2013年2月28日木曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その129



美少女仮面ポワトリンさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士が適当につけています)


Q1: 安田タイル工業の専務さんは鉄道マニアなんですか?


専務は鉄道マニアではありません。それほどアレコレに通じているわけではないし、あんまり長く乗っていると退屈する(!)と以前はっきり言っていたくらいです。ただ単線に乗ってガタゴト揺られたり廃線跡を練り歩いたりすることには積極的なので、鉄道文化が持つ独特のムードに傍惚れしている、とは言えるとおもいます。そしてそれは部下たる僕もおなじです。僕はどちらかというと無意味にいつまでも乗っていられるタイプなんですけど。

乗ったことのない電車だと、どこに向かって走ってるのかいまいちよくわからないのがいいんですよね。


A1: じつはそんなでもないんです。



Q2: 私は会社で「小林大吾のCD」を勧めまくっていた時期がありますが、同僚の彼氏が聞き覚えのある曲を聴いていると思ったら「小林大吾」だったらしいのです。そんな二人も結婚して赤ちゃんが産まれるのですが、どう思われますか?(リポーター風に)


それはまた…ちょっとした確率ですね。どう考えてもそう多くの人がふれているものとはおもわれないのに、世の中にはふしぎな縁もあるものです。手頃な山に駈け登ってヤッホーとひと叫びしてきたくなるうれしいエピソードをどうもありがとう!そんな彼氏ならきっとちいさなことにもよろこびを見出す朗らかな家庭を築いてくれるにちがいありません。そうならなくても僕のせいじゃないとおもいますが、いずれにしても心からおめでとうを言わせてください。そしていただいた質問の時期からしてとっくに産まれているとおもわれる赤ちゃんがすくすくと元気に育ちますように!機を逸してばかりでホント面目ありません。


Q2: どうか末永くお幸せに!


ポワトリンさんも勧めてくれてありがとう!僕がサンタクロースなら、10人分くらいのプレゼントを枕元にそっと置いていきたいです。




Q3: 「これだけは自分の信念としてやめられない」と言っていて、その「やめられないこと」を簡単に手放してしまったことはありますか?またそうすることもアリでしょうか?


むむ。「信念」と「やめられない」ではだいぶ印象がちがいますね…。

信念というのは「保ち続けると特に固く決めた心」のことです。こうありたい、という希望よりもさらに一段上の強い意志を表しています。その決定を下したのは他ならぬ自分である、という点に注意してください。

一方、「やめられない」はときほぐせば「やめることができない」状態です。「やめる」というアクションの主体が自分であるにもかかわらずそれができないということは、「意に反して」というニュアンスがここに含まれていることを示しています。

「信念」がみずから律する能動的な状態だとすれば、「やめられない」は制限される受動的な状態ということですね。

ある種の束縛という意味ではたしかにどちらも同じです。この束縛を手錠に置き換えるなら、さしずめ前者は「みずから手錠をかけてカギを捨てた状態」、後者は「手錠をかけられてカギの所在を知らない状態」ということになりましょう。

しかし簡単に手放せる=カギがなくてもはずせる手錠を束縛とは呼べません。はずせるとすれば、あるいはないはずのカギを持っているとすれば、それはそもそも信念ではないし、またやめられないことでもないのです。

だとするとこの質問はちょっとスケールダウンして「できるかぎり持ちつづけると考えていたことをあっさり手放すのはアリやナシや?」くらいの意味合いがちょうどいいのかもしれません。束縛の度合いで言うと「カギを持ちながら手錠をかけた状態」であり、問われるのはそのカギを使うことの是非です。緊張がちょっとゆるみましたね。

そしてそういうことならそれこそ話は簡単である、と鼻息荒く申せましょう。手に入れた本を売ったりなんかするもんか、というスタンスをそれなりに長く貫いてきた僕も、あるときふと「べつにいいか」というきもちになってじつにあっさり売り払ったものです。今もあんまり売らないことに変わりはないけど、そう拘泥してもな、というところまでは心の規制も緩和されています。したがって答えは


A3: あります。そうすることもめちゃめちゃアリです。でないと僕も立つ瀬がありません。


ちなみに僕がよく引き合いに出す「キープレフト」は手錠というより手をつなぐかんじです。合わせて参考にしてみてください。




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その130につづく!

2013年2月25日月曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その128、もしくはDJにあるまじき了見の話


まあそんなわけで金曜の晩は渋谷でぬるぬるとレコードを回してきたのです。そういえば言ってなかったような気もするけれど、僕のなかの小さな人も「気にすんなよ」と肩を叩いてくれていることだし、言語に絶する寒風のなか心おだやかにこうして事後報告をしたためております。宇宙服くらいの完全防備でないと路上でうっかり命を落としてしまいかねないさむさです。ご機嫌いかがですか。

それにしても「重たいから持っていくレコードをなるべく少なくしたい」というDJにあるまじき了見から、選ぶのは自然と分数の長い70年代後半の曲ばかりになり(僕がいちばん好きな年代の曲はどれも2分強しかないのです)、結果としてレコードは18枚しか持っていかなかった(←すごい)あたりに意気込みのぬるさがよく表れていたと申せましょう。本職のDJならまずまちがいなく沽券にかかわる、10分越えのメドレー曲をかける禁じ手まで真剣に検討したくらいです。誰もやらないならむしろやれば良かったと今になっておもわないでもないですけど。

こんなレコードを持っていきました

Idris Muhammad "I Believe In You"




ヒップホップ/レアグルーヴ世代にはBarnerd Purdieと並んでド渋なジャズファンクの数々を世に送り出した超絶ドラマーとして知られているけれど、後期のアルバムになるとこんなラブリーな曲が収録されていたりするのです。ヒゲもじゃなおっさんドラマー名義の作品とはおもえない。


前期はこんなのが多い

"Super Bad"(JBのカバー)






ティファニーで住職をさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q: 24時間以内という制限つきで銀幕の世界に入り込めるとしたら共演(饗宴)したいスター、ヒロインはいますでしょうか?またその時の役どころは?


銀幕のスターに会いたいとか共演したいとおもったことはあんまりないですが(むしろその距離は遠ければ遠いほどいいと考えているくらいです)、そこをあえて曲げるなら、そうですね…三船敏郎の存在感に圧倒されたいです。「羅生門」のあのギラギラしたかんじもいいし、「天国と地獄」の静謐だけれどだからこそ息をのむ重厚な貫禄も捨てがたい。でも役どころが思い当たらないな。「羅生門」なら縛られて冴えない貴族の役がいいですね。

ミフネで思い出したけど、志村喬も大好きです。とくに「野良犬」の前半、取調室で交わされるあばずれ(という表現がしっくりくる)とのやりとりは、ふたりしてだるそうにアイス食ってるだけのようにも見えるのに、ベテラン刑事としてのタフネスと古狸ぶりがここだけでありありとわかる(!)最高の場面です。となると演じたいのはそこに居合わせる若きミフネ…ではなくて、やっぱりあばずれの役ですよね。女装して。

「トロピック・サンダー」でのトム・クルーズも筆舌に尽くし難いくらいチャーミングなので、間近に見られたらうれしいだろうなとおもいます。80年代のアイドル俳優がほぼすべてのシーンで怒鳴り散らす小太りのハゲを演じているだけでもおなかいっぱいってかんじなんだけど、エンディングの目を疑うようなダンスシーンにいたってはまったく、シビレるほかありません。ベン・スティラーとかロバート・ダウニーの印象がほとんど残ってない。この映画に入り込むことができるなら、地雷を踏んでバラバラになる雇われ監督あたりを目いっぱい演じて盛大に吹き飛ばされたいです。


A: 踊るトム・クルーズとバラバラに吹き飛ぶ雇われ監督




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その129につづく!

2013年2月22日金曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その127



ある日バイクのヘルメットから10円玉が出てきたのです。

ヘルメットというのは基本、頭にかぶるものです。財布の代わりにしたり、これで托鉢をしたりするものではありません。たしかにひっくり返せば物を入れるのにうってつけの形ではあるし、そんな用途があったって別にかまわないけれど、それならそれでもっとマシな代用品があるだろうとおもう。なぜこんなところから小銭が出てくるのかちっともわからない。

頭にかぶっていたのだから、ひょっとして頭からちゃりんと落ちたのではないかという可能性がふと脳裏をよぎります。知らないうちに10円ハゲができていて、頭皮が律儀に10円をひねり出しているということはないのか。あるいは10円玉大のスリキズを負っていて、平等院鳳凰堂が緻密に彫られているようにみえるけれどこれはたまたま模様がそう見えるだけで、実は単なる円形のかさぶたなのではないか。そうおもってどきどきしながら頭に手をやれば特に異常は見当たりません。ひりひりした痛みに耐えてまでかさぶたを10枚あつめても100円にしかならないことを考えれば、どうしたって割に合わないのだからこれはこれでよろしい。というかよく考えたらべつにどこも痛くはないのです。

