2014年10月7日火曜日

売れ残ったデパ地下の惣菜は毎日どこへ消えていくのか?



わざわざ手を挙げて発言するようなことでもないけれど、デパ地下の惣菜売り場をうろつくのが趣味です。そこで買い物をするのではなく、じぶんでは絶対につくらないようなよそ行きのおかずがグラム売りで山のように積まれている様子に心躍らされるのです。

だいたい閉店1時間前あたりから、あちこちのお店で値下げがはじまります。3割引、4割引、2パックで5割引……とくればやがては値引率が10割を超えてマイナスに突入、最終的には「100円あげるから誰かもらってください」というようなことになるはずですが、もちろん閉店まで待機してもそうはなりません。これ以上は下がらないというデッドラインの存在あってこそ、どの時点で手に取るのがいちばんお得かというチキンレースにも似た緊張感が生まれるのです。万物の霊長がその高度な知性を遺憾なく発揮するのはまさしく、というかおおむねこういうときであると言ってよいでしょう。

しかしそれはまた同時に、売れ残る可能性が常にあるということでもあります。じっさい、相当な量の惣菜が毎日のように残されると言わねばなりません。ふしぎなのはここです。

売れずに残った大量の惣菜は毎日どこへ消えていくのか?

もちろんスタッフがおいしく、たらふくいただくこともあるでしょう。キロ単位でおかずばかり食って何ともないスタッフが果たしてどれくらいいるのかという疑問はさておき、仮に全員がそうした特別な胃袋を備えたスペシャリストだったとしても、それで落着というわけにはいきません。何となれば、そこに並ぶすべての惣菜が毎日がらりと入れ替わるわけではないからです。

揚げ物の専門店を例にみてみましょう。今日はすごくおいしい極上のロースカツが2枚のこったとします。もしもらって帰れるなら、よろこんで持ち帰るのは僕だって同じです。ただロースカツは定番なので、おそらく翌日も並びます。この日は1枚のこりました。きのうも食べたけど、でもおいしいからやっぱりいただきましょう。そしてもちろん、その翌日も並びます。今度は3枚のこりました。その次は1枚。その次が2枚。いえ、もう結構ですと言いたいところですが、実際のところ結構かどうかはカツが売れ残ることとまったく関係がないので、カツはやっぱり目の前に置かれるでしょう。

極上のロースカツだろうと老舗料亭の筑前煮だろうと海老とアボカドのサラダであろうと何であれ、そして誰であれ、まったく同じものを365日食べつづけることが心理的、五臓六腑的に果たして可能なものだろうか?

ほかの惣菜でもあれば、そしてそれがカキフライのように季節限定だったりしたら、多少の変化にはなるでしょう。揚げ物に揚げ物では変化と言っても違反切符の内容が変わるだけのような印象がなくもないですが、しかし問題は変化があるかどうかではありません。アジフライだろうと椎茸のはさみ揚げだろうと、その隣にはいつでも昨日食ったロースカツがあるということなのです。煮えたぎる油にくるくるザブンと身を投げたくなったとしても無理はありますまい。

スタッフだけでは手に負えないことがこうまではっきりと示された以上、考えられる他の可能性としては、というかそうだったらいいなと僕がおもうのは、惣菜売り場のスタッフ全員による盛大なシェアです。閉店後、さながら立食パーティーのように和気藹々と歓談しながら「このマリネ、うちの新作なんけど、どう?」「じゃあうちの蒲焼きと交換しよう」「うわーこの角煮うまい!」「牡蠣グラタンあるよー」「好きな栗おこわが残っててうれしい!」「ここだけの話、これモッツァレラじゃないんだ(ひそひそ)」「バゲット切ったのでよかったらー」「ビールほしいな」「向こうにあったよ」「今日もおつかれ!」「明日もたのしみ!

歯ぎしりするほど楽しげな、まさにこの世の天国です。デパ地下の野郎……!(ギリギリギリ)

考えてみればその場で調理しているわけでもないのに、あれだけの量の惣菜があれだけの面積いっぱいにずらずらと山積みで、毎日リセットされるのもふしぎなことです。バックヤードがあると言ったってまさか店ごとに調理場が用意されているわけでもないだろうし、あれこれ想像するだけでもごはんが進みます。真実なんてべつに知らなくていいとおもう。

3 件のコメント:

チムチムチェリー さんのコメント...

デパ地下は行くとワクワクしますよね。買う気がなかったものまで、欲しくなってしまうあの空間が好きです。特にショーケースの中の惣菜はスーパーで売っているものよりも3割り増し、いや5割増しで美味しそうに見えますね。
ただ、なんで地下なんですかね〜?衛生面っていうのはなんとなくわかるけど、それ以外の理由もあるのかな・・・。

路傍の詩 さんのコメント...

デパ地下惣菜屋で働いているものです。
真実は曖昧にしておくとしても、その想像はけっこー当たってますよ。(店によりけりですが)
しかもクリスマスとかになれば・・・うふふ。
逆に夏場のコロッケ専門店や、賞味期限切れのあまりない乾物屋なんかは残念かしらね。
ちなみに私は揚げ物専門。そろそろカキフライの季節ですよ。

ピス田助手 さんのコメント...

> チムチムチェリーさん

5割増しで美味しそうにみえるのは
彩りや盛りつけ、それからショーケース自体にも
秘密があると僕は睨んでいます。

言われてみればたしかにどこも地下ですね。なんでだろう?


> 路傍の詩さん

キタ(・∀・)コレ!!
チラ見せのようでほとんど丸見えなあたり、
路傍の詩さんの人の良さがうかがえます。
刺激的な垂涎情報をありがとう!ちくしょうめ!

ちなみにカキフライ、僕も大好きです。