2014年10月26日日曜日

転落者マルヤマのしっとりお悩み相談室


【相談者】R.Kさん(36歳・主婦)
結婚14年目の主婦です。子どもはいません。夫は大手メーカーの管理職で、中学生の息子がひとりいます。わたしはパート勤めです。両親はともに健在で、年に2度飛行機で帰省するくらいの距離に住んでいます。同居の予定は今のところありません。

夫婦仲は良好です。胡椒で目つぶしをしたり、ジャーマンスープレックスをかけられて頭を10針縫うくらいのケンカは人並みにありますが、それなりに仲良くやっています。夫は道場破りが趣味で、付き合うようになったのもわたしの祖父が切り盛りしていた道場に当時学生だった彼が乗りこみ、師範代だったわたしから返り討ちに遭ったのがきっかけということもあり、いまも月に一度、夫婦で道場破りをつづけています。どちらかといえば夫よりもわたしが道場破りにハマっているかんじです。わたしとしてはもっと夫にかつての覇気を見せてほしいのですが、さわるものみな傷つけるナイフのようだった夫は管理職に昇進してから驚くほど低姿勢で人と向き合うようになりました。「技を見せないのが技というものだ」「必殺技は最後でいいだろ」が最近の夫の口癖です。どうやら上司に恵まれたらしく、人間的にも一回り大きくなったように感じられます。今でも闘牛のように鼻息荒く「たのもう」と道場に乗りこむのはわたしだけです。夫はいつも柔和な顔をして、世話人のようにわたしの後をついてきます。どっちが女房なんだかわかりません。ただ、一度乗りこんだ先でわたしが道場主に「オヨネコぶーにゃん」と罵られたときは、わたしがキレるよりも先に夫がキレてくれました。人が単なる肉塊になったのを見たのはこのときが初めてです。人がロケットみたいに屋根を突き破って飛んでいくのを見たのも初めてでした。わたしはこれほどの必殺技を夫が秘めていたこと、そしてその圧倒的な破壊力に心底驚き、また感激したものです。「死ぬまで見せないつもりだったんだけどな」と言ってはにかんだ夫の顔は今でも忘れられません。たぶんわたしはこのとき初めて、愛するということを心から知ったとおもいます。あの必殺技があるから、わたしは笑顔で道場破りをつづけることができる。わたしがどれだけ道場の看板を集めても、彼の前では安心して妻でいられるのです。

中学生になったばかりの息子はわたしたちの趣味にそれほど興味を示しません。「いい年して道場破りとかwwwありえなくねwww」とことあるごとに草を生やしてきますが、かと言って真剣に止める様子もないので、まんざらでもないようです。「親子3人で天下無双が夢」のわたしに対し、夫は「あいつにはあいつの人生がある……つーか3人いたら天下無双にならないだろとの立場で、静観しています。無理に引き入れようとはしません。むしろプリキュア好きの息子を理解すべく、こっそりプリキュア新聞を買ってきてはお風呂で読んだりしています。彼はわたしの夫であると同時に息子の父でもあるので、それはそれで異存ありません。というか、そんな夫もすてきです。一方で、妻であり母であるわたしとしてはやはりどうしても口をとがらせてしまいます。プリキュアはプリキュアで最高だけれど、どっちかを選ぶ必要なんてないじゃない?とおもってしまうのです。息子が望むならコスプレで道場破りもいいとおもうし(息子は顔立ちが整っているので、すごく似合うんです)、「いっしょにスパイラルスタースプラッシュとかカッコ良くない?」と水を向けると「古い」とか「おれスパークリングバトンアタックのほうが好きだから」と言われて追い出されてしまいます。夫は「ふたりでもいいじゃないか」と言ってくれるし、わたしもそれに不満はないのですが、でもいつか天下を取ったとき、その隣に息子がいないことを想像するとさみしい気がするのです。できれば3人で頂点に立ちたい。集めに集めた道場の看板で最後に盛大なキャンプファイヤーをしたい。バーベキューをしたり、川の字に寝ころんで夜空の星を眺めながらささやかな武勇伝と思い出話に花を咲かせたいのです。

そこでご相談なのですが、ハロウィン仕様のお菓子についてくるカボチャの形をしたフェルト生地のケースというか意匠はお菓子を食べたあとどうしたらよいのでしょう?甥からのプレゼントなので捨てるのはもちろん、邪険に扱うのもためらわれるし、ペン立てに転用しようとしたらやわらかすぎて使いものになりません。ハガキ入れにしてみようとも考えましたが、重みで倒れてしまいました。また、妹(甥は妹の息子です)に、「かわいいでしょ」と言われるとわたしも妹が大好きなので「うん、ありがとう」しか返せず、完全にお手上げです。あんまり考えすぎて、最近では道場破りにも支障が出始めています。夫にも繰り出す拳にキレがないことを指摘されました。このままでは天下取りも遠ざかるばかりです。どうかよい手立てをお授けください。よろしくおねがいします。


【回答者】マルヤマ
お菓子をつくってカボチャのケースに入れ、甥御さんに贈るのはいかがでしょう。前回のお礼であることが一目瞭然だし、真心をこめつつたらい回しにできて一石二鳥です。

2 件のコメント:

単粒度砕石 さんのコメント...

あれ、最初に子どもはいませんって、息子は?

ピス田助手 さんのコメント...

> 単粒度砕石さん

ワハハハハ!
ホントですね。
でも直さない。
それがマルヤマクオリティです。