2015年3月31日火曜日

ケンタッキーフライドチキン@UKからの衝撃的なニュースが安田タイル工業を直撃した話


発売から8ヶ月ちかくたった今ごろになってこんな話を持ち出すのも気が引けますけれども、アルバム「小数点花手鑑」には「安田タイル工業のかなり重要な会議(抜粋)」という不毛なスキットが収められています。「世界をぴかぴかしたタイルで敷きつめたい」「タイルは神が与えたもうた最大の何かである」を合い言葉にもっぱらタイルの、もしくはタイル状の、でなければ便宜上ただそう呼んでいるものの普及につとめてきた安田タイル工業の専務と主任が、これからのタイルとそのあるべき形について真剣に語り合っている様子をICレコーダーで隠し録りしたものです。

くわしくは実際にアルバムをお聴きいただくとして(宣伝)、この会議の録音には2人のこんなやりとりが残されています。


主任:そうですね、いくつかあるんですが、まずひとつには(タイルの)食用という方向性を考えてまして…
専務:しょくようってのは?つまり食べるってこと?
主任:そうです。あのタイルのつやつやしたコーティング部をですね、シュガーグレイズドと言いますか、糖蜜のカラメル化で…
専務:溶けるんじゃないの?
主任:いえ、今はあの、お口で溶けて手に溶けない方式が定着してまして…
専務:溶けないんや。
主任:溶けないですね。
専務:それで、お腹がすいたときに剥がして食べる。
主任:そうですね、張り替えの需要が増えるという点ではそれも見逃せない利点のひとつなんですけれども……


タイトルに(抜粋)とあるとおり、録音は2分ほどでフェイドアウトしていますが、500部限定で製作された「小数点花手鑑 特装版」にはもう1枚「パン屋の1ダース」というCDが付属しており、ここにはこの不毛な会議の続きが収められているのです。ちょっとだけ抜き出してみましょう。


専務:土台の陶器部分についてはどうなの?
主任:はい。えー、ここに資料が……
専務:ウェハースとかにするわけにはいかないでしょ、やっぱり。
主任:それについても検討を始めてまして……

(中略)

主任:そうですね、最初はいろんなのを試……ひょっとするとあの、ウェハースも……
専務:あ、ウェハースいけるんや。
主任:ウェハースが水に弱い、というのもまあ、現時点での話なので、50年後のウェハースは……
専務:ああ、そうかそうか、技術開発が進んだ後のウェハースは……
主任:全然あの、船の材料になるようなウェハースもできてるかもしれないですし……


ああでもないこうでもないと議論を重ねていますが、要は「お風呂とかに貼ってあるタイルが食べられたらいいよね」「そのためにはまず水を克服しないとね」という話です。

さて、ここからが本題ですが、先月この議論に終止符を打ってしまうほど衝撃的なニュースがイギリスから流れてきていたのをご存知ですか。


photo: KFC UK

Edible Coffee cup in KFC Tests in Britain  :New York Times

言わずと知れたフライドチキンの総本山であるKFCが、シアトルズ・ベスト・コーヒー(Seattle's Best Coffee)のイギリス上陸に伴うお披露目キャンペーンの一環として「食べられるコーヒーカップ」を開発した、というのです。

コーヒーカップの形をしたお菓子、ではありません。実際に容器として熱々のコーヒーが注がれる、そのカップがぜんぶ食べられるつくりになっています。これだけでも十分インパクト大なんだけど、安田タイル工業的に目を瞠らずにいられないのはその材料です。

→an edible cup made from wafer coated in sugar paper and lined with heat-resistant white chocolate.

"sugar paper" で「?」となるけど、画像からしてもおそらく砂糖でコーティングしたウェハースを耐熱のホワイトチョコでくるんである、ということでまず相違ありますまい。

砂糖のコーティングを施したウェハースで耐水性を高めて陶器の代わりにする……食用タイルにおけるウェハースの採用はまだまだ先の話だとのんきにかまえていた安田タイル工業にとってはまさに青天の霹靂です。専務と主任が「濡れてもふやけなくて食べるとおいしいタイル」について喧々諤々の議論を繰り広げていたとき、海の向こうではすでにこれを凌駕するプロジェクトがリアルタイムで進行していたのだから、そのショックは言葉に尽くせないものがあります。ひょっとして船の材料になるような丈夫でおいしいウェハースも、50年後どころか世界のどこかでとっくに実用化されてたりするのではないか?

いずれにしても安田タイル工業にとって一刻を争う事態であることだけはたしかです。早急に主要メンバーを招集して会社の未来図を描き直さなくてはなりません。時代を先取りしていると得意になっていた「食べておいしい丈夫なタイル」の発想がすでに手遅れだったなんてまったく、つくづく井の中の蛙ぶりを痛感させられます。広げたはずの大風呂敷も今やハンカチにしか見えません。世界は広い。

2015年3月28日土曜日

栗千葉市役所から届いた丁寧かつ理不尽な通知のこと


【TRINCH】にTシャツほか4点を追加しています。


「それでね、博士」
「うわっ何だやぶからぼうに!どこから生えてきた」
「人を草みたいに言わないでください」
「草のほうがよっぽど無害だ」
「僕は人畜無害の見本市みたいな男ですよ」
「Wipe your dirty hands!」
「何ですか?」
「お前の汚れた手を拭きなさいと言ったんだ」
「これはどうもご親切にすみません」
「気にするな。独り言だ」
「それにしては命令口調でしたけど」
「英会話のレッスンだ。邪魔をするな」
「英会話?」
「It is rumoured that Diago is dead.」
「いまデッドって言いました?」
「邪魔をするなと言ったろうが!」
「話を聞いてくださいよ」
「いつからいた?」
「ずっといましたよ」
「まあいい。用件はなんだ。あ、ちょっと待て」

バシッ

「痛い!」
「よし、気は済んだ。話せ」
「英会話のテキストを投げつけるなんて!」
「これくらいで済んだだけありがたいとおもえ」
「言われてみればありがたいような……」
「用件はなんだ」
「あ、そうそう、あのですね」
「それは気の毒だった」
「まだ話してないですよ」
「もう聞き終わったような気がする」
「まだ見せてないですよ」
「もう見たような気がする」
「これなんです」
「めげないやつだ」


「それがどうした」
「市役所から届いたんですけど」
「見ればわかる」
「博士の差し金ですか」
「何でもかんでも人のせいにするな!」
「だって略奪のお知らせですよ!」
「略奪になんか興味はない」
「でも……」
「その気になれば何でも手に入る」
「どうやって?」
「手を伸ばせば向こうから飛びこんでくる」
「限りなく略奪に近くないですか」
「まあよかったじゃないか」
「?何がですか?」
「まちがえた、気の毒だったな」
「定型句で適当にあしらわないでください」
「あしらう以外にどうしろと言うんだ」
「横暴すぎるとおもうんです」
「何がだ。むしろ親切じゃないか」
「いきなりこんな、根こそぎ持ってくなんて言われても……」
「だから事前に知らせてるんだろうが」
「法に反してませんか」
「法に基づいて執行するんだろ」
「ぜんぜん釈然としない」
カカオの原産地はどこか知ってるか?
「え?原産地?何の?」
「カカオだ」
「カカオ?ってチョコの?」
「何度も言わせるな」
「南米ですよね?何の話ですか?」
「じゃ最大の産出国はどこか知ってるか?」
「南米じゃないんですか?」
「ちがう。アフリカだ」
「アフリカ?なんで?」
「中南米は病害が多くて話にならんのだ」
「こっちも今まさに話になってないですけど」
「チョコLOVEなヨーロッパはアフリカにカカオ農園をつくった」
「はあ」
いま世界中どこへ行っても当たり前のようにチョコが買えるのはアフリカがヨーロッパの植民地だったからなんだぞ
「それがどうかしたんですか?」
「ここまで言ってもまだわからんのかこのヘドロ脳め」
「謂われのない中傷を受けてる気がする」
「その略奪がいずれ世界に恩恵をもたらすかもしれんということだ」
「世界に!?」
「世界にだ」
「恩恵を?」
「恩恵をだ」
「でもそんなこと言われても僕には関係ないですよ」
「冷静なやつだ」
「困ったなあ」
「だいたいそんなにイヤならなぜ引っ越さないんだ」
「Σ(゚Д゚)」
「対象地域の外に移れば……なんだその不愉快な顔は」
「(*´∀`*)」
「Would you please get out of my face?」


2015年3月25日水曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その207

すごい近くにツグミがきた


2Dプリンタさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q: 大吾さんが、歳をとるとともに恥ずかしくなってできなくなったことは何かありますか?私はメリーゴーランドに乗ることです。なんとなく「子供か、子供の付き添いでないと乗ってはいけないもの」というイメージがあって…大好きなのでいつかひとりで堂々と乗りたいです。


できればそっと胸に秘めておきたい大事なものなので名前は伏せておきますが、そういえば僕もあまりに思い入れがつよすぎていっそ個人で所有したいくらい大好きな遊具がひとつあります。前にも書きましたっけ?


