2025年4月18日金曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その448


カラマーゾフの従兄弟さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q. 規則正しい生活は大切だと思いますか?もし規則正しい生活のために心がけていることなどがあれば知りたいです。


そうですね、大丈夫!ぜんぜん大切じゃないです!と言う人はたぶんほとんどいないと思いますが、「規則正しい生活」という言葉にはどうもこう、学級委員とか生徒会役員とか清く正しく美しくみたいな優等生の響きがあって、なんとなくいけすかない印象が付きまといます。人に言われたらうるさいなとしか返しようがありません。規則正しくあろうとなかろうと、そうありたいと自身が願うならそれだけで立派なもんだと僕なんかは思います。

ただ一方で、好きなときに食べて好きなときに寝て、好きなときに働いて好きなときに遊べたらいいかというと、それは全然おもいません。なんとなれば、心はそれを望んでいても、身体はそれを望んでいないからです。忌々しいことこの上ないけれども、僕らが規則正しい生活を必要とする最大の理由が、ここにあります。

僕らの肉体を構成する細胞ひとつひとつを、労働者だと想像してみてください。ある労働者たちは、たとえば胃で働いています。彼らにとって主人の食べたものがいつ胃に落ちてくるかは知りようもないですが、でもだいたい、たとえば12時から13時の間には昼食が胃に落ちてくることになっています。つまり、「働く時間が決まっている」ということです。逆に昼食が10時だったり14時だったりと安定しない場合、それは「業務が直前でしょっちゅう変更になって安定しない」ということでもあります。

もちろん、働いているのは胃の労働者だけではありません。胃での仕事は、腸にも引き継がれます。胃が想定外の時間に仕事を引き受けたなら、腸もまた想定外の時間に仕事を引き受けることになるのです。その結果、うんことして排出する時間も帰宅後だったり就寝前だったり起床してすぐだったりと、一定しないことになります。

脳で働く労働者たちも同じです。主人がいつ眠るのかわからないということは、労働者たちがいつ休めるのかもわからない、ということです。原則として就業時間が決まっていればそれを超えた時点で残業になりますが、そもそも就業時間が決まっていないなら、どこからが残業なのかも判然としません。

体内環境がとんでもないブラック企業になり果てていることがよくわかります。そしてブラック環境で酷使され続けるばかりか物理的に退職もできない労働者たちaka細胞が数十年後にどう成り果てているか、これももちろん想像できるはずです。具体的に言えば、もはや取り戻せない不可逆な形で、まちがいなく身体のあちこちに支障が生じてきます。

つまり規則正しい生活とは、体内の労働環境をホワイト企業として保つこと、と言い換えることができます。そう考えるとだいぶ受け入れやすくなるはずです。通勤ラッシュのタイミングで抑えきれない便意とか、ほんと御免被りたいですからね。

その上で何か心がけていることはあるかと訊かれたら、うーん、食事くらいですかねえ。うちは一日における栄養の大半を朝食で摂っている、と言っても過言ではないくらい朝食に出す皿の数がやたらと多いので、そのための支度もふくめてある程度の生活リズムを維持することにつながっている気はします。

ただ、歳をとればとるほど勝手に規則正しい生活になっていくというか、日々のルーチンから外れることにストレスを感じやすくなるのはたぶんまちがいないので、体内の労働者たちが悲鳴をあげるような無茶を長く続けないかぎりはそんなに気にしないでいい、というのが僕の結論です。睡眠、食事、仕事の時間がどれだけきっちり決まっていても、食事が毎回ポテチとか二郎系のラーメンとかだったら何の意味もないしね。

規則正しい生活なんてすでに規則正しい生活を送っている人しか言わないし、規則正しい連中の言うことを聞いて幸せになれるのは初めからおおむね規則正しい人だけですよ。


A. 体内における福利厚生の充実を心がけています。




質問はいつでも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その449につづく!

0 件のコメント: