いい知らせが来ることになってる。そろそろ来る、確信に近い、そういう予感がしてる。心の準備も全部できてる…いや、考えもしなかったよ、なんていうか…で感極まって言葉に詰まって、涙が溢れる…これだな。メモしとこう。こないだへし折ったペン、どこやった…?
千里の月はゆうべと同じでモナリザみたいな顔をしている。更闌けてなおあまねく照らしながら見て見ぬふりをしてくれる。千切れたようで覚束ないここだけ浮世のうすいひとひら。落ちると見る間にめくれてひらつく当て所もなくどこへともなく。
ここまで長かった。何もかも苔むした。蔓延る木々や蔦に埋もれる端末が光を放つのを待つ。過ぎ去ったいくつもの夏…。罰ではないにしても遠からぬ顛末。とはいえぜんぶ多めの水に流してこそ、白い鳩がオリーブの葉を咥えてくると言い伝えで学んだ。
燕尾服も誂えておきたい。こんな未開の地でどうしたらいい?「申し訳ありません」と答える合成の音声…まあいい。いずれ開墾されたら鉄筋とコンクリートで密林に摩天楼が聳える。焚かれるフラッシュ、絨毯は赤く、矢継ぎ早の質問を屈強なSPが遮る。
いい知らせが来ることになってる。遠くからはるばる、艱難を退け、辛苦を乗り越え、息も絶え絶えに、待たせたこと、疑ったこと、それをお互いに詫び、涙ながらに一発ずつ殴り合って交わす抱擁とその熱い友情に涙する観衆、万雷の拍手、そんなクライマックス。
薄い壁の向こうから隣人が怒鳴る。あんたこそうるさいと怒鳴り返す前に壁が派手にぶち抜かれてスティーヴン・タイラーに瓜二つのやつがわめき散らす。毒づいて罵り合い、馬乗りで殴り合ったあげく「やるな」「お前も」と交わす固い握手に涙する観衆、万雷の拍手、そんなクライマックス。
千里の月はゆうべと同じでモナリザみたいな顔をしている。更闌けてなおあまねく照らしながら見て見ぬふりをしてくれる。千切れたようで覚束ないここだけ浮世のうすいひとひら。落ちると見る間にめくれてひらつく当て所もなくどこへともなく。
いい知らせが来ることになってる。どこから来る?東か西か。南か北か。もちろん全方位で抜かりはない。今日は来なくても、まだ明日があるってのがA.K.A. ポケットにいつも入れてある定型句。これはありふれた何らかのミステイクと大らかに受け止めて夜は更けていく。
気づいたらこのあたりにはもう誰もいない…と知ってるのかどうかはさておき、なおも繰り返される予行演習…思えば年中、一日千秋の思いで念じるその先で転じると愚直に信じる。背後の窓辺で羽を休める白い鳩にも気づかず。
千里の月はゆうべと同じでモナリザみたいな顔をしている。更闌けてなおあまねく照らしながら見て見ぬふりをしてくれる。千切れたようで覚束ないここだけ浮世のうすいひとひら。落ちると見る間にめくれてひらつく当て所もなくどこへともなく。
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