1
はじまりは古い
ある日ぽとりとひとつそこに落ちて
しずかに降り積もり、ひとつまたひとつ
それが山になった
飴細工みたいにきれいで、骨みたいに軽い
踏みしめるとざりざりと苦い音を立てる
放り入れる籠を背負ってざりざりと歩く
飴細工みたいにきれいで、骨みたいに軽い
それはかつて人が耳を貸したり傾けたりしたもの
昼も陽は当たらず、ただ荒涼として広い
ここはでかい声にかき消された志の半ば
砕け散ってばらまかれた形なきものの墓場
2
墓場ではゾンビがしけもくを吹かしている
その足元で三つ足の猫がまるくなって眠る
魂をもつと昔きかされた文字と音が
フェイクや美辞麗句として捨てられていく
行き着く先がここなら、そのなれの果てがゾンビだ
飴細工みたいにきれいで、骨みたいに軽い
それはかつて人が耳を貸したり傾けたりしたもの
凹んでるとゾンビはポンと肩を叩いて
「生きてりゃいいことがある」と慰めてくる
お前が言うのかよって返すのがお約束
世界はこんなにもグロテスクでやさしい
3
そのうちまた甦る日がくるだろう
歌をうたい、詩をよむときがくるだろう
それは絶やさずにきた埋み火のように
冷えきった朝を温めるだろう
飴細工みたいにきれいで、骨みたいに軽い
それはかつて人が耳を貸したり傾けたりしたもの
スコップで掬い、平らにならし
そこへまた今日もぱらぱらと降る
砕け散ってばらまかれた形なきものの墓場で
その日を待っている
ひどく前向きなあのゾンビが笑いすぎてむせる
その足元で三つ足の猫が、大きく伸びをする
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