2026年2月13日金曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その470


ハーバード大学芋さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q. 年末で家の前の木が4本切られ、景色が変わりました。一番良い休日の使い方はなんですか。


うちにはかつてお隣に2軒並んでいて、それぞれ趣の異なる古い民家でした。一軒は庭がとても広くて、じつに見事な桜の大樹があり、春になるとうちの窓から桜の花びらが吹雪のように吹きこむという、それはそれは夢のような風情があったものです。桜の幹には区の保存樹木というプレートが付いていたので、この先もずっと大事にされていくんだろうな、と思っていたらあるときあっさり根元から伐り倒されてしまいました。土地まるごと売却されたら保存もへったくれもないのかもしれません。立派なお屋敷も取り壊され、更地になり、今は6軒の戸建てと軽量鉄骨のアパートが建っています。23区内にしてはなかなか広い土地だったことがよくわかりますね。

もう一軒も土地としてはかなり大きめだったのだけれど、庭というよりもむしろ鬱蒼とした背の高い雑木林の中にあばら家がぽつんとあって、完全に日当たりゼロという、なんだか魔女の家みたいな印象でした。今となってはすっかり見かけなくなったバキュームカー(!)がたまにきていたので、2010年くらいまでトイレが汲み取り式だったことになります。このあたりでは最後の生き残りだったとおもう。

これはたしか昔ブログにも書いた気がするけれど、あるときうちのベランダからハンガー(クリーニング屋さんでもらってくる針金のやつ)が毎日のように消失する事件がありました。はてなと首を傾げながらふと雑木林を見上げると、ずいぶん高いところに色とりどりのハンガーで作られたカラスの巣があり、絶句した記憶があります。カラスの巣を見たのも、それが異様にカラフルなことも、そしてその材料が全部ハンガーだったことも、その巣に小さな雛鳥がいたことも、何もかもが初めて見た光景だったので、忘れられません。そんな魔女の家も今はなく、めちゃおしゃれなマンションになっています。なのでベランダからの視界にはコンクリートしかありません。

一番良い休日の使い方は、そうですね、休むことだと思います。休む日と書いて休日ですからね。

休日というのは言ってみれば何をするのも自分で決めてよい自由行動日でもあるので、いかに楽しく有効活用するかという観点でつい考えてしまいがちだし、それはそれでまちがってはいないけれども、一方でそれはともするとある選択が得で、そうでないと損という損得勘定に転じかねません。目が覚めたら夕方で1日をムダにしたと感じるのはまさにその典型です。

しかし休日にしかできないことをしたという点ではどこかに出かけて欲望を満たすこととじつは完全に等価でもあります。休日という字義にも過不足なく合致している以上、むしろごろごろと寝過ごすことのほうがよっぽど本来のあり方であると申せましょう。僕なんかは対価の生じる業務を除いた人生のあらゆる局面において、ムダにこそ豊かさがあると考えているくらいです。


A. 気が済むまで存分に休むことです。




質問はいつでも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その471につづく!

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