「えー、相州は大磯の定吉さんから質問です」
「ちょっと待て。いろいろ待て」
「なんですか博士」
「これは何だ」
「今夜のゲストはムール貝博士です」
「おい」
「なんですか。うるさいな」
「今うるさいと言ったな」
「言ってません。なんですか」
「これは何だ」
「マイクですよ」
「この耳に当ててるのは」
「ヘッドホンですね」
「この部屋は何だ」
「ラジオブースです」
「うむ、いちばん解せないのはそこだ」
「何ですか」
「なぜラジオ形式なんだ」
「なぜってそりゃ自作自演ですから」
「いつもそうだろ」
「いつものはちがいますよ!」
「まあいい」
「あらぬ疑いをかけたまま投げっぱなしはやめてください」
「よし、ここでCMだ」
「まだ質問も読んでないのに!」
「だいたいわかった」
「わかるんですか?読まなくても?」
「まあ、あまり気にしないことだ」
「もう答えてる!」
「CMいこう」
「どんな質問だったかわかるんですか」
「何か気になることがあるんだろう」
「そうですね…」
「だから気にしないことだ」
「そう言われるとぐうの音も出ないですけど…」
「じゃあまた来週」
「まだ質問も読んでないのに!」
「解決しただろ」
「解決がすべてだとおもったらおおまちがいです」
「どう考えたって解決がすべてだよ」
「犯人はお前だ!って先に言ったら意味ないでしょ」
「なんだ、犯罪なのかこれは」
「もののたとえです!」
「意味はある」
「だって事のあらましもまだ出てないのに」
「だから聞かなくて済むだろ、それを」
「ペンネームについての質問です」
「ふん、場慣れしおって」
Q. パンドラ的質問箱 その165でムール貝博士は質問者さんに「そして誰もいらなくなった」というペンネームを付与されましたが、その136でもそれに似た「そして誰もいななかなくなった」というペンネームを付与されています。
「ぎくり」
「これは由々しき事態ですよ」
「なにが由々しいんだ」
「だってほとんど重複ですよ」
「重複はしてない」
「元ネタは同じです」
「にもかかわらず重複してないからいいんだ」
「だって、いいんですか?」
「何がだ」
「底が知れますよ」
「一向にかまわんね」
「海のように深くて広い知識をお持ちだとおもっていたのに」
「深いとおもうのはそっちの勝手だ」
「そのじつ意外と遠浅だったなんて」
「潮干狩りにはうってつけだろ」
「アサリでもほじくるって言うんですか?」
「そうとも。アサリ、けっこうじゃないか」
「ムール貝のくせに!」
ピー
しばらくお待ちください
「失言でした」
「わかればいいんだ」
「じつはまだつづきがあるんです」
「何の?」
「質問のです」
「ああ、与太吉のな」
「定吉です」
「どっちでもいい」
「質問はこうです」
Q. 元ネタは言うまでもなくアガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」ですが、これが2回も出てくるということはやはり女史の作品が相当お好きなんでしょうか?
「なるほど」
「どうですか」
「好きだよ」
「あ、やっぱり」
「ポアロ物以外」
「ほう……え?」
「とりわけ小煩いおばちゃんの描写で女史にかなう人はいまい」
「ちょっと待ってください」
「なんだ」
「ポアロ物以外って言いました?」
「言ったよ」
「アガサ・クリスティの作品は大半がポアロ物ですよ!」
「ポアロときくとなぜかテリー・ジョーンズの顔が思い浮かぶんだ」
「それはモンティ・パイソンです」
「そんなことはわかっとる」
「女史の作品の半分は読んでないってことですよね?」
「ちがう。半分は読んでるってことだ」
「同じじゃないですか」
「ぜんぜんちがう。たわけたことを言うな」
「でも半分ですよ」
「そうとも。だからなんだ」
「それは好きと言えるんですか?」
「スティーヴィー・ワンダーのファンはこれまでにリリースされた30枚のアルバムをぜんぶ持ってるべきだって言いたいのか?」
「むむ」
「カボチャを好きなやつはその調理法を何十も知ってなくちゃいけないのか?」
「そんなことは…ないですね」
「愛するとなったら何もかも知ってなくちゃならんのか!」
「ガーン!」
「まったく、ばかばかしい」
「博士に愛を説かれた!」
「造詣の深さで愛情を計るなんてつまらんことだ」
「さっきの遠浅の話が急に説得力を帯びてきますね」
「海水浴と潮干狩りができてその上何を望むと言うんだ」
「こんな真っ当なことを言う博士はじめて見た」
「まず足下のアサリをよく味わえ」
「ムール貝なのに…」
ピー
しばらくお待ちください
*
質問はいまも24時間無責任に受け付けています。
dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)
その167につづく!
0 件のコメント:
コメントを投稿