2012年12月30日日曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その111 晦日版




ゴルゴンの超絶美白化粧水「蛇女房」プレゼントキャンペーン展開中です。しめきりの目安は明日、31日の大晦日まで!増刷したので確率上がってます。

温かいコメントをいっぱいもらってじーんと胸ふるわせる年の瀬です。どうもありがとう!

そしてピス田助手の手記がそんなに好評だったとはおもわなんだ。






110回を数えた9月を最後に更新が止まっていたパンドラ的質問箱ですが、あとちょっとだと多寡を括っていた質問がおもいのほか大量に残っていたので(すごい汗でた)、年末でもあるし、ちょうどこうゾロ目で縁起もいいし、大盤振る舞いの超拡大版でお答えします。




クエンさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q: 大吾さんが質問されて困ることってなんですか?(その質問に対する答えは必要ないです)


ゆるゆると長くお付き合いいただいている方々はすでにうすうす感づかれてもおりましょうが、これはもう、考えるまでもなく、ライブやアルバムについての質問です。質問を募集するとだいたい5つに1つはどちらかが入っています。とくに最近ここに辿り着いてくれたはじめましての方に多いですね。至極もっともなことすぎて返す言葉もありません。「もう活動はされていないのですか」と聞かれることもありますが、「これでフル稼働です」とはさすがに言いづらくていつも難儀しています。


A: 察してください。




イノシンさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q: 犬派ですか?猫派ですか?アルパカ派ですか?私は猫派です。


じつはこの質問、以前にもお答えしたことがあります。あるのですが、そのときの選択肢にアルパカは入っていませんでした。入ったからといって、うわー困ったなこれじゃ選べないよ、というようなことにはもちろん全然ならないんだけど、せっかくだからアルパカにしておきましょうか。アルパカ、可愛いですよね。ちなみに僕がこの動物を知ったのは筒井康隆の「残像に口紅を」を読んだ中学生のときです。いまだに覚えてるくらいだから、よほどのインパクトだったんだとおもう。


A: アルパカ派です。




オレインさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q: ビールに合うさいこうのつまみは何だと思いますか?僕は絶対に茄子の一本漬けだと思います。


僕はそもそも茄子が大好きなので一本漬けに1票入れたい気もするのですが、それじゃアレだから、うーん、なんだろう。おいしいソーセージを食べるとビールが飲みたくなります。すごく。ヴァイスヴルストという白いソーセージが好きです。そんな耳慣れない舶来ものを食べる機会ってあんまりないとおもうけど、その昔住んでいたアパートの近くに、ドイツでマイスターを取得した(!)職人の小さなお店があったんですよね。日々の食卓にのせるにはちょっとハードルが高いから、バイトの給料が出たときとか年末に2、3種類買ってみる、とかそういうことをしてました。しかしまあ、それはまたぜんぜん別の話ですわね。

この質問、いろんな人に訊いてみたいです。


A: 皮をむいて食べる白いソーセージ




グルタミンさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q: 今年を漢字一文字であらわすなら。


僕はいまだに世間一般とはうまくやれていないようなところがあるので、「辰」でいいや、という投げやりな気持ちがなくもありません。このぶんだと来年は「巳」でお茶をにごすことになるとおもいます。

あるいは「虚」あたりならわりとアリな気もするんだけど、どうでしょうね?僕個人の話でいえば、じぶんでも空恐ろしくなるほど大風呂敷を広げて乗り切る危うい日々だったので、「虚栄」の「虚」です。


A: 「虚」

正直に告白すると、この質問における「今年」とは2011年のことです。




ヒアルロンさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q: 以前お行儀良く並んでいた6粒の豆たちはいかがお過ごしでしょうか?ちんぷりかえってはいませんか?どーでもいいですが、珈琲豆はグァテマラがたまりません。

そうですね、彼らの辿っていった道のりを想像するに、今ごろは海に出て地球との一体感を噛みしめているのではないかとおもいます。やがては雨となってインドネシアにふりそそぎ、すくすくと育つコーヒーの木を支え、運がよければジャコウネコのお尻からぷりっと吐き出されるコピ・ルアクとして新たに収穫されることでしょう。案外、谷中あたりで売られるかもしれません。

ちなみに僕はコーヒーを焙煎し始めた20年前からずっとマンデリン一筋です。20年もたつとおいしいかどうかよりも「ずっとそうしてきたから」という慣習的な意味合いがつよくなり、もはや味は二の次になってきます。今さら乗り換えたところで舌がぎょっとするだけなのです。たまに別の豆をためしたあとでマンデリンに戻ってくると、旅行から帰ってきたときの部屋みたいな落ち着きがあってホッとします。


A: グァテマラもおいしいですよね。




アスパラギンさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q: 最近よく思うんですけど誰も見ていない鏡は一体何を写してるんでしょうか。ちなみに俺は物が見えるのは光の反射を受け取る網膜があってこそだと思うので 誰もみてないとなんにも写ってなくて、鏡はのんびりしてんじゃないかと思ってます。


その真偽をたしかめようがないという意味では宇宙のはしっこと同じくらいむずかしく、深遠で、かつどうでもいい問題です。網膜の仕組みをもちだすくらいなら「壁じゃね?」と即物的な解答であっさり退けて牛丼でも食べに出かけてしまいそうなものですが、そこにはおそらく自然科学を学んでも拭いきれない一片のやわらかな信仰みたいなものがあるのでしょう。リチャード・ドーキンスみたいに世界を論理で一刀両断にばっさりやってしまうよりは、はるかに角の取れた心のありようだと個人的にはおもいます。とりあえず吉野家でも行きませんか。

待てよ、と僕がおもうのは、僕らが見ているあいだ鏡は本当にキリッとしているのか、という点です。そもそも僕らは鏡が気を抜いてのんべんだらりとしている状態を知りません。正面から向き合っているときの鏡がだらしなく寝そべっている状態ではない、と誰に言うことができましょう。僕らにはそう見えないだけで、鏡からしたらