2025年12月26日金曜日

アグロー案内 VOL.10解説「水茎と徒花/black&white」


KBDG作品は基本的にどれもいろんな意味でラブソングですが、ロマンスを中心にどんと据えたものは多くありません。「水茎と徒花/black and white」はその数少ないうちのひとつです。というか、これと「処方箋/sounds like a lovesong」くらいじゃないだろうか?

とはいえこれまで正規リリースはしておらず、YouTubeでの公開に留まっておりました。ありがたいことにこのスピンオフとして、手紙を食べちゃった側の視点で描かれたtoto嬢の「水茎と徒花と球根/black and white pt.2」、タカツキによるめちゃカッコいいラップ版徒花と水茎/white and black」があります。

なので公開から10年近くの時をへた、これが初の正規リリースです。鉛筆での拙いイメージラフを、御大タケウチカズタケが鮮やかな4K高彩度フルカラーに仕上げてくれてもう感無量と言うほかありません。なんちゅう美しさだろう。じぶんが虎の威を借る狐に思えてきます。

この曲に関してはそもそもテーマが同じことの繰り返しなので、リメイクというよりもむしろ「相変わらず同じことをやっている」と受け止めるべきでしょう。つまりこれもまた、ささやかな後日譚のひとつなのです。あまりに何度も同じことを繰り返しているので、ふたりともすっかり板についています。

またこれは、僕が音楽を用いずシンプルに詩の朗読をするような機会に恵まれたとき、かなりの頻度で詠む一編でもありました。なんとなれば言わんとするところが100%伝わることが初めから確約されているようなものだからです。そしてそうした機会を重ねれば重ねるほど、手紙を読んでから「食うなよ」までの時間が伸びていきました。ビートがないとこの部分をめちゃめちゃ活かせることに気づいたわけですね。

その後、カズタケさんとの「アグロー案内」が始動し、その実演会でもある「アグローと夜」を数度催したところで、ある日ふと天啓に打たれます。ひょっとしてこれ(水茎と徒花)、カズタケさんとなら朗読で得た知見を完璧に活かせるばかりか、「アグローと夜」でさらにおもしろくなるんじゃないだろうか……?

ライブが不得手なのは今も変わらずですが、それを踏まえてもなおそのために形にしておきたいと思えた、という意味においてこれはおそらく初めての作品です。そして実際、その甲斐はあったと断言してよいでしょう。

そういえば10年前に公開したときはただリンクを共有しただけで何も記していなかった気がするので、タイトルについても改めてふれておくと、「水茎」は筆や筆跡のことで、転じて手紙を意味する言葉です。徒花というのはもちろん、実を結ばない花のことですね。どちらも植物由来でどことなく風情を漂わせながら、かつムダな手紙を完璧に示す、エレガントなタイトルだったと今でも思います。

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