2017年10月13日金曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その285


見知らぬ国のスリッパさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)魔法の妖精がはくスリッパのことですね。




Q: 駄菓子はあんなに素敵なのに、なぜ "駄" と罵られているのでしょうか。見解が聞きたいです。


駄菓子、いいですね。僕も昔から駄菓子にはなみなみならぬシンパシーを抱いています。時代の流れなどおかまいなしに、何年たとうが立ち寄れば変わらぬ調子でいつもここにあるこのブログも、言ってみれば駄菓子みたいなものです。どうか生産中止になりませんようにとつい願ってしまうあたりも含めて、他人事ではありません。

それはさておき、日本が世界に誇る漢字の聖典「字統」には「駄」という文字についてこうあります。


「馬の負ふ皃(かたち)なり」、つまり馬に荷を載せて運ぶことを意味するわけですね。なぜこの字が取るに足らないものを意味する接頭辞になるのかというと、かつて荷を運ぶ馬は人を乗せるのに適さないと見なされていたからです。ではなぜ荷を運び、人を乗せない馬をワンランク下に位置づけなければならないのか?

これはもうきっぱり断言してよいとおもいますが、明確な根拠はどこにもありません。しいて言えば荷物よりも人のほうがえらいという身勝手極まりない印象が前提になっています。はっきりと荷物がそう認めたならともかく、人がなんとなくそうおもって一方的に結論づけているだけです。荷物の立場はあくまで従属的なものであって、人の上に立つものではない、したがって駄載する馬の価値もまたそれに準ずるものである、と主張したいわけですね。

しかしもちろん、人よりも荷物のほうがえらかった場合、ワンランク下げられるのは人が乗る馬のほうになります。そして実際のところ、人よりも荷物のほうがえらくて困る理由などどこにもありはしません。おもしろくないと人がふてくされるだけです。

してみると「駄」という字から感じられる残念な印象とは、その程度の理由で貼られたレッテルにすぎません。むしろそんなレッテルを貼らなければ人としてのプライドを維持できないあたり、却って馬脚をあらわしていると言うこともできそうです。本当は人よりも立派で、何ならよっぽど高貴かもしれない荷物、ひいては「駄」の字を貶めることで、どうにかこうにか面目を保っているわけだから、人間とはかくも気の毒な生き物であると嘆ずるほかありますまい。

駄菓子の話に戻りましょう。この考え方に立ってみれば駄菓子とは、軽んじられているどころか「とても立派な、何なら人よりもえらい菓子である」と解釈することができます。嘆くどころか、胸を張るべきです。

もちろん僕も、この解釈を支持します。なんとなればその当然の帰結として、駄菓子みたいなものであるこのブログもまた、とても立派なブログであるということになるからです。そうじゃないかとうすうすおもってはいたけれど、図らずもそれを証明できて目頭が熱くなりました。


A: ムール貝博士言行録はとても立派なブログです。


溜飲は下がりましたか?




質問はいまも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)



その286につづく!

5 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

久々に見に来てみたら、質問箱が更新されていてとても幸せな気持ちになりました。
素晴らしきこのブログが、どうか生産中止になりませんよう!

ピス田助手 さんのコメント...

> 匿名さん

こんにちは。
書いている僕自身が「このブログまだあるのか」
と他人事のようにおもわないでもないですが
そんなふうに言ってもらえて光栄です。
いつもありがとう!

見知らぬ国のスリッパ さんのコメント...

5年越しに回答を受け取ることが出来ました!

何故”駄”に対してそんなに怒りを覚えたのかは思い出せませんが、駄菓子への愛は変わっていないので、人間よりも素晴らしい菓子だと言うことに感動を隠せません!!!


わたしごとですが、5年前は宇宙に放り出された捨て猫よろしく、為す術なく放浪していましたが、いまは自分のちいさな星をこさています。星というより”こどもの秘密基地”という風体です。

その秘密基地の中で、当時買った小数点花手鑑の曲たちが、今も気まぐれに頭の中に現れては、わたしを楽しませてくれています。

あなたの曲も言葉たちもだいすきです。ありがとう。

ピス田助手 さんのコメント...

> 見知らぬ国のスリッパさん

5年もの月日を経てまたこうして相見えることができるなんて
長く続けておくものだとしみじみ感じ入るものがあります。

届いてよかった!こちらこそいつもありがとう!!

ピス田助手 さんのコメント...

あ、投稿者がなぜかUnknownになっていますが、
このブログの主である僕です。