2023年3月3日金曜日

「アグロー案内」の奥行きが変わる細部について、その3


世界各国のウィークリーチャートを瞬く間に席巻してトレンドに上がらぬ時とてなく、取材やらオファーやら次から次へとひっきりなしで片っ端からお断りせざるを得ないような状況のイメトレに余念がないアグロー案内 VOL.4、今回は山本和男待望の新作である「推理の時間/tilting at windmills」についてお話しいたしましょう。

年末に人知れず開催されたライブイベント「アグローと夜(AGLOE AND NIGHT)」では宿敵である森脇(もりわーきー)教授との最後の対決にいよいよスポットが当てられるとお伝えしたような気がしないでもないので「あれ?」と思われた方も数人はいらっしゃるかもしれません。対決ではなかったのか?その気持ちはよくわかります。しかし名探偵といえば何と言っても鮮やかな推理です。推理をしない名探偵など開かないパラシュートみたいなものであって、それはただ地面に激突するだけの落下物にすぎません。パラシュートである以上は開かなければ始まらないし、だとすれば名探偵もまた推理をしなければ始まらないのです。

この曲のイントロではいかにも古めかしい、時計の金属音が使われています。デジタル中心で秒針という概念すら希薄な今となってはカチコチという擬音も何を意味しているのかちょっとわかりづらくなっていますが、これは実際に今もウチでふつうに使っている振り子時計です。昭和初期のものなので、かれこれ100年近く現役ということになります。良い音だからと使うあてもないのに録音しておいた甲斐がありました。実際これほど完璧な使いどころはこの先絶対にないと思う。古時計も、持っておくもんですね。



今回の英題 "tilting at windmills" についても触れておきましょう。tiltは「突撃」、windmillsは「風車(ふうしゃ)」です。これはかのドン・キホーテが風車を敵と思いこみ、大立ち回りというか盛大な空回りをした有名なエピソードを元にした慣用句で、ありもしない敵に戦いを挑むこと、つまり「独り相撲」を意味しています。

名探偵山本和男がいったい何を相手に勝利を収めようとしているのかを露骨に示唆する、何ならこのタイトルが「事件の謎を解く山本和男」というさらに大きな謎を解く手がかりでもあったわけですね。

それにしても、タケウチカズタケと小林大吾のどちらか一人が欠けたら成立しない表現がまさかこういう形で結実するなんてまったく、しみじみと感慨深いものがあります。

気づいたらシリーズを継続しなくてはならない最大の理由になっているところが最高じゃないですか?

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