さて、アグロー案内 VOL.2です。先月末のリリース以来、各方面から尽きることがない絶賛の声を頂戴しているような錯覚を膝に抱いて猫のように撫でながら迎える9月、ご機嫌いかがですか。
今日はお問い合せがすごく多かった、というかそういうお問い合わせが1件でもあったことにして、アグロー案内のちょっとした謎についてお話ししましょう。具体的にはVOL.2、3曲目の「名探偵山本和男 THE MOVIE(予告編)/the yamamoto kazuo movie (official teaser)」についてです。
山本和男がまだ小学生だったタケウチカズタケ少年によって生み出された探偵であることは確か前回にお伝えしましたが、それはタケウチカズタケが今も自他共に、では全然ないけれども少なくとも自身はっきりそう認める、シャーロック・ホームズの熱烈な支持者だからです。さすがにホームズを実在の人物と見なして語るシャーロキアンとまでは言わないまでも、古い外国の市街地図を見て「あ、わかる、これロンドンやんね」と一目で見抜いてしまうくらいの愛好家ではあります。
たとえば彼のソロアルバム「Under the Willow -Rain-」に収録された「Barrymore」という曲は、シャーロック・ホームズシリーズのひとつである「バスカヴィル家の犬」に重要な役割を担って登場する執事、バリモアがその由来です。
「名探偵山本和男 THE MOVIE(予告編)/the yamamoto kazuo movie (official teaser)」(長いな)に含まれるセリフの数々は基本的にタケウチカズタケ本人の希望によるものですが、僕もホームズシリーズは一応すべて読んでいるし、せっかくなら本家に対するオマージュになるような一言も忍ばせておきたいと提案して採用されたものもあります。そのひとつが「蕨市に行ってらしたんですね」という一言です。
シャーロック・ホームズシリーズは基本的にすべて相棒であるワトソンが記録として事件を語る体裁になっています。そのワトソンと初めて顔を合わせた際、ホームズの最初に発した一言が「やあ、どうも。アフガニスタンに行ってらしたんですね(How are you? You have been in Afghanistan, I perceive)」だったのです。ワトソンがアフガン戦争に従事していた軍医であるといきなり看破することで読者にホームズの超人的な洞察力を知らしめる、シリーズにおいても重要なシーン、そして欠くべからざる一言ですね。
さすがに当時とは状況がぜんぜん違うばかりか、今このタイミングでパロディとしてかの地を持ち出すのは情勢的にちょっと憚られるものがあるし、そもそも日本から出たことなさそうな山本和男とアフガニスタンが似合わなすぎる、待てよ、そういえば日本にも多くのクルド人が暮らして称するところのワラビスタンがあったな、よし、じゃそこにしよう。
ということでめでたく「蕨市に行ってらしたんですね」と相成ったのです。そう考えると名探偵である山本和男が初対面でキラリと何かを見抜いたような気がしてくるじゃないですか?何ならそう指摘された相手が戸惑いながら「蕨市?いや、行ってないですけど……」と返すところまで想像していただきたい。
もちろんあくまで「スタン」という接尾語(土地という意味のペルシャ語らしい)に特化した連想なので、他意はありません。
いずれにしても、何もなさそうで何かある、もしくは何かありそうで何もない、というのはおそらく、アグロー案内に練りこまれたスタンスのひとつです。果たして山本和男はシャーロック・ホームズと肩を並べる名探偵なのか、それともただものすごくそう見えるだけなのか、それもまた追々、明らかになっていくことでしょう。
ならなかったらすみません。
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