Q:真面目な話ミュージシャン大吾さんの息災が気になって仕方ありません。そろそろニューアルバムの話題などをでっち上げてください。もう嘘でも構わないので。
僕をミュージシャンと呼んでよいかは一考の余地があるとおもいますが、「ニューアルバム」ということであれば折よく今日はタケウチカズタケの "UNDER THE WILLOW -RAIN-" の発売日です。またぜんぜん関係ない話をしてお茶を濁すつもりだな、などと早合点してはいけません。関係ならオオアリクイです(こういう物言いに年齢を感じる)。あとついでに言っておくと、飲めば大抵の人が「うええ」となるセンブリ(漢方です)をごくごく飲み干せるほど渋みと苦みに親しみのある僕が発信者であるかぎり、お茶は濁されるものと決まっています。
ご存じない方のために説明すると、タケウチカズタケはキーボード・プレイヤーです。クラブミュージック界隈では A Hundred Birds という30人編成(!)の大所帯ハウス・オーケストラにおける中心人物として知られています。
しかしそのソロ活動においてはむしろヒップホップへの愛着が色濃く、ラッパーたちとの交流も数えあげればきりがありません。「ライムするやつとはだいたい友だち」と言い切ってしまっていいくらいです。自身の演奏についても本人が以前「鍵盤でラップしてるつもり」と話していたから、その傾倒ぶりは推して知るべしと言えましょう。じっさいその発言は彼の何たるかを端的に表しています。あえて言うまでもないかもしれない個人的なつながりで言うと、「処方箋/sounds like a lovesong」でキーボードを弾いているのが彼です。
また、そうした嗜好の当然の帰結として、タケウチカズタケはビートメイカーでもあります。サンプリングを駆使し、自らビートを組み、その上で鍵盤を叩きまくる、それが彼のスタイルです。そしてここがすごく重要なところだけど、その方法論はライブにもそのまま持ち込まれます。つまりサンプラーでビートをリアルタイムに組みつつ、エフェクターで千変万化のサウンドを繰り出しながら、同時にキーボードを演奏する、という人間離れしたアクションを全部ひとりでこなしているのです。そんな人はどこを探しても他にいません。初めて彼のライブを目にする人はその超絶技巧に例外なく目が点になります。
"UNDER THE WILLOW -RAIN-" はそんな男が手間ひまかけてこしらえた、ざっくり言ってしまえばヒップホップとソウルをベースにしたインストゥルメンタル・アルバムです。それがどんなものであるかは下に全曲試聴用のYouTubeを貼っておくとして、掛け値なしにすてきな1枚であることは僕も請け負います。このブログではむしろピンとこない人のほうが多いかもしれないけど、この機会にあたらしい世界への扉をひらいてもらえたら、こんなにうれしいことはありません。
Kaztake-42-music (アルバム特設ページ)
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このアルバムにおける僕の役割とは言うまでもなく、デザイン、イラスト、タイポグラフィ、キャッチコピーからブックレットの中身をどうするかといった企画みたいなことまで、製品のパッケージに関わるあれこれを一身に背負うことです。あれこれというかまあ、ほぼ全部です。このアルバムの半分は小林大吾でできています。何年か前にもまったく同じことを言った気がするけれど、しかしこういうだいじなことは重ねたってべつにかさばるわけではないのだから何度でも言っておきたい。
あ、あとそうだ、もうひとつあった。
いずれにしても詩人の「し」の字もないことについてはまたべつの機会に考えましょう。
ブックレットにはタケウチカズタケ本人による曲解説がたっぷりつめこまれています。ほしいと頼んだのは僕です。インスト作品だからすこしでも本人の肉声的なものを載せたい、くらいの気持ちだったんだけど、フタを開けてみたら想像以上におもしろくて作品の奥行きがぐんと深まりました。
たとえば僕がビートを渡した8曲目の "Barrymore" というタイトルは、ある小説に出てくるちょっと意外な人物の名前からきています。僕はたまたまその小説を読んでいたけれど、「え、まじで?ってかあの人そんな名前だったっけ!?」とぜんぜん思い出せないくらいマニアックなチョイスです。もちろん知らなくてもぜんぜん問題ありません。でも知って聴くとまたちがった味わいがあるし、イメージもふくらみます。補足が必要だとおもわれるものについては僕が勝手に注釈をねじこみました。
それから、このアルバムはほとんどの購入先で特典として4thアルバム "-SUN-"がついてきます。何を言っているのかよくわからないかもしれませんが、本当に4枚目のアルバムがついてくるのです。そして不可解なことに、主役である3rdアルバム "-RAIN-" は初めから2枚組用のケースに収められています。つまり、特典のCDをひとつのケースに収めて事実上の2枚組にしてしまうことが可能なつくりになっているのです。それは特典と言うのか?
さらに、特典である(←強調しています) "-SUN-" のジャケット、ブックレット、バックインレイは先に記したタケウチカズタケの公式サイトにある特設ページからPDFとしてダウンロードすることができます。そのブックレットにももちろんがっつりと曲解説が。
また、ディスクユニオンでは、Tシャツ付きの限定セットがあるそうです。実物まだみてないけど、あるというからにはあるんだろうし、僕としてもデザインしたんだからないと困ります。
オラめちゃ働いた。
すてきなデザインですね!とかもうすこし具体的に可愛いタイポですね!とか音源そっちのけでほめそやしてくれてもいいのよ!
A: タケウチカズタケの "UNDER THE WILLOW -RAIN-" は本日発売です。
ミュージシャン的なとこもホラ、一部だけどあったでしょ。
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質問はいまも24時間無責任に受け付けています。
dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)
その158につづく!
2 件のコメント:
誇大広告にまんまと躍らされ、
Tシャツ付き限定版を予約してしまいました。
そろそろ大吾さんの次回作も
予約したいのですが・・・
野暮でしたね。
こちらは伸びる首を縮めつつ
お待ちしております。
暑い日が続きますがお体に気をつけて。
> akabonkuraさん
わ、お買い上げいただいたんですね。
おかげさまでTシャツ付き限定セットは
全サイズ完売と相成った模様です。
どうもありがとう!
akabonkuraさんもご自愛くださいませ。
と言ってもじつは関東、ぜんぜん暑くないんですよね。
むしろ涼しいくらいなんです。
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