人生の折り返し地点と言ってもおかしくない年になった今もそのきもちは全然変わりません。そのスタイルから構造、ネーミングに至るまで何もかもが昭和っぽい野暮ったさに満ちていて、たしか今では日本に下手したら1台、よくて数台しか残ってないような遊具です。昨年の冬、ひさしぶりに遊んだときもちびっこに紛れて堂々と並びました。どちらかといえば周りのちびっこより係のお姉さんのほうが戸惑っていたような気もするけど、操作に慣れた中年のおっさんがヤッホーな勢いでぐりんぐりん乗り回してるんだからそれはまあ、しょうがないよなとおもう。

したがって僕は言うまでもなく、2Dプリンタさんのメリーゴーランドが好きというきもちを心の底から支持する者です。今すぐにでも連れていきたいとおもうし、何なら僕もいっしょに乗りましょう。手を伸ばせば届く道ばたの花と同じくらいフレンドリーなよろこびを、誰であろうと奪うことはできません。あるいはメリーゴーランドに乗らないことで保たれる大人としての何かを右手に、乗ることで得られるシンプルなよろこびを左手にのせて比べてみるのもいいとおもう。どう考えても左手のほうが大きくてやわらかくて温かいという気がしませんか。

質問の答えになっていないのはもちろん僕もよくわかっています。わかっていますが、何しろ僕は先の例からもおわかりのように、大人になっても遊具にヤッホーでぐりんぐりんの人間なので、どうか大目に見てください。

エクスキューズついでにもうちょっとだけ食い下がると、東京の遊園地では老舗に数えられるとしまえんには、100年以上前に作られて今なお現役で稼働する、クラシックにして超モダンなアールヌーヴォー様式の、うっとりするほど美しいメリーゴーランド「カルーセルエルドラド」があります。ご存知ですか?日本どころか世界的にも最長老クラスの回転木馬なので、遊具というよりもはや文化遺産です。他を圧倒する威厳と貫禄、褪せることのない煌めきをまとったこのメリーゴーランドの前では、大人と子どもの線引きも用を成しません。みな等しくその美に打たれるばかりです。

そしてこれなら、誰に憚ることなくそのよろこびを心ゆくまで堪能できましょう。何しろメリーゴーランドであると同時に貴重な文化財でもあるのです。長く受け継がれてきた歴史の一端にふれるのだから、これ以上の大義名分もありません。いつかなんて先を待たずに、意気揚々と乗りこもう!


A: それはそれとして、恥ずかしさは年々薄れていってる気がします。何に対しても。




質問はいまも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その208につづく!

2015年3月22日日曜日

甘鯛のポワレ教授による実践的な英語のレッスン vol.1



【TRINCH】に数点、追加しています。どういうわけだかちっとも支持される気配のない芥川鼻店から、キュートな看板娘がお目見えです。エロ本の山から生まれた火焔鳥iPhoneケースもあるよ!


このグローバルでビッグデータのクラウドコンピューティングがソーシャルな時代にあって、英語は欠かすことのできない世界の共通語です。先日の天声人語で目にした「誰もが貧しかった時代には等しくドリームがあった。」という一文を見るにつけても、もはや後戻りのできないところまで来ているとつくづくおもわされます。


そんなクリームみたいな単語を持ち出されてもいまいちピンとこないようですけれども、あったというのだからかつてはきっと「あっ家にドリーム置いてきちゃった」「ふたつあるけど、使う?」みたいな会話があちこちで当たり前のように交わされていたにちがいありません。

しかしそれもドリームなるものを共有しているからこそ成り立つ話です。小川のような会話の流れをせきとめて「ドリームって何?」と尋ねるのはやはり憚られるものがあります。空気を読むことが高度に求められる現代においてはなおさらです。発音も判然としないようなむずかしいのはともかくとして、日常的に使われる単語くらいはできればあらかじめ押さえておきたい。

そこで今日はすこし英語の勉強をしようとおもうのです。いいあんばいに英単語カードの立派なセットもあります。缶に入っている高級なやつです。



100年ちかく前のだからちょっと古いし、今みたら「dream」も入ってなくて代わりに「dread(恐怖)」が入ってたけど、まず問題はないでしょう。レッツラーン!

He is a burden to his parents.
彼は両親の厄介ものだ。

Yesterday a young man threw himself into the crater of Mt. Asama.
昨日一青年が浅間山の噴火口へ身を投げました。

I am sorry to say that all my efforts were in vain.
私の凡べての努力が無駄であつた事が残念である。

The house is enveloped in flames.
家は火焔に包まれた。

I gave a kick to the mad dog.
私は狂犬を一と蹴り蹴つた。

It is rumoured that Kato is dead.
加藤が死んだと云ふ噂がある。

I beat the dog soundly.
私は犬をうんと打つた。

Wipe your dirty hands with the towel.
お前の汚れた手を手拭でふきなさい。


実践的な例ばかりでじわじわきますね。しっかりおぼえましたか? Wipe your dirty hands! ではまた次回、お目にかかりましょう。ポワレ!(挨拶)

2015年3月19日木曜日

さて、そろそろ極上の鳥刺しについてお話しておこうの巻


先日のチケットタオルにひきつづき、クリープハイプのツアーグッズ「ボーイズENDガールズTシャツ」をデザインしています。販売は今週末スタートの全国ツアー後編から!あまりに出来がよいため、はやくも話題沸騰です。僕のなかでですけど。


