2014年11月8日土曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その193


未確認飛行ブッダさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q: 毎年やろうとしてるだけで結局やらないで終わること、は何かありますか?


CDを出した人になってからこっち、ずっとやってみたいとおもっているのは「解散」です。かれこれもう10年くらい毎年のようにやろうやろうとおもいながら、気づけばはや霜月の今年も結局やらずに終わってしまいそうな気配がぷんぷんします。以前解散するための計画を人知れず立ててみたことがあるんだけれど、お察しのとおり人知れず頓挫して、それきりです。あのとき挫けずにちゃんと初志を貫徹していれば今ごろとっくに解散していたはずなのに、惜しいことをしたとおもう。

条件さえ整っていれば、それこそ今すぐにでもできるようなことです。でも僕の場合その条件ひとつひとつが大きなハードルとして目の前にいくつも立ちはだかっています。何と言ってもまず、人を探さなくてはなりません。解散にはすくなくとも2名以上の人員が必要です。必ずしも人である必要はないかもしれませんが、できれば話し合いによる苦渋の決断を演出したいし、なるべく実感を伴うかたちで惜しんでもらうためにはやはり人であるほうがよいでしょう。誰にも惜しまれない解散は解散と言うよりむしろ単なる物別れです。それでは元も子もありません。

物心ついたときから協調性の欠如をさんざん指摘されてきた僕にとってはこの時点でもすでに相当なハードルです。じっさい一人を二人にするのは、二人を三人にするよりはるかにむずかしい。また仮にクリアしたとしても当然、その次が待ち受けています。解散を解散として認めてもらうためには、それを惜しんでくれる人がそれなりにいなくてはならないのです。幅広くとまでは言わないにしても、ある程度はチームとしての足跡や実績を周囲に印象づけておく必要があります。

「どうする?」
「どうするって、何が?」
「活動」
「何の活動?」
「それを相談してるんだ」
「バンドじゃなかったの?」
「バンドいいね」
「音楽ってこと?」
「わたしギターひけるよ」
「あ、オレも」
「オレも」
「オレも」
「ギターばっかりじゃねえか」
「誰か歌えよ」
「歌はまずい」
「おれ音痴」
「みんなで歌えばいい」
「ハモれる?」
「ユニゾンでいいよ」
「全員ギター弾きながら歌うの?」
「斬新じゃん」
「曲は?」
「え?」
「誰が曲書く?」
「曲は書けないな……」
「カバーでいいじゃん」
「コピーバンドだ」
「よし、何をコピーしよう」
「Earth, Wind & Fire とかどう?」
「ギター4本で?」
「じゃおれギターやめて野菜切るよ」
「何で?」
「まな板と包丁でトントントンて」
「パーカッションてやつだな」
「野菜いるのか?」
「まな板と包丁で野菜以外に何を切るんだ」
「肉があるだろ」
「魚もあるぞ」
「じゃわたし買い出しいく」
「オレ火おこすよ」
「おれ食う」
「オレも」
「オレも」
「ずるい、わたしも!」
「何食う?」
「カレー?」
「まあ、無難なとこだな」
「肉と魚どっちも入れちゃう?」
「そんな豪勢なの食べたことない」
「魚は焼こうぜ」
「あ、ハイハイハイ!BBQしたい!」
「ビービーキュー?」
「バーベキューだろ」
「でもあんまりバンドっぽくないな」
「それオレも言おうとおもってた」
「え、わたしも」
「じつはおれも」
「ヒーローはどう?戦隊ものとか」
「ウーヤーターみたいな?」
「トッキュウジャーだろ」
「1文字も合ってない」
「ていうかバンドは?」
「ギターで戦うヒーローにしよう」
「それ採用」
「いいねいいね」
「ヒーローって具体的に何するの」
「戦うんだよ」
「誰と?」
「悪に決まってるだろ」
「どこにいるんだ」
「そりゃ探してくるしか……」
「また人を探すのか……」
「4人集めるのだって大変だったのに……」
「ヒーローって解散するっけ?」
「するだろ」
「しなくない?」
「しないな……」
「最終回はあるけど」
「別にしてもいいんじゃないの」
「何を?」
「解散」
「無責任て叩かれそう」
「炎上だな」
「正義もへったくれもない」
「正義はまあどうでもいいんだ」
「でも嫌われちゃ意味ないぜ」
「後釜を見つけてくればいい」
「もう人を探すのはイヤだって言ったろ」
「それに解散よりそっちが目立つ」
「ダメだ。それはダメだ」
「解散が目的なんだから」
「ままならねえなあ」
「解散がこんなにむずかしいとおもわなかった」
「みんなどうしてるんだろ」
「とりあえずチーム名を考えてみたら?」
「それだ!」
「ナイスアイデア」
「冴えてるな」
『大海原サチとミラクルサッチモズ』はどう?」
「なんでお前がリーダーなんだ」
「オレは別にいいけど」
「おれもそれでいいよ」
「じゃ『加古山ブリタとミラクルサッチモズ』でもいいだろ」
「冴えない」
「ダサい」
「イモっぽい」
「紅一点のほうがいい」
「わかった、わかったよ。イモとか言うな」
「愛のムチだ」
「心にミミズ腫れができた」
「決まりだな」
「通院が?」
「チーム名がだよ」
「いよいよだな」
「うん、いよいよだ」
「じゃ、どうする?」
「どうするって、何が」
「活動」
「何の活動?」
「それを相談してるんだ」


A: 「解散」ですね。




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その194につづく!

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