めること、いたずらや農作物強奪なんかの罪を減免すること、市民権の保障といった提案には、未来に向けた共存共栄を考える上で大きな意義があるのではないかとおもいます。

サルとゲリラを一緒にするなとお怒りの向きもあるかもしれませんが、それはサルのセリフであると念のため申し添えておきましょう。

がんばってください。ノーベル平和賞はともかく、イグノーベル平和賞ならおそらく余裕で射程距離内です。


A. まず群れのボスを交渉のテーブルにつかせることです。




質問はいまも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その256につづく!

2016年10月2日日曜日

「オントローロ 10」予約受付のお知らせ

前回、「09」は連休の中日だからいつもより来やすいにちがいないと胸を張ってお知らせしたのですけれども、つらつら考えたらいつもより来やすいということはいつもより早くから予定が埋まりやすいということであり、ひいてはいつもより早くお知らせしなければ却っていつもより来づらいのであって、ひょっとして結局のところ何ひとつアドバンテージなどなかったのではないか、というかそもそも3ヶ月くらい前から余裕をもって告知をはじめるのがふつうなんであってひと月前にいきなりドタバタするほうがおかしい、ちょっとはみんなのきもちを考えたらどうなんだ、下手をしたらむしろいつもどおり来づらい「10」のほうが相対的に来やすいことになるじゃないか、変だなあ、とまあそんなわけでいつもどおりの来づらさに安心して舌打ちいただけるオントローロ、「10」のお知らせです。


オントローロ 09&10 @渋谷 Flying Books
09:2016/10/09(日)
10:2016/10/23(日)
open: 19:00 start: 19:30
fee: ¥2,500(1ドリンク付) 各40名

12:00になるとお申し込みが可能になります。

※今回は「10」のご予約です。「09」はこちら

※「09」と「10」の内容は100パーセント同じです。できればどちらか1日をお選びくださいませ。

※仮に完売となっても、何らかの事情で撤回される場合があります(というか毎回かならずひとつふたつ空きが出ます)。その際はおそらくPassMarketの表示が「チケットを申し込む」に戻りますので、ときどきチェックしてみてください。



オントローロとは、アルバムからの楽曲がハンバーグだとすればそこに付け添えのグラッセやしおしおのサラダ、固いパン、白湯みたいなスープにデザートっぽい何かとドリンクも強制的についてきて完食するまで帰れない、トゥーマッチなサービスが売りのささやかな独演会です。

毎回1/3くらいが初めましての方なので、二の足をお踏みの方もどうか気楽においでませ!