若きクリープファンのみなさまが黄色い悲鳴を上げながら身につけてくれますように。そして願わくばそれをこしらえたのがよれよれしたしがない中年であることがバレませんように。


そしてそういえばすっかりお伝えし忘れていましたが、今月末は三軒茶屋のUmebacheeというお店で「おいしい鳥刺し feat. ライブ&DJ&トーク」的な他にあまり例のないかたちでのイベントがございます。言うまでもなく僕のライブではありません。僕は好きなレコードを適当に回したり回さなかったりする係です。


2015. 3. 28 土曜深夜
深夜のUNDER THE WILLOW kitchen
@三軒茶屋 Umebachee
OPEN 23:00
MUSIC CHARGE 1,500
LIVE: タケウチカズタケALI-KICK
DJs: ALI-KICK小林大吾Killy Gackley


HIPHOP/HOUSEを生み出し続けるキーボーディスト・プロデューサー、タケウチカズタケが音で繋がる音楽仲間達と、ライブ+DJ+トークを三軒茶屋の日本酒の美味い店で繰り広げる夜!(中略)黒いグルーヴと鍵盤の音、美味い酒と楽しい仲間が集まる「深夜のUNDER THE WILLOW kitchen」へようこそ!!


ということなのですが、イベントの打ち合わせを兼ねつつ、鳥刺しがおいしいというので僕もご相伴にあずかったところ、想像をはるかに上回る衝撃の美味さだったため、急遽「むしろ鳥刺しがメインでいいんじゃないの」ということになりました。ふだん口にしている鶏肉が近所の遊び友だちなら、ここで出会えるさまざまな種類の鳥刺しは高貴な気品を身にまとい、舌の上にレッドカーペットが敷かれるような正真正銘のセレブリティです。とにかくこの鳥刺しを多くの人に味わってほしい。そしてその味わいをより豊かにしてくれるようなライブまである。最高じゃないですか?




大まかに言うと、鳥刺しに舌鼓を打つ合間にライブをしたりレコードを回したり気の向くままに喋ったりしながら鳥刺しに舌鼓を打つ、そんなイベントです。"UNDER THE WILLOW -kitchen-" というイベント名もこうなるとなぜ "UNDER THE WILLOW -chicken-" でないのかふしぎなくらいですが、ともあれラジオみたいな雰囲気でわいわいやることになるんじゃないかとおもわれます。

何より座敷です。いやでもゆったりと寛がざるを得ないし、おまけにおいしい日本酒がずらりときています。そんなこんなで一献傾けつつ、極上の鳥刺しとタケウチカズタケの熱いプレイに聞こし召してもらえるなら僕らとしてもこれに勝るよろこびはありません。そしてさらにこれは推測ですが、おそらくALI-KICKのシンガー(!)としての一面も観られるんじゃないかとおもいます。ぜひともお誘い合わせのうえ、舌なめずりでおいでませ。

2015年3月16日月曜日

つねに時代の先を行くアンビヴァレントな駆け落ちマガジン「ELOPE」3月号のお知らせ


ノストラダムスの大予言を機に創刊した日本初の駆け落ちマガジン「ELOPE」も、いよいよ17年目に突入!真実の愛を追求するワン・アンド・オンリーな雑誌として、正しくも心ない火の粉を振り払う日々は変わらずですが、その甲斐あってか今では親子二代で愛読されてるご家族もいらっしゃるとか。「甘く切なく抜け目なく」をモットーに、フットワークもますます軽く、ELOPEはこれからも純愛道を一心不乱に突き進んでいきます!人の恋路を邪魔する者はたとえお釈迦さまでもゆるしません!世界を敵に回しても、ELOPEだけはあなたの味方です!ついでに婚約不履行による訴訟で現在も法廷闘争中の編集長に励ましのお便りを!

3月号の巻頭特集は新生活応援企画第2弾!「続・プロが教える身元偽装マニュアル」です。偽名によるメリット・デメリットとは?効果的な変装は安易な整形を超えるってホント?完全な別人として生まれ変わるのに必要な資金ってどれくらい?盲点を逆手に取る「盗まれた手紙メソッド(Purloined Letter Method)」って何?などなど、盛りだくさんの内容でお届けします。他にも嘘をつかずにすむちょっとしたコツや、知っておきたいPhotoshopの基本的な操作といった日常生活を支えてくれるディテール方面までしっかりとカバー。かゆいところに手が届くいたれりつくせりの充実ぶりです。

第2特集はお待ちかね、駆け落ちカップルの聖地とも言われる「グレトナ・グリーンへの移住計画」。ドラマチックな土地の歴史を紐解きつつ、のびのびと愛を語る先輩方の暮らしをレポートします。現地の不動産情報や移住に必要な手続きもわかりやすくまとめてあるので、あとは2人で荷物をまとめて離陸するだけ。必見です!

そして忘れちゃいけません。春といえばもちろん付録はコレ!「女将の口が固い安心の宿マップ」2015年版が今年も満を持して登場です。オンライン予約が可能なので、リハーサルとしての活用もOK。事前に事情を伝えておくと思いがけないサービスがあるかも!?本番にそなえてとっておきの宿を見つけてください!

【その他の鉄板コンテンツ】
・経験者が語る成功と失敗の実例
・ウォートン流交渉術に学べ!
・これが最強!追っ手の撹乱に使えるITツール
・置き手紙はこう書け
・教えてベンジャミン
・ムード高まる春の倹約レシピ
・最新駆け落ちファッション
・捜索願インフォメーション
・文通コーナー
・虹色ポエム

今月号の表紙に使われたイタリアのGiordano製タンデム自転車を抽選で一名(というか二名というか)の方にプレゼントします。ご希望の方はハガキに住所、氏名、年齢、電話番号、ご両親へのメッセージもしくは捨て台詞をお書き添えの上、ご応募ください。3月27日(金)の消印有効です。たくさんのご応募、お待ちしています!

注:日本国内において、公道でのタンデム走行が可能な自治体は非常に限られています(長野、兵庫、広島など)。詳しくはお近くの公安委員会にお問い合わせください。


……というTシャツをふくむ数点がTRINCHに追加されています。



デッドワックス兄弟の反省会をモチーフにした「it's not my day」マグでは、曲中で触れられているシュガーパイ・デサントのレコードが明らかに!一見カッコいいけどよく見るとひどいことしか書いてない「バニーズへようこそ!」マグもお見逃しなく!


2015年3月13日金曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その206


甘く危険なカオリン(ケイ酸塩鉱物)さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q: 2012年、ダイゴさんにとって1番の事件は?


どう考えても2015年に引っぱり出してお答えする質問ではないとおもいますが、これにはわけがあります。というのもこの年、僕にとっていちばん大きな事件は、気持ちの整理に3年を費やさねばならないほどショッキングなものだったからです。ようやくこうしてぽつぽつとお話できるようにはなった気がするものの、それでもやはり、思い出すと頭を抱えてゴロゴロとのたうち回りたくなります。夢であってくれたらいいのにと今でもおもうし、記憶にうすく靄がかかっているからひょっとしたらこの年ではなくてもっと前だったかもしれないし、でなければ実際に夢だったかもしれません。すくなくとも若気の至りというにはちょっと薹が立っていたことはたしかです。ただ、僕は幼少時に「虹の上をすべる魔女をみた」というにわかには信じがたい記憶がはっきりとあるくらいなので(本当にそういう記憶がある)、そもそも体験が脳内で捏造されている可能性もあります。まあ、何でもよろしい。

あの日、僕はある町におりました。家から原付で30分ほどの距離です。大した用ではありません。小一時間で済ませて帰路についたのはたしか宵の口、日が暮れて間もないような時間だったとおもいます。寒かったのか暑かったのか、季節の記憶も曖昧ですが、とにかくそそくさと原付にまたがり、寄り道もせず、来たときと同じように30分かけてまっすぐ家に帰りました。マンションの駐輪場に原付を停めて、ヘルメットを脱ごうとしたそのときです。

ない。

ざわっと全身が総毛立ったのをよくおぼえています。状況が状況だけに、本当に頭を両手で抱えていたはずです。そしてふと原付のシート脇にあるヘルメットホルダーに目をやると、そこにはヘルメットがさも当たり前みたいな顔をしてぶら下がっています。「ずっとここにいたけど、よかったの?」というかんじです。ポンと飛び出したふたつの目玉が地面に落ちて排水溝に転がっていきます。お前まじでわかってたんなら言えよ!何で言わないんだ!ともの言わぬヘルメットを詰らずにはいられません。何となれば他に責める相手がいないからです。

先にも書きましたが、行きも帰りも30分の距離です。30分もこの尋常ならざる状態をキープしつづけていたなんて、そんなバカな話があるだろうか?何が信じられないといって、ちょっと思い返しただけでもその日の帰路にはすくなくとも3つの交番があるのです。そのうち1つは人の多い大きな駅前、もうひとつは街道と街道が交わる大きな交差点にあります。よほどのバカでないかぎりそんなところを頭髪むき出しで走り抜けたりしないはずですが、この日の僕はよほどのバカだったと認めなくてはなりません。だいたい、それを差し引いても30分は長すぎる。

念のためにお断りしておくと、ここまでみごとに人として欠くべからざる大きな義務をすっぽかしたのは、後にも先にもこのときだけです。だからなおのことなぜこのときだけこんなことになってしまったのか、いくら考えてもさっぱりわからない。恥ずかしいのと恐ろしいのとで、穴があったら頭から飛びこんだあとにコンクリを流しこんで何か社会のためになる建物の基礎にしてもらいたいくらいです。おもしろおかしい失敗談ならともかく、ぜんぜんおもしろくない上に危なすぎてシャレにもなりません。

誰にも言えず、といって忘れることもできず、すっかり打ちのめされました。体はともかく心は完全に暗くてじめじめした独房の中にあったと言っていいでしょう。ぶじ釈放されたのか、それともまだ服役中なのか、おそるおそる省みてもまだ判然としませんが、教訓というにはあまりにも大きいこれが僕にとっての事件です。生きているうちにタイムマシンが実用化されたら、この日の僕にドロップキックをお見舞いしにいこうとおもいます。


A: フィクションだとおもって忘れてください。


フィクションにしては虚しい気がしますけど。


質問はいまも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その207につづく!


2015年3月10日火曜日

世界史を変えた50の食物について考える



【TRINCH】にiPhoneケースその他が追加されました。画像はP.P.ピンカートン著「象を一撃で倒す文章の書き方」です。槍がペン先になってる芸の細かさにご注目いただきたい。


客観的な視点に立った個人的なランキングやコンパイルは何であれ楽しく、またじつにスリリングです。ある年の十大ニュースとか、音楽史にのこる名盤百選とか、推理小説なんかはオールタイムベストみたいな企画がよくあるし、あとはまあ、よりよい夫婦の営みに欠かせない5つのアイテムとか、べつにそんなのがあるわけじゃないけど、たとえばそういうことですね。

客観的であろうとすればするほど、そしてその選択肢が多ければ多いほど、つまり異論をさしはさむ余地が大きければ大きいほど、トピックとしての沸点は下がります。「なんであれが入ってないの」「わかるけど惜しい」「わたしならこうする」とあちこちの俎上でおいしい酒の肴になるからです。元より選ぶ側もそれを望むところだったりするから、こうした企画にはコミュニケーションとしての要素が多分に含まれているのかもしれません。

そんな数あるコンパイルのうち、ここ最近ではもっとも胸を射抜かれた、巷の俎上には挙がりにくいかもしれないけどとにかくイチ押しの一冊がこれです。(前回のエントリがわりと好評だったので調子にのっています)

ビル・プライス著
井上廣美訳

まずは穀類でしょ、あとスパイスでしょ、それから南米原産なのになぜかイタリアのほうが有名なトマトとかもたぶんそうだよね……とぼんやり考えるだけでもかなりたのしくなってきます。しかしその程度のことでわざわざ取り上げようとはおもいません。僕の胸をまっすぐに射抜いたのはここに挙げられた50点のうちの1つ目、「世界史を変えた最初の食物」です。



そこからかよ! Σ(゚Д゚)

大胆すぎるこのチョイスひとつに、包括的な視点を持ちつつも攻めの姿勢を忘れない、たいへん粋な一冊であることがはやくも窺えて心ふるえます。すくなくとも万人に受け入れられやすい無難なコンパイルでないことだけははっきりしていると言っていいでしょう。「1ページめくって即レジ」の典型的なパターンです。実際、読んでみてトマトが入ってないことに唖然とさせられました。何でよ!そしてその代わりと言っては何ですが、スターバックスが入っています。企業であるはずのスターバックスを「食物」としてざっくり括るとはまったく、油断も隙もありません。破天荒にもほどがある。

しかしそれゆえにこそ、全体に期待を裏切らない見事なコンパイルに仕上がっている、と断言してしまってよいでしょう。じつはこれ「世界史を変えた50の○○」としてシリーズ化されてるんだけど、ぱらぱらとめくったかぎりではこの一冊が群を抜いて独創的だったとおもいます。図説(カラー)なのもいいし、それぞれ独立した項目だから好きなところから読めるし、コラムとしての豆知識もふんだんでいたれりつくせりです。豆で思い出したからついでに言うと翻訳本なのに枝豆とか納豆まで出てきて、西洋視点の書きぶりにもニヤリとさせられます。

あと、そうそう、他に目を引くものとしては「スパルタの黒いスープ」なる謎の料理がチョイスされていて、これなんか歴史を変えたどころかそもそも歴史に関与したことになるのかさえ若干あやしいところがいいですね。すごく。こういう虚実の境目にあるような話大好き。

2015年3月7日土曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その205


【TRINCH】、新たに6点が追加されました。このところとんとご無沙汰していた、ワニの小娘が数年ぶりに登場です。


先日は「詩人のくせに書物の話もしないで、ぶつぶつ」と姑のような口調でおもむろに切り出し、いかにもだいじな話のようでその実別にそうでもない話をさんざん好き放題わめき散らしたあげく、本題をどこかにうっちゃったままそそくさとお暇したわけですけれども、それというのも(ここでの「それ」は「お暇した」ではなく「話を切り出した」にかかっています)こんな質問があったからです。


見ざる聞かざるネブカドネザルさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q: オススメの本、ありますか?


知らぬ人を探すほうが難しいくらいに国民的な知名度を誇るクラシック中のクラシックでありながら、あれ?そういえば読んだことない、という人のほうがおそらく多い、不朽にしてある意味不遇な名作がこれです。

アルプスの山の娘(ハイヂ)
ヨハンナ・スピリ著
野上弥生子訳

言わずと知れたハイジです。岩波文庫から出ていて、訳が野上弥生子(!)、そして旧仮名遣い(!)という古色蒼然のスペックからしてその揺るぎないマスターピースぶりは推して知るべしと申せましょう。原作があって今もふつうに手に入ることにハッとされる方も多いのではありますまいか。(あれ?ひょっとして絶版になってる?)

僕がこれを引っぱり出してきたのは、日本を代表するアニメの原作だからではもちろんありません。むしろ逆です。これを読むとなぜアニメになったのかがイヤというほどよくわかります。ハイジがアルムおじいさんのところに連れてこられ、山で暮らし、ヤギと遊び、ペーターに引っかき回され、とおもったら都会のお金持ちの屋敷に引き取られ、クララと出会い、家政婦ロッテンマイヤーさんに煙たがれながらホームシックに泣き濡れたのち、ようやく山へと帰ることができて一安心、やがて病弱のクララもハイジに会いに山へ、おじいさんの提案でしばらくの間クララの面倒をみることになり、その結果みなが知る例の奇跡が起きて大団円……

というだけの話であって、知っていると言えばだいたい知っているはずなのに、読み始めたら止まらないのだからまったく、いったいどういうことなんだともはや腹が立つレベルの名作です。気づけばすっかりハイジに心奪われて、古めかしい旧仮名遣いも途中からまったく気にならなくなります。

読み返してみて改めておもうのは、物語に善人しか出てこない点です。クララのお父さんにしてもお祖母さんにしても医者にしても使用人にしても、とにかくイイ人しか出てこない。唯一ぴりっとしたスパイスの役割を果たすロッテンマイヤーさんでさえ、常識からちょいちょいはずれるハイジの対処にただ戸惑っているだけであって、やはりわるい人ではありません。物語全体を通してわるさと言えばペーターがクララの寝椅子を崖の下に蹴り落とすことくらいですが、それでさえ善良な人々の前ではたいした波紋を呼びません。ペーターがひとりでガクガクブルブルしているだけです。

おじいさんのところにいきなり押しかけてハイジを置いていったくせに今度は都会の屋敷に預けると行ってまた勝手に連れていくハイジの叔母も、こうなると「やむにやまれず+良かれとおもって=まあ、しかたがないよな」というわりとシンプルな図式にスポッとおさまってしまいます。へんな言い方だけど、読んでいるうちに物語を包みこむ圧倒的な善良思考が知らずこちらにも波及してくるのです。良質な児童文学とはかくも峻烈な光を放つのかと呆気にとられずにはいられません。

ていうかねー、なんかねー、もうちょいちょい、ハイジがかわいいんだよね!ペーターの家から帰るときにおじいさんがハイジを麻袋に入れて荷物みたいに抱えていくんだけど、袋のなかからその日あったことをもごもご喋ろうとして、でもおじいさんに聞こえなくてとか、キュン死にするから!

(*´∀`*)

あーかわいい、あーかわいい、と悶えているうちに読み終わります。読み終えたあともしばらくハイジロス症候群に悩まされるくらいです。僕はこれをだいぶいい年になってから読んだけど、子どものときに読んでおきたかったとつくづくおもうし、そこらの児童文学とは控えめにみても格が違います。児童文学という枠を取っ払ったとしても、疑いなく金字塔のひとつです。野上弥生子の実直で外連味のない訳文がまたいいんだ……。


A: 野上弥生子訳「アルプスの山の娘(ハイヂ)」




質問はいまも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その206につづく!


2015年3月4日水曜日

大輪の徒花、もしくはヘビの靴とその職人の話

天下の明治神宮プライス

(差額の50円は神様の懐に入るのか?)


考えてみれば僕はCDをリリースしているのにろくすっぽ音楽の話をせず、詩人を名乗っているのにろくすっぽ書物の話もせず、書き散らすことといったらジゴロとヒモのちがいとかきゃりーぱみゅぱみゅの発音についてとか人生において何の足しにもならないような話ばかりです。

足しにならないというのは言いすぎかもしれません。書いていて僕も僕に異議を唱えたくなりました。むろん、足そうとおもえば何だって足しにはなります。量だけならよそに負けないくらいいつもどっさりという自負もあります。ただそれが一から十まで蛇足というか、でなければせいぜい蛇の足に履かせる靴を編むような話でしかないというだけです。

蛇の靴ならそれだけでちょっとした店をかまえられるくらい、山と積み上げてきています。草鞋からハイヒールまで何でもござれです。難があるとすれば当の蛇がそもそも客になり得ないとおもわれる点ですが、その程度のことをいちいち気にしていたら蛇の靴屋なんてやってられません。やるとなったらひたすら蛇の靴を編みつづけるほかないのです。脇目も振らずに邁進していればいずれは名だたる蛇の靴職人として世界に羽ばたく日も訪れましょう。

さっきまで暗澹としていた胸中がじわじわと温かな光で満たされていくのがわかります。そうだ、これでいいんだ。蛇の御々足にぴったりのキュートな靴の数々がここ以外の一体どこでお目にかかれましょう?巷にあふれるのはとかく人と共有しやすくてためになる耳寄りな情報ばかりです。そりゃどうしたってそっちのほうがいいに決まっているし、僕だってそっちがいいし、僕としてもなぜ僕が耳寄りではなく足寄りなのか首をひねるばかりですが、だからといって世界にたったひとつしかない、ひいては共有しづらい、というかそれ以前に履く足がない、そういう靴をこしらえてはいけない法がどこにあるというのか?否、どこにもありません。情報の大海原にぽつねんと浮かぶちいさな島で蛇の靴屋をつつましく営む僕としては、蛇の靴こそ投げられたサイコロを蹴飛ばすのにうってつけの履物である、とやはり申し上げておかねばなりますまい。

という話をしたかったわけではもちろん全然ないのですが、いい具合にまたひとつ蛇の靴が増えたようなので、今日のところはこれにてお開きといたしましょう。何をしに出てきたんだこいつはとか率直な印象を口にしてはいけません。季節を問わず咲き誇る徒花のなんと可憐なことか!

2015年3月1日日曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その204


いろいろとわりきれないお店であり、僕のあたらしい遊び場でもある【TRINCH】に、ごそっと6点が追加されました。アルバム「詩人の刻印」や「オーディオビジュアル」からもモチーフを引っぱり出しています。

今回の白眉はこれ!


と確信していたし、ミス・スパンコールも「まったくそうだ」とつよく頷いていたのですが、ふたを開けてみたらどうもそうでもないようです。解せない。

そしてとうとう、Tシャツがお目見えしています。一応メインで設定した色に合わせてデザインしていますが、画面上でもお好きな色に切り替えることができるので(すごいなあ)ぽちぽち替えてみてください。なぜかひとりで何百回でも押せてしまい、増えるたびに僕が「わー」となるズッキュン(ハートマーク)もお忘れなく!


三歩進んでニーソなガールさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q: ジゴロとヒモの違いって何ですか?


長くゆるやかな進化の歴史において、ヒトがサルと袂を分かち、別々の道を歩みはじめたのちの生活様式には大きく分けて2つのタイプがあります。

ひとつは狩猟採集によって食料を確保する移動型です。狩っては食い、食っては狩りをくりかえし、つねに獲物を求めてひとつところにとどまることがありません。暮らしが周囲の生態系と密接にリンクしているため、獲物の分布状況だけでなく季節もまた移動の大きな理由になります。ありていに言うと夏だから海へ行こうとかそういうことですね。農耕がはじまるまでの数百万年間は暮らしと言えばすべからくこのタイプであり、食いたいときに食うという点からしても他の多くの獣たちと何ら変わらない、生きる上で最も基本的なありかたと見てよいでしょう。これがジゴロです。

もうひとつは農耕を主とする定住型です。ほんの1万年ほど前にはじまったばかりの新しい生活様式ですが、狩りとちがってすぐに成果が見込めない代わりに、長い目で見て食料の安定供給が可能になりました。逆に言うとその土地に腰を落ち着けていることが絶対条件なので、あまり大きな移動はできません。ポテトチップをぱりぱりやりながらソファに寝転がってテレビのチャンネルを替えまくる、いわゆるカウチポテトが広まり始めたのもこのころからです。比較的新しく開墾された土地に住む民族を、特にヒモと呼びます。

ジゴロと比べてヒモの歴史がはるかに浅く新しいのはたしかですが、洗練の度合いも同じように先んじているかというと、必ずしもそうではありません。むしろライフスタイルとしてはジゴロのほうが圧倒的にエレガントです。何しろジゴロは根本からしてきわめてアクティブであり、徹底したインドア派であるヒモとちがってしゅっと引き締まった肉体を持っている可能性が高いばかりか、社交性に長け、つねに危険(性的な意味で)と隣り合わせということもあって高い危機察知能力を身につけています。時としてそれが深い知性にも映って魅力を増してしまうあたり、まったくもって抜け目がないと言えましょう。引っかかるならヒモよりジゴロのほうがまだマシとされる、これがまさしく由縁です。個人的には僕もジゴロの手のひらで転がされるほうを選びます。どのみちノーフューチャーなら、騙されてもいいとおもえるほうでなくてはやりきれません。


A: ジゴロが狩猟民族で、ヒモが農耕民族です。




質問はいまも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その205につづく!