叩くとビスケットが増えるふしぎなポケットの変異で、かぶると10円が出てくる魔法のヘルメット、という線も夢があります。いい年をしてそんなさもしい夢をみた覚えもないけれど、くれるというならそれはあなた、もらっておくにやぶさかではありません。バイクに乗るか否かにかかわらず、ヘルメットだけは毎日せっせとかぶろうというものです。一週間もつづければ卯の花くらいにはなりましょう。考えてもわからないことは積極的に油で炒めて胃の腑へおさめてしまいたい。

話にはいつも愉快なオチがある、と妄信してはいけません。さんざん紆余曲折したあげくどこにも辿り着かないことも、人生にはときどきあるのです。



ピザ枕さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)寝てないで食えってかんじですね。


Q: いつも思ってたんですが、モノクロの人物写真。まるで新聞から切り取ったものみたいに見えますが あれはいつも自分で撮ったものを加工して作っているんでしょうか?教えて下さい。


お察しのとおり、これは新聞です。1920年代から50年代くらいまでの古ーい新聞や雑誌からちょきちょきと切り抜いたものを、さらに加工して使っています。場合によっては、100年くらい前のものもあるかもしれません。うっかり折るとそれだけでぴりぴりと裂けてしまうような古紙ですね。この作業を始めると部屋がちいさな紙くずでいっぱいになります。

なぜそんな七面倒くさいことを好んでしているのかというと、僕はアナログなものに意図せず含まれてしまう「ノイズ」に対して偏愛とも言うべき敬意を抱いているからです。たとえばガラスをつくる上でまだ技術的な問題がクリアされていなかった大正時代のコップにはどうしても製造過程で気泡が入ってしまうんだけど、だからこそ生まれる味わいや趣がそこにはあります。今からしてみれば欠陥でしかないこの気泡が、つまりノイズです。

同じように、技術的な制限によってしか生まれ得ない、もっと言えばぜんぜん望まれていないようなところでしか顔を出さないある種皮肉な魅力が古い雑誌や新聞にもあって、気がつくといつもそんなところにばかり目を向けているわけですね。健全とはちょっと言いづらいけど、でもまあ、しょうがないよな、と肩をすくめるほかありません。


A: 古新聞、古雑誌、ぼろきれ等、ちり紙交換に出せそうなものを再利用しています。




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その128につづく!

2013年2月19日火曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その126



サンドバッグ定規さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)ボカスカやればストレス解消にもなる、シェイプアップ用定規のことですね。


Q: ムール貝博士は、お餅には何をつけて食べるのが好きですか?あと今好きな娘はいますか?


「という質問が来てたので訊きにきたんですけど」
「残念だったねえ」
「むむ」
「というかその大荷物は何?」
「せいろと餅米とコンロとボンベと杵と臼です。あとサラシ」
「ここで餅つきをするつもりだったの?」
「何をつけて食べるのか、なるべく自然に見たいとおもって」
「2月の半ばに餅をつく不自然さは気にしないんだね」
「ホントに留守なんですか」
「たしかに留守よりは居留守のほうが多いけども」
「どこへ行ったんですか?」
「ロシアだよ」
「ああ…」
「金属バット持っていそいそと出かけていった」
「金属バット?」
「打ち返しに行ったんだ」
「打ち返すって…あれ?隕石のことですよね?」
「そうそう」
「まず間に合わないんじゃないですか」
「うん、だから間に合ったらってことじゃないかな」
「仮に間に合ったとしてもムリですよね?」
「なんで?」
「なんでって言われても、こう、全体的に」
「そうかもね。でもわたしの知ったことじゃないな」
「まあ、それは僕もそうですけど」
「だいじなのは博士が留守ってことだけさ」
「ピス田さんは行かなくてよかったんですか?」
「行くわけないよ、ばかばかしい」
「鬼の居ぬ間に洗濯ですか」
「鬼ならむしろいてくれたほうがいくらか心強いんだけどね」
「怪獣みたいな人ですものね」
「いかん、ダイゴくん伏せろ!」
「え?」

パン

「何?なんかピストルみたいな音が」
「ピストルだよ」
「危ないじゃないですか!」
「この家で今さらそんなことを言うなんて、こっちがびっくりするよ」
「当たったらどうするんです?」
「弾を抜いて安静にするしかないよね」
「博士は留守なのに、とんだとばっちりだ」
「博士が狙われたわけじゃないよ」
「だって他にそんな…じゃ、ピス田さん?」
「もちろんわたしでもない」
「なんで僕が狙われなくちゃいけないんです!」
「博士の悪口を言ったからだよ」
「僕そんなこと言いました?」
「悪口に反応するようセンサーが設定されてるんだ」
「高度なシステムをこんなふうに使うなんてどうかしてますよ!」
「危ない!」

パン

「不用意すぎるよダイゴくん、これすごい精度なんだから」
「でも僕、役割的にツッコまないと…」
「ちょっと言い方を変えてやればいいんだよ」
「言い方って?」
「高度なシステムなのにこんな使い方はくだらない、とか」
「わあ!」
「伏せなくてもいいよ、ダイゴくん」
「あれ?なんで?」
「博士の悪口じゃないからだよ」
「めちゃめちゃはっきり批判してましたけど」
「批判と悪口はちがうもの」
「ほとんど一緒じゃないですか」
『どうかしてる』のは人だけど、『くだらない』のは使い方だろ」
「ホントに高精度だ!」

♪パラララッパラ〜

「なんか鳴りましたよ」
「ほめたからだね」
「ほめましたっけ?」
「高精度だって言ったじゃない」
「さっきピス田さんも言ってましたよ」
「あれは単なる事実だからね」
「どうちがうんですか」
「ダイゴくんのは感嘆符がついてた」
「そんなところまで判別できるの!?」
「冷静に考えてごらん。わりとふつうのことだよ」
「氷点下まで頭を冷やしてもそうはおもえないですよ」
「それで、何だっけ?」
「何って、何がですか?」
「何しに来たって言ってたっけ?」
「あ、そうそうお餅をね…」
「餅ね。ハテ、どうだったかな」
「だいたいお餅、食べるんですかね?」
「食べてたとおもうよ。正月。ダイゴくんは何が好きなの」
「僕は大根おろしです」
「あ、甘いのじゃないんだ」
「初めて食べた幼少の衝撃をいまだに引きずってるんです」
「なるほどね」
「ピス田さんは?」
「納豆かな」
「え?」
「納豆」
「納豆?」
「そう言ってるじゃないか」
「それ、お餅につけるものですか?」
「わたしはのせて食べるんだ」
「考えたことなかった」
「口のなかで天使が舞うよ」
「すべったりからまったりしそうですね」
「博士はいやがるけどね」
「ああ、ぶつくさ言いそう…あッ」
「へいきへいき。それは悪口じゃなくて事実だから」
ぶつくさ言いそうですよね!
「そんなにうれしそうにしなくてもいいけど、まあ、そうだね」
「これは焦げてる、これは甘すぎるとか言いながら」
「それが調味料みたいなものだからね」


A: ケチをつけて食べるのが好きです。


(せっかく道具を一式持ってきたので餅を搗きました)


「あともうひとつ来てるんです(もぐもぐ)」
「ふむ(もぐもぐ)」
「好きな娘はいますかって」
「やれやれ!」
「いるんですか?」
「いるわけないよ」
「知らないだけで、いるかもしれないですよ」
「そりゃそうだ。というかできれば知らずに済ましたい」
「だいたい博士、いくつなんですか?」
「かつてサンジェルマン伯爵と名乗ってたことは知ってるよ」
「気が遠くなるような話ですね」
「あ、待てよ」
「なんですか」
「ヒントになりそうな話は前にもしてたはずだ」
「年齢のヒント?」
「いや、恋のほう」
「えー!そんなのありましたっけ?」
「5年くらい前の話だよ」
「5年前に博士が恋?」
「いやいや、それに類する話をしたのが5年前ってだけだけど」
「そんな話、してましたっけ?」


(検索しています)


「あった。ほら、これだ」
「ホントだ!でもこれ…」
「恋とはどこにも書いてないけどね」
「うーむむむ。どうかなあ…」



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その127につづく!

2013年2月16日土曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その125



ミス・スパンコール秘蔵の1枚から



「ひとりだけパジャマで来ちゃった」みたいな緊張感のなさを感じます。




エルム街のアコムさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)たとえフレディだろうとご利用は計画的に!



Q: AKBの中で推しメンは誰でしょうか?僕は横山由依さんです。横山由依さんが最近太ったと各所で叩かれているようですがほっそりした太もものどこに正義がありましょう!


※ここで言う「最近」とは2011年のことです

僕は日ごろこういう話題にあまり興味を示さないように思われているふしがあるけれど、言うまでもなくそんなことは全然、まったく、ちっとも、これっぽっちも…とまではまあオーバーにしても、概ねありません。何が「ありません」なのか途中でわからなくなった人はもう一度読み返してみましょう。何しろ野暮用があって秋葉原に行くときにはきちんとAKBショップに立ち寄っているくらいです。グッズはつねに48人分用意されるわけではないらしい。

スキキライにかかわらず、テレビがあればそのときどきのはやりすたりがするすると頭に入ります。劇場に足を運ばなくても、AKBによる八面六臂の活躍は自然と目にすることになるでしょう。しかし先日もお話ししたように、ウチにはテレビがありません。主な情報源は新聞とインターネットです。どうしても著名人の動向はニュースになって初めて知ることが多くなります。顔と名前が一致するのもだいたいこのタイミングです。

しかしここ最近におけるAKBのニュースと言ったら、児童ポルノと丸刈り(強烈な組み合わせだ)くらいしか思いつきません。あと週に一度くらいは誰かがお勤めの終了を宣言している印象もある。歌って踊れるプロフェッショナルであることをのぞいたら、少年院と似たようなものかな…というのがしたがって今のところ僕が抱いている心許ないイメージです。ちょっと乱暴な気もするけど、少ない断片だけではいったい何が起きてるんだろうとただただ目を丸くするほかないのです。

話を元に戻すと、顔と名前が一致する人はいます。カワイイ!ともおもいます。しかしカワイイのはみんな同じです。たまたま知っているからといってそれを推しメンと呼ぶのはちょっと気が引けます。48人もいるんだから中には「趣味は回文です」「特技は目つぶしです」「おやつはいつもたたみいわしです」みたいな子がいたっておかしくないし、もしいるなら迷わず推したい。あと、無類の女のコ好きでハーレムみたいな環境に鼻血を押さえるのが毎日タイヘン!みたいな子がいたらすごい応援します。

そんなことをあれこれ考えながらAKB公式サイトのメンバー一覧を小一時間ずっと眺めてたんだけど…


A: 加藤玲奈さんです。


回文が好きでもおかしくない、という理由で。




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その126につづく!

2013年2月13日水曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その124


ミス・スパンコールが秘蔵の1枚を持ってきたのですが…



べつに珍しくもありません。ひょっとして見たことないのかとおもって黙っていたら、「これ、よく見かけるでしょ。ちがうの。よく見て!」


(よく見ています)


「もっとよく見てよ!」


(よく見ています)


「これ、こんな文字だった?


(文字?)




ぷりっとして…わあ、この表現すごい懐かしい!



とっくに淘汰されたとおもっていた昭和感まるだしの意匠がこんなところでひっそり生き延びていたとは、たしかに驚くほかありません。生きた化石を見たようです。


(具体的な過去の使用例)



(参考資料)


しかしよく見つけてくるなこんなの。




翼を踏んだサイさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q: 何の気なしに目の前の新聞をめくったら、ピス田さんの親戚筋と思われる黄緑色のひとがじ、とこちらを窺っていて本当にびっくりしました。正月から心臓止まるかと思った。あぶない。というわけで、こんな時期にどこから来られたのかわからないこの方はどうしたらよいでしょうか。とりあえず室内の鉢植えにご案内したものの、触角をフンフン動かして落ち着かないご様子です。(中途半端に暖かいところで亀を冬眠させると餓死するという話を子供の頃に聞いたので、なんだか微妙に気を揉んでいるのです)


A: 元の位置に戻してあげてください。


状況からして、たぶん途中まで読んでたんだと思います、新聞。




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その125につづく!

2013年2月10日日曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その123



押したい




スウィンギン天丼さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)ベスパで配達されるモッズのための天丼のことですね。


Q: よくある戦隊ものなどのロボットに入るための入り口はその機体のどのあたりにあるのでしょうか。かかとでしょうか?つむじでしょうか?


今もそうだとよいのですが、たしかにひと昔前の戦隊ものでは毎回むくむくと巨大化する怪人への対抗手段として、それとほぼ同じサイズの巨大ロボットが呼び出されていましたね。ほどなくしてやってきたロボの元へ颯爽と向かうヒーローたちの後ろ姿は、今も脳裏に焼きついています。

しかしつらつら思い返してみるとこの場面、駆け出すヒーローたちとロボットの間には相当な距離があったような気がしてなりません。個人的な印象で言うと、浅草からスカイツリーを見上げるくらいの遠近感です。遠すぎませんか。

あんまり近いと踏まれてしまうし、離れればそれだけ安全なのはよくわかります。また観光がてらぶらぶらと散歩するぶんには余裕で徒歩圏内です。必ずしも遠いとは言えません。しかし可及的速やかに駆けつけるとなると、およそ2kmの道のりはスプリンター並みの脚力でも5分はかかります。すでに巨大化してしまっている怪人にしてみれば、マニキュアを塗ったり煙草を取り出して一服でもしないかぎり、この間をもたせるのは至難の業です。また仮に怪人がこの時間差を受け入れるフェアプレイ精神の持ち主なのであれば、わざわざスケールの大きな肉弾戦に持ち込まずとも、話し合いによる穏便な解決が十分期待できます。感情的に直接が無理でも、第三者を介した交渉なら受け入れる余地もきっとあるでしょう。にもかかわらずそれをしようとしないのはつまり、怪人の懐がそれほど広くないからです。広かったら広かったでヒーローの立つ瀬がないし、むしろそうあってくれないと困るような事情もあります。となれば致命的なタイムロスの回避がやはり何としても必要です。いかにしてそれは成されているのか?

もちろん、ヒーローだから足がメチャ早い可能性もありえます。それならそれで何の問題もありません。あるいは映っていないところでタクシーに乗っていたとしても、ことが地球の危機なのだからなりふりかまわないのが当たり前です。そういう姿勢はむしろ積極的に支持したい。

しかし僕としてはここにもうひとつ別の、もっと根本的な疑問をさしはさむ余地があると考えます。端的に言うならこういうことです。そもそも彼らは本当にロボットに搭乗しているのか?

たしかにヒーローたちはコックピット的な空間で着席しています。ロボットも水を得た魚のようにバリバリと動き出します。しかし幼心に当時から気になっていたのは、彼らがあまり操縦をしているようには見えない、という点です。ときどき何かのボタンを押したりレバーをいじったりはしているけれど、どちらかといえばコックピットの中で全員が同じポーズをとっていたことのほうが印象に残っています。怪人との戦いにおいてすくなくとも人と同じくらいの機敏にして繊細な動作が要求されることを考えれば、息の合う仲間たちとのさらなる一体感よりもロボットとの一体感のほうがどう考えたって優先されるべきではないのか?

しかしこの不思議も、ロボットが自律的に行動していると仮定すれば合点がいきます。まるで中に人が入っているかのごとくバリバリ動き回っているのだから、そもそもコントロールを必要とはしていないと考えるのがやはり自然です。

そしてそれはまた、ヒーローたちはロボットを操縦していない、という衝撃的な事実をも意味しています。どうやら僕らは長いこと誤解しつづけていたらしい。

ここから導きだされる結論はもはやひとつしかありません。ロボットまでの距離が遠すぎるという先の疑問と突き合わせてみても、平仄が合います。こんな単純なことにどうして今まで気づかなかったのかと呆れ果てるばかりです。つまり…


A: あれは搭乗しているのではなく、コックピット的な楽屋でモニター越しに応援しているのです。




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その124につづく!

2013年2月7日木曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その122



ある日マンションの管理人室前に、郵便物が放置されていたのです。手に取ってみると、宛先はウチではありません。べつの部屋です。郵便受けに入っていないということはひょっとしたらすでに転居した人宛に来てしまったのかもしれないし、それならそれで元の位置に戻しておけばよろしい。そうおもって戻そうとしたら封筒の表に見たことのある雑誌のロゴがプリントされているのに気がついて、オヤとおもいました。この雑誌は知ってるぞ!おまけに差出人には「編集部」と書いてあります。この厚みは雑誌だ!とするとこれは…発売前の見本誌か?そうなのか?まさか名の知れた人の仕事場がここにあるのか!

とものすごい勢いで血圧が上がっていったんだけど、逆の立場でこんなふうに詮索されたらたまったものではないことにやっと気がつき、何も見なかったことにしてそっと郵便物を戻してきました。これ以上ふれてはいけません。忘れてしまうのがいちばんです。

思いもよらないところで、思いもよらない人とニアミスしてるものですね、しかし。知らずに何度か挨拶を交わしてたりしてたんだろうか?



世界でいちばん厚いカツさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)プリンセスに献上する王室御用達のとんかつですね。


Q: 幸せってなんでしょう?


人生には「考えずにすむならそれにこしたことはない」とおもわれることがいくつかあって、これもそのひとつです。そういう意味では借金の隣に並んでいてもおかしくありません。

人によってその定義は千差万別だとおもいますが、僕がおもうに幸せとは、甘くて、軽くて、貴賎の別なく誰でも楽しめるけれども、全体的にフワフワしていて形がはっきりせず、もっと言えばそれが何であるかも実はよくわからない、わたあめのようなものです。あのフワフワにはちょっと人智の及ばないようなところがあるし、ほっとくと勝手に溶けていくあたり、まったく油断なりません。あんまり深く考えずにむしったりちぎったりしながら顔と手をべたべたにしておきさえすれば、まず味わったと言って良いでしょう。

わたしもほしい、と安易にねだるのは禁物です。わたあめくらい、然るべきところへ足を向ければわけなく手に入ります。対価もせいぜい小銭です。拒否されることもありません。どうしても見つからないとすれば、それは見当違いの屋台を思い浮かべているからです。だってわたあめですよ!


A: わたあめのようなものです、よくもわるくも


あと、幸せはググっても手に入らないので注意してください。ネット上にはお宝がゴロゴロと無造作に転がっていますが、それもちがいます。十中八九、性的な何かです。お気をつけあそばせ!




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その123につづく!


2013年2月4日月曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その121、あるいは南北戦争とモータウンと家電量販店


池袋から新宿に向かう明治通りのとちゅうにビックカメラの本部があって、こないだ信号待ちをしながらその本部ビルを眺めているときにふと気になったことがあるのです。

ご存知ない方のために紐解くと、ビックカメラというのは「♪ひがしが西武でにし東武〜」という池袋最大の矛盾をみごとに突いた(西武百貨店は池袋駅の東口、東武百貨店は池袋駅の西口にあるのです)コマーシャルソングで知られる家電量販店です。以前は池袋の家電量販店と言えばビックカメラだったのですが、駅東口の真正面にどかんとそびえる、かつては三越だった歴史的な建築物がそっくりそのままヤマダ電機になって以来、すっかり影がうすくなりました。

そんなビックカメラがつい最近、今度はユニクロと手を組んで「ビックロ」という破天荒な店舗を新宿にオープンしたのは記憶に新しいところです。ビックロに生まれ変わったこのビルがかつては三越系列だったこともおそらく偶然ではないでしょう。しかし新宿は「♪しんじゅくにしぐち駅のまえ〜」で知られるCMソングが示すように、古来ヨドバシカメラの牙城です。以前はそれなりに棲み分けもできていたのに、こうなるともはや完全に家電三国志であり、おもえば何だかいたたまれないものがあります。何の話だっけ?

脱線ついでにもうひとつ余分な話をすると、先に挙げたヨドバシカメラのCMソングは何といっても南北戦争時代に生まれたアメリカの愛国歌(The Battle Hymn of the Republic)のメロディを、モータウンの「恋はあせらず(You Can't Hurry Love)」に代表されるいわゆる「恋のリズム(©高橋芳朗)」にのせた(!)マッチョな合わせ技が魅力の楽曲です。Happy Sadの恋のリズム特集のときにメールすればよかったとおもう。

これと



これを



合わせるとこうなる




それでまあ、肝心の本題なのですが

気になったことがあると言ったって、南北戦争+モータウン+家電量販店の闇鍋みたいな三位一体に太刀打ちできるインパクトがあろうはずもないし、この際きれいに忘れてください。

(用意していた本題をそそくさとしまいこんでいます)




さて、それはそれとして何しろ毎度こんな調子ですから、質問をいただいても遅きに失することがときどきあります。しかしまあそれは致し方ありません。スカートめくりへの対処法はスカートがめくれてから考える、それがパンドラ的質問箱です。開き直り方だけが年々スマートになっていきます。Bygones!


はらぺこギャングスタさんからの質問です。(珍しくムール貝博士がペンネームをつけていません)ギャングスタは食わねど高楊枝というやつですね。武士も江戸の末期はギャングみたいなものだったそうですよ。


Q: こんばんは、はじめまして、はらぺこギャングスタです。ムール貝博士に質問なのですが、私は来年大学受験があり、今必死に勉強しています。しかし、どうも勉強に集中できません。カッカッ!!そこで「勉強に集中する方法」を教えてもらいたいのです。これは一見簡単そうな問題ですが、実は東大の教授でも発狂するほどの難問なのです。どうか、よろしくお願いします。シャッシャッ!!!


質問をいただいたのは去年の2月なので、つまり今年が受験ということですね。先日センター試験が終わったことを考えると、控えめにみてもまったく手の施しようのないタイミングです。ぶじ春がやってくることを祈りつつ、その祈りをそっと脇に置き、さもこれからが本番であるかのような顔をして単刀直入にお答えいたしましょう。


A: こんなブログに立ち寄らないことです。


見てはいけない、しかし見ないと答えがわからない、この板挟み感こそ当ブログの真骨頂と言えましょう。あッ待って待って行かないで!

満開の桜が咲きますように!




質問はいまも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その122につづく!


2013年2月1日金曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その120


ときどき肉屋の看板で、ニコニコと満面の笑顔で楽しそうにしているブタとか牛とか鶏のイラストが描いてあるのを見かけることがあるけれど、そのたびにハラハラとしたきもちにさせられるのです。もしかしてわかってないのか?お前らこれから食われるんだぞ!



バービー任侠さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士が適当につけています)たぶん、極妻向けのシリーズですね、これは。


Q: 今年お知り合いになった女優さんが小林大吾を知っていたんです。ナーガさんとのポエトリーリーディングも観に行ったらしい。「どこで小林大吾を知ったの?」と聞いたら22歳の演出家男子に薦められたとのこと。『詩人の遺書』経由の私にとって22歳男子がどんないきさつで小林大吾を知ったのかは大きな謎です。「22歳男子が小林大吾を知るきっかけって一体なんでしょう?」


富山敬のナレーションよろしく、のっけから説明せねばなりますまい。富山敬というのは往年の名作アニメ・タイムボカンシリーズの世界観に欠くこと能わざる大声優のひとりでありまたこのタイムボカンというのは

(自粛)

たしか前にもここで触れたことがあるようにおもうけれど、「詩人の遺書」というのは僕がかれこれ10年以上前に管理していた、皮切りとも言うべきウェブサイトのことです。何しろ当時は詩を声に出して読んだこともなければトラックをつくろうと考えたこともなく、ましてやじぶんがCDをリリースすることになるとは夢にも考えていませんでした。遣り手のフラインスピンオーナーはもちろん、名伯楽である古川耕とさえまだ出会っていない頃の話です。ヒップホップにはこの時点でかなり(すくなくともJose JamesがFreestyle Fellowshipをカバーしていると聞いてすぐに反応するくらいには)浸かっていたとおもうけれど、古川さんと出会うまでその方法論とじぶんの詩を結びつけて考えたことはありません。そのころ僕が書いていたのは2行から10行くらいのごくごく短いものばかり、言い換えれば「ぎりぎりまで言葉を削ぎ落とすこと」にひたすら心血を注いでいたのです。アルバムから振り返るとちょっと想像しづらいですね。一例を挙げるとこんなかんじ。



クチビリティ/quis separabit?



くちべに鎖骨エゴイスト
奴隷あたしがマゾヒスト

せきらら小娘テロリスト
エリーゼのためにテンペスト

3ツ星評価で
4ツ星ってとこ

quis?

温室効果で
やせちゃいました!

ego.

うんざりするほど可愛い子
くちからぷーっとふくらまされて
火炎みたいなため息でちゃう
奴隷あたしがマゾヒスト

きょうとぎていしょに
火をつけるテンション

せきらら小娘テロリスト
エリーゼのためにテンペスト

くちべに鎖骨エゴイスト
奴隷あたしがマゾヒスト


quis?


ego.




したがって、バービー任侠さんは小林大吾の原点から今に至るまでの軌跡のほぼすべてを知り、かつ見守りつづけてくれている、最古参の一人ということになります。驚きよりもむしろショックに近いです。そんな人が他にひとりでもいるんだろうか?細くても切れない天蚕糸のようなつながりをおもうと、もはや友人どころか血縁でないのがふしぎなくらいです。いつもそこにいてくれることのよろこびを、涙なしに受け止めることがどうしてできましょう。本当にありがとう!どうか見限らないで!

うっかり漏れた本音はともかく、いただいた質問に対する答えは実のところ呆気ないくらいシンプルです。タマフル(今や絶大な影響力を誇るTBSラジオの看板番組のひとつです)、日本語ラップ、それからYouTubeがその大部分を占めていると考えてまずまちがいありません。むしろそれ以外の経由が稀です。べつにラップしてない(ライミングを前提とはしていない)のに日本語ラップというのは今もふしぎなかんじがするけれど、そうおもう人のほうがたぶん少ないし、おかげでいろいろと恩恵に与っているのでしれっと紛れ込ませてもらっています。いい時代です。何食わぬ顔で居座っておきたい。

(何しろこの規模だから、大国の庇護がどうしても意味を持ってくるのです。フォークランド諸島みたいに


A: タマフル、日本語ラップ文脈、YouTubeのどれかです、おそらく。


それはそうと、僕としてはバービー任侠さんが「詩人の遺書」を知ったいきさつのほうがよほど気になります。知るのが怖いような気もしますけど。





質問はいまも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その121につづく!