2015年3月10日火曜日

世界史を変えた50の食物について考える



【TRINCH】にiPhoneケースその他が追加されました。画像はP.P.ピンカートン著「象を一撃で倒す文章の書き方」です。槍がペン先になってる芸の細かさにご注目いただきたい。


客観的な視点に立った個人的なランキングやコンパイルは何であれ楽しく、またじつにスリリングです。ある年の十大ニュースとか、音楽史にのこる名盤百選とか、推理小説なんかはオールタイムベストみたいな企画がよくあるし、あとはまあ、よりよい夫婦の営みに欠かせない5つのアイテムとか、べつにそんなのがあるわけじゃないけど、たとえばそういうことですね。

客観的であろうとすればするほど、そしてその選択肢が多ければ多いほど、つまり異論をさしはさむ余地が大きければ大きいほど、トピックとしての沸点は下がります。「なんであれが入ってないの」「わかるけど惜しい」「わたしならこうする」とあちこちの俎上でおいしい酒の肴になるからです。元より選ぶ側もそれを望むところだったりするから、こうした企画にはコミュニケーションとしての要素が多分に含まれているのかもしれません。

そんな数あるコンパイルのうち、ここ最近ではもっとも胸を射抜かれた、巷の俎上には挙がりにくいかもしれないけどとにかくイチ押しの一冊がこれです。(前回のエントリがわりと好評だったので調子にのっています)

ビル・プライス著
井上廣美訳

まずは穀類でしょ、あとスパイスでしょ、それから南米原産なのになぜかイタリアのほうが有名なトマトとかもたぶんそうだよね……とぼんやり考えるだけでもかなりたのしくなってきます。しかしその程度のことでわざわざ取り上げようとはおもいません。僕の胸をまっすぐに射抜いたのはここに挙げられた50点のうちの1つ目、「世界史を変えた最初の食物」です。



そこからかよ! Σ(゚Д゚)

大胆すぎるこのチョイスひとつに、包括的な視点を持ちつつも攻めの姿勢を忘れない、たいへん粋な一冊であることがはやくも窺えて心ふるえます。すくなくとも万人に受け入れられやすい無難なコンパイルでないことだけははっきりしていると言っていいでしょう。「1ページめくって即レジ」の典型的なパターンです。実際、読んでみてトマトが入ってないことに唖然とさせられました。何でよ!そしてその代わりと言っては何ですが、スターバックスが入っています。企業であるはずのスターバックスを「食物」としてざっくり括るとはまったく、油断も隙もありません。破天荒にもほどがある。

しかしそれゆえにこそ、全体に期待を裏切らない見事なコンパイルに仕上がっている、と断言してしまってよいでしょう。じつはこれ「世界史を変えた50の○○」としてシリーズ化されてるんだけど、ぱらぱらとめくったかぎりではこの一冊が群を抜いて独創的だったとおもいます。図説(カラー)なのもいいし、それぞれ独立した項目だから好きなところから読めるし、コラムとしての豆知識もふんだんでいたれりつくせりです。豆で思い出したからついでに言うと翻訳本なのに枝豆とか納豆まで出てきて、西洋視点の書きぶりにもニヤリとさせられます。

あと、そうそう、他に目を引くものとしては「スパルタの黒いスープ」なる謎の料理がチョイスされていて、これなんか歴史を変えたどころかそもそも歴史に関与したことになるのかさえ若干あやしいところがいいですね。すごく。こういう虚実の境目にあるような話大好き。

2 件のコメント:

  1. たいそう忙しくて、しばらく大吾さんのブログをほったらかしにしていたら、TRINCHの商品がいっぱい増えてて、はなぢが出そうになりました。
    お給料がはいったらしこたま買い漁ります!

    はぁー、興奮する。

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  2. > s8さん

    いつもありがとう!
    まだまだ増えていくはずなので
    焦らず眺めてお楽しみあそばせ。

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