2021年5月28日金曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その328


ちびマルコ・ポーロさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q. 私は現在就活中で市役所に勤めたいと思っているのですが、そのためにはSPIという一般常識テストがあり、合格するために日々勉強に励んでいます。ですが、最近が梅雨入りということもあり、土砂降りの雨が続いており、なんだか憂鬱な気分になり、勉強に身が入りません。私個人の問題ではあるのですが、雨の日は何故か無気力で何もしたくない感情に苛まれます。
雨の日でも、やる気を出して、勉強に精を出せる方法をご教授願いたいです。


そのきもち、生ビールをぐいっと豪快に呷ってジョッキをダーンとテーブルに叩きつけたのち背中をバーンと叩きたくなるほどよくわかります。僕、下戸ですけど。

たまに降るやわらかな雨はささくれた心を丸く整えてくれるやさしさもあります。でも降りつづくとやっぱりちょっと、萎れますよね。それほど意識はしていなくても、ようやく晴れ渡った青空を仰ぎ見ると生き返るような心地になるものです。雨の日の勉強に身が入らないのも無理はありません。

それなら視界に入るすべての窓を遮断して、雨だと気づかなければよさそうですが、しかし実のところこれはまったく意味をなさないことが僕個人の経験から判明しています。雨を視認していなくても、メンタルはしっかりその影響を受けているのです。湿度はもちろん、たぶん気圧が大きく関係しているんだとおもう。

したがって、この気圧の影響をいかに低減できるかが、SPIに合格するためのカギとなるでしょう。気圧を制する者がSPIを制すると言っても過言ではありません。

そこで参考にしたいのが、ジャック・クストーです。

スキューバダイビングで使用するアクアラングを世界で初めて開発した伝説の海洋学者、ジャック=イヴ・クストーは1960年代、コンシェルフ(Conshelf=Continental Shelf Station)と名付けた居住空間を水面から10メートルの海底に設置し、1ヶ月ほど生活したことでも知られています。

その様子を克明に記録した、今も語り継がれる驚異のドキュメンタリーが「太陽のとどかぬ世界」です。まじで必見なので、勉強の息抜きにコーヒーでも飲みながら観てみてください。コンシェルフからさらに25メートル下の深度に設置された「ディープステーション」で2人が一週間滞在したことも、映像として残されています。何から何までSFにしか見えないので、初めて観たときは特撮を疑ったくらいです。

そしておそらく、雨の日の憂鬱にはこれが最適解であろう、と僕は考えます。海のなかだと水に囲まれて雨なんかより断然ひどいようにおもえるけれど、すくなくとも気圧にはまったく影響されません。どちらかというと水圧の問題になります。

考えてもみてください。雨どころか土砂降りであってもまったく影響を受けない居住空間……これほど勉強にうってつけの環境が他にあるだろうか?

断じてない、というのが僕の結論です。

そのためにはまずジャック・クストーになる必要があります。フランス国籍を取得し、フランス人になり、その他もろもろの物理的心理的ハードルを越え、海洋学者として名を馳せることができれば、コンシェルフまではあと一歩です。晴れてコンシェルフさえ海中に設置できれば勉強がはかどることはまず間違いないし、僕自身はいまいちまだよくわかっていないSPIの合格はもちろん、市役所勤めも目前と言っていいでしょう。

また、それよりはいくらか後退しますが、意外とおすすめなのが風呂です。のぼせてしまうと元も子もないので、プールくらいの温水につかりましょう。一糸まとわぬ素っ裸で知識を叩き込んでいく非日常感は、それまで知らずにいたある種の異世界へと誘ってくれます。仮にうまくいかなくても体を洗って出ればそれだけで風呂に入った甲斐はあるというものだし、うまくいくならまさしく一石二鳥です。

幸運を祈ります。


A. 海底に居住空間を設置しましょう。




質問はいつでも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その329につづく! 

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