2015年8月27日木曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その223


24時間トロ火さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士が適当につけています)


Q: 私事で申し訳ないのですが、ある場所に隕石を落としたいです。どうしたらよいですかね。


かくいう僕も隕石の、というかある場所に落としたいものとして思い浮かべる隕石の、もしくはあの人にならいくつ落とされてもかまわないものとして夢みる隕石の世界的権威……だったらおもしろいのになあ、とたいへん入り組んだ空想をさんざん育んできたほうなので、華麗にして美しい隕石の落としかたについてお話することはもちろん可能です。ようやくひとかどの権威として認められる日が来たことにはすこしく感慨深いものがあります。ここはひとつ、山のような研究ノートをいそいそと持ち出してきて机に積み、端からぺらぺらとめくりつつ「どれが好き?ウィラメッテ?うふふ、わかってるなあ!落とすのはどのタイプにする?」と畳みかけたいところです。

そんなわけで伝授したいのは山々だし、むしろ訊かれる前から押し付けたいくらいなのですが、残念ながらここには二の足を踏むに十分な問題がひとつ横たわっています。というのは、隕石を落としたいエリアに僕が含まれているかもしれないからです。いくらその道の権威とはいえ、意図せず黒焦げになることにはやはり若干の抵抗があります。というか、黒焦げが不可避ならせめて隕石を落とす人くらいこっちで選ばせてもらいたい。

ご承知とはおもいますが、隕石の落下による影響と被害はそのサイズ次第で半径数十キロメートル以上にまで及びます。ちょっと大きめの岩を落としてスッキリというわけにはいきません。下手をすると24時間トロ火さんご本人さえふつうに黒焦げ対象です。心中目的ならともかく、いただいた質問のトーンからしておそらくそれは本意ではありますまい。

ちょっと大きめの岩を落としてスッキリと書きましたが、察するにお望みなのはそういうことなのではないかともおもわれます。だとすれば隕石まで呼び出して食らわすには及びません。実際にちょっと大きめの岩を運んできてどすっと落とせばそれで済む話です。岩を担ぐにはやや筋力が足りないようであれば、鉄球のついたクレーン車なんかいいですね。現実的な落としどころとしてはこのあたりかもしれません。

現在では騒音規制法等の制約もあって市街地では鉄球を振り回すことができませんが、振り回したとしてもせいぜい牢屋にぶちこまれて社会的地位の一切を失い、多額の損害賠償を支払うくらいのものなので、それさえクリアできれば大丈夫です。磨き上げられた鉄球でミシミシバキバキと破壊されゆく何かの音を想像するだけで、僕もうっとりしてきます。

ただ、それを実行する前に、新潟県と長野県の県境にある光ヶ原高原を訪ねてみてもよいでしょう。ここにはかつて浅間山荘をドカンとぶちこわした本物が「難局打開の鉄球」として展示されています。日本の歴史に名を残す偉大な鉄球を見つめながら、来し方行く末に思いを馳せるのもまた一興です。決意を新たにするか、はたまた実際に手でその重みにふれてくるりと踵を返すか、ここで今一度みずからの心と向き合ってからでも遅くはないと僕はおもいます。


A: 光ヶ原高原に鉄球を見に行きましょう。




質問はいまも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その224につづく!

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