2021年4月23日金曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その322


ローマの振替休日さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q. 安上がりな引っ越しの方法を教えてください。


僕も費用さえゼロなら事あるごとに引っ越してぜんぶなかったことにしたいたちなのでよくわかります。

たぶんいちばん安上がりに済むのはこの世からあの世への引っ越しだとおもいますが、人生で一度しか使えない上に安上がりに済ませる意味も消え失せるのであまりオススメはできません。

地球というバカでかい球体の表面をほんのちょぴっと移動するだけなのに、敷金・礼金、それに運送費や交通費、作業に疲れたときのおやつといった諸々の費用で僕なんかはすっからかんになったりします。なぜ球面上のわずかな移動で無一文にならなくてはいけないのか、意味がぜんぜんわからない。

とはいえ、やろうとおもえば運送それ自体にかかる費用はわりとごっそり省けます。実際、かつて僕が引っ越したときの荷物は今も至近距離にいるうちの人が2トントラックでぜんぶ運んでくれました。一抱えもある大きなハンドルを握ってブイブイやってくる彼女を見たときはじつに頼もしく感じられたものです。

思いきってガソリン代も節約するのであれば、すこし時間はかかりますが持ち物をひとつずつ、ポッケに入れて徒歩で移動すればOKです。大きすぎてポッケに入らない場合は、ポッケのほうを大きくしましょう。とにかくポケットを大きくしさえすれば物という物はだいたい何でも入ります。

できれば転居先の敷金・礼金、なんなら家賃も更新料もカットしたいというちょっと欲張りな向きには「長期取得時効」の活用がオススメです。

民法第162条第1項にはこうあります。

第162条(所有権の取得時効)
1 20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。

つまり、どこで誰が所有していようと気に入った土地を居住地に定め、隠すことなく堂々と胸を張り、周囲にもご近所さんとして認知され、かつ所有者に気づかれることなく20年住みつづけることができれば、その土地は自分のものになる、という法律です。たぶんそういう主旨ではないとおもいますが、ざっくり言い換えるとそういうことになります。

20年、しかも公然と、さらに平穏に、というこのさらっとした部分を立証する若干のハードルはあるにせよ、一切の費用をかけることなく他人の土地を所有できるんだから、夢があるじゃないですか?

運送と土地にかかる費用をゼロに抑えることができればあとは建物だけですが、ここまでくればそれも大した問題ではないと断言してよいでしょう。安田タイル興業の専務も世に偏在するありとあらゆる廃材を駆使して、雨漏りしないとても立派な社屋を建造しています。なんやかんやあって自治体から取り壊しを命じられているらしいですが、だからといって廃材で家屋を建てられないことにはなりません。それはそれ、これはこれです。

したがって、最も安上がりな手順としてはこうなります。

1. 住む土地を決める
2. 廃材で家屋を建てる
3. 荷物をポッケに入れて移動する
4. 隠さず堂々と20年住む

今まで金をかけていたことがバカらしくなるし、なぜ誰も実行しないのか首をかしげるほどシンプルです。20年たったらぜひ僕も招待してください。


A. 長期取得時効を活用しましょう。




質問はいつでも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その323につづく! 

0 件のコメント: