ファイナルファンタグレープさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)
Q. これから年末年始を楽しもうという時に財布を失くしてしまいました🥲立ち直るためのアドバイスをいただきたいです🙇
これが3ヶ月前の話であることはさておき、財布の紛失は人生における重大な事故のひとつです。財布には紙幣や硬貨だけでなく身分の証明になるものが含まれていたりするので、自分が何者であるかを客観的に示すことができなくなる恐れもあります。そうなるともはや紛失というよりむしろアイデンティティの喪失に近い。取り乱すのも無理はないし、金額どころの話ではないとも申せましょう。
おまけにタンスの角に足の小指をぶつけるのにも似た精神的苦痛が2週間くらい続きます。治療法といえば近しい人の慰めと時間(流れるだけで特に何かをしてくれるわけではない)くらいであり、残念ながら現代の医学ではどれだけ手を尽くしてもどうにもなりません。運が良ければまるで初めから何ごともなかったかのようにきれいさっぱり完治するし、運が悪ければ心の奥にまたひとつブラックホールができます。そういう病です。
人もまた広大な宇宙と同じく心にいくつかのブラックホールを抱えて生きているわけですが、そのひとつに財布が、ひいてはアイデンティティが秒速1万kmで飲み込まれると考えるのはなかなか趣があります。太陽すら豆つぶ扱いするブラックホールと秒速1万kmという鬼のようなスピードの前では僕らの自己同一性など原子ほどの意味もありません。況や財布についてをやというか、なんならちょっと夢があるような気もしてくるじゃないですか?そんな気はしないと言われたら僕もそうだよねと思いますけど。
しかし一方で、財布がアイデンティティに等しいとするなら、今ここでこうしてキーを叩いている僕はなんなのだという疑問も湧いてきます。たしかに僕らはこの肥溜めみたいな世界を生き抜くために財布の機嫌を伺う必要があるし、それは確かなことだけれども、僕らが僕らであることまで財布に委ねているかといったら断じてそうではありません。どちらかといえば主人は僕らであって、財布の立場は単なる管財人です。僕らが財布を失ったのではなく、財布が職務を放棄したと言うべきでしょう。職務放棄どころか、業務上横領まで含まれます。ふつうに考えたら、財布に対する告訴まで視野に入れるべきです。腕のいい弁護士を探しましょう。そして告訴の準備が整うころには、だいぶ気が紛れていると僕は思います。
A. 財布を告訴しましょう。
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その421につづく!
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