2025年7月11日金曜日

アグロー案内 VOL.9解説「饗宴2025/eureka (revisited)」


さて、アグロー案内シリーズでは恒例とも言える過去作品のリメイクですが、今回の「饗宴2025/eureka (revisited)」はすこし意外な形に仕上がりました。

何しろオリジナルにはなかった詞が追加されています。20年近い年月の経過を表していると言えなくもない、いつになく美しいリメイクです。

ただ詞の追加については、初めから意図していたわけでは全然ありません。どちらかといえば、そうせざるを得なかった、というかんじです。

御大タケウチカズタケの手になるリメイクビートはオリジナルにかなり忠実でありながら隅から隅まで超絶アップデートが施されてとんでもないことになっているわけですが、カズタケさんのソロとは別に、オリジナルと異なる構成がありました。

それが後半のフックです。

具体的には「どうぞよりも先に『どうも!』ってあら?イントロでもう負け?まあいいや、あれもこれももらう前にふるまえ!宝箱とまちがえてパンドラの箱を山分け……?マズい、そいつだけはヤバい!ふたを閉めて逃げろ、来るぞ!」の決め台詞みたいな部分ですね。

この部分、オリジナルではバースにつき1度しか出てきません。

というのも、「ヤバい逃げろ来るぞ」というフレーズは、その時点でみんながパーッと散り去るイメージであり、繰り返すものではないと考えていたからです。そういうイメージでなければむしろ僕もフックは繰り返したかった。でもこれはちょっとリフレインには不向きだなと感じたので、やむを得ずというかなんというか、オリジナルでは繰り返さずに1度で止めていたのです。

カズタケさんから送られてくるビートは、あくまで目安であってその尺、構成に従わないといけないわけでは全然ありません。実際、好きに受け止めてもらっていいと僕も言われています。詞に合わせて尺を縮めたり伸ばしたり、カットしたりしても別に怒られたりはしない。

ただ僕としても2人でやっている以上、こう来るならそれに応えたいという思いがあります。オリジナルと構成が異なっていても「むりです!」ではなく「むむ、繰り返すならどう応えようか」とできれば受け止めたいのです。

この曲に関してはとにかく「逃げろ、くるぞ!」を最後にすることが最優先だったので、その前に新たな4小節を足す選択肢もありました。ただやっぱり導入は同じほうがいいよなあと思い直し、元の4小節を2つに分けて、新たな4小節を挟みこんでいます。

その結果、かつてと同じ宴の再現に見えて、実は過去にもこんな宴があった(=以前と同じ宴ではない)と終盤で全体の時間軸がシフトする着地になったのです。オリジナルを知らなくても問題ないけど、知っていれば別の意味合いを持つというテクニカルな帰結には、ほんとにもう、続けててよかった…としか言いようがありません。個人的に作り直したとしても、絶対にこの着地にはなっていなかったはずなので、このリメイクを気に入ってもらえるとしたらそれは100%、カズタケさんのおかげです。

全編を貫くギターのカッティング、バース後のカズタケソロも失禁レベルで超ステキだし、総じて非の打ちどころのない、完璧な一編である、と改めて断言できます。

また、タイアップとなったアポロニカ学習帳はそもそも神々の育成を謳うチート級のノートであり、神々について語られる「饗宴」ほどうってつけの楽曲はない、と言ってよいでしょう。むしろこの曲のために商品が企画開発されたと考えるほうが妥当なのではないか……?と勘繰ってしまうくらいです。

作品としての強度、恒久性もある……気がするんだけど、ずっと下の世代の誰かに届くことはあるだろうか……?


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