ちいかわの流れのようにさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)美空ひばりの幻の名曲ですね。
Q. 好きな響き、発音の言葉はありますか?意味や字面は考えないで、純粋に響きや発音した時の舌触りが好きな言葉です。自分は"枯淡"=コタンです。漢字や意味で考えると侘しさがありますが口の中で転がっていくような感触に愛嬌があり気に入っています。
日常で使うことはこの先たぶんないだろうな、と心の引き出し奥にしまいこんでいた言葉を、とうとう引っぱり出すときがきましたね……。僕にとってそれは「枢」です。「くるる」と読みます。
可愛い〜!
何となく物々しい漢字の字面に対して、くるるという超無害な読みは、そうですね、映画「マッドマックス:フュリオサ」で筋骨隆々の恐ろしいディメンタス将軍が大事に持っていたちっこいテディベアを彷彿とさせます。
僕は元来ギャップというか相反性を人生における喜びのひとつに位置づけ、目にするたびにいちいち悶絶する気質の男ですけれども、これは文字と言葉でも同じように心くすぐられることがあると気づかせてくれた一語です。
そういう意味では、枯淡(こたん)もそうですね。いつもは気難しい頑固な老人が赤子に頬をゆるめて「よちよち」とあやすのにも似た味わいがあります。
ちなみに枢というのは昔々、まだ蝶番が存在しなかった時代からある、伝統的な開き戸(扉)の一部を指します。具体的には、戸の右端もしくは左端の上下に軸をつけて、この軸を受ける穴に差し込むことで戸が回転式に開閉できるわけですね。この軸(戸の上下にある出っ張り)もしくはこの機構全体を指す、それがつまり枢です。
その用途からしてすでにくるる感溢れることにまたキュンとさせられます。実際、くるんてなるための部分ですからね。そのまんますぎてちょっと照れくさい印象を、あえて鯱張った漢字でカバーするあたりもポイントが高い。キャラクターとして完成されている、と言ってもよいでしょう。ぬいぐるみやアクスタが飛ぶように売れる何らかの未来が思い浮かぶようです。
そして枯淡と同じく、音としても心地よい点こそ重要です。転がるような、螺旋を描くような、そして口の中でいつまでも味わえる印象があります。枯淡よりもはるかに使用頻度の低いと思われることがもどかしくてなりません。うちにある古い茶箪笥には、蝶番でなくこの枢で開く戸が実際についていますが、さすがにこれを一般的と言うことはできますまい。というかそもそも茶箪笥って何だよとツッコまれる可能性のほうがたぶん高い。
シンプルな構造の名称なので、絶滅はしないかもしれないけど、今となっては永遠に絶滅危惧種である、とは言えそうな言葉です。
「ほとんど見かけないけど原始的な戸の出っ張り部分」にこの愛らしい名がついている、という事実もなんというか、ちょっといいんだよな〜。
僕としては言葉としても、また実際に戸としても、見かけたらラッキーみたいな、幸運の象徴でもあります。コロボックルに近いよね。
A. 枢(くるる)です。
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その470につづく!
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