2013年3月22日金曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その136、もしくは世界でいちばん安全な国のこと



乗らない人にはぴんとこないとおもうけれど、町にある有料のバイク駐輪場には、1台分のスペースごとにチェーンロックが設置されているのです。このチェーンを車輪とかバイクの適当なパーツにくぐらせてロックすると、その時点から課金される仕組みになっています。課金と言っても原付なら4時間で100円程度なので、たいへんリーズナブルです。そのへんに駐車して良識ある人に咎められたり違反切符を切られたりするリスクを負うくらいなら、目的地から多少遠くても安心して停めていられるほうをえらびたい。問題はそういう使い勝手のいい駐輪場がそもそも地球上にはほとんど存在しないことなんだけど、べつにそのことを指摘したいわけじゃないのでひとまず脇に置いておきましょう。

とある町のバイク駐輪場に原付を停めたときの話です。というか、そこに停めておいた原付に乗って今まさに帰ろうとする段になっての話です。

3、4時間の野暮用を終えて駐輪場に戻ってみると、チェーンをロックする土台部分に赤いランプが点いています。ランプの点灯は空車のしるしです。あれ?とおもってよくみたらチェーンがロックされていない。どころかそもそもチェーンを原付に括った形跡すらなくて要するに

課金されていないのです。

わーしまった、ズルしようとおもったわけじゃないのに、うっかりしてた、今からロックしたところで2時間は無料だからあんまり意味ないし、申し訳ないけどこのまま帰るほかないな、わるいことしちゃった、と頭をかきながらカギを取り出そうとしたら今度は

ポケットにカギがない。

カギがなければ原付だって黙りこむのが当たり前です。ちゃんとロックしなかったバチが当たったのかもしれないし、この失態については心から反省するほかないけど、それにしてもカギがないのは困ります。駐輪代を払ってカギが戻るならまだしも、じぶんが失くしたものを返せとわめいたところで相手がいないのだから話になりません。わーしまった、いつもならちゃんとジーンズの後ろポケットに入れておくのに、今日にかぎってどこにやっちゃったんだろう、困ったぞ、とおろおろしながらふと原付に目をやったら

カギが鍵穴にささったままなのです。

呆気にとられてハンドルをさわったら、ハンドルロックもしていない。つまりバイクのエンジンを切ったのち、あろうことかカギを抜かず、ハンドルロックもせず、あまつさえチェーンロックもしないまま、ほとんど乗り捨てたも同然の状態でその場をすたすた立ち去っていたのです。卵から出てきたばかりのヒヨコじゃあるまいし、お前の頭はいったいどうなってるんだと自分を厳しく問いつめたい。頭蓋骨に包まれてるのが脳味噌じゃないなら何だ?八丁味噌か?何ひとつ束縛されずにただぽつんとそこに置いてあるだけの原付を見ろ!ご自由にお持ちくださいと言わんばかりじゃないか!


望んでもいない実験に知らず知らず臨んで得た今日の結論:世界中のどこを探したって日本ほど安全な国は他にありません。




そして誰もいななかなくなったさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)孤島から出られなくなった馬が1頭ずつ姿を消していく推理小説の金字塔ですね。


Q.どんな海岸線が好きですか?


計量カップみたいに目盛りに合わせて満たされているわけではない海と陸の境界線が実際のところどこにあるのか、たとえば砂浜に立つ観測者は打ち寄せる白波がどこに来たとき線を引けばよいのか、あるいは断崖絶壁のどこを、そして誰がそれを海岸線として確定するのか、ひょっとしてそのへんは人類を月に送り出すほど科学が発達した今になっても気分次第でアバウトに引かれてたりするんじゃないだろうか、だとしたら僕だって海岸線上に並んだ無数の点のうちのひとつくらいは適当に決める権利があってもいいのではないか?そうだ、その権利はあるはずだ!どこの馬の骨だか知らないが独り占めしてないで僕にも海岸線上の一点をよこせ!

というごくごくパーソナルな煩悶を別にすれば、すぐ頭に浮かぶのはフィヨルドです。おもえば人生にもどこかそういう海岸線を求めているようなところがあります。刺激的、というよりはむしろ文字通り取りつく島がないという意味で。

それで言うと、複雑に入り組んでてどこに流れ着くのか判然としないリアス式海岸なんかもいいですね。


A: フィヨルドです。


なんとなくゼリーみたいにぷるんとした語感も好きです。




質問はいまも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その137につづく!


2 件のコメント:

  1. 初めてコメントさせていただきます。
    こんばんわ。

    フィヨルドって今の今までヨーグルトのことだと思っていました。

    次のアルバムを首を長くして待っております。

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  2. > 合田一人さん

    こんばんは。
    たしかにフィヨルドという語感は
    なんとなくおなかによさそうな、
    乳酸菌ぽいところもありますね。

    どうもありがとう!

    そして最後のひとこと、ここでは禁句のひとつです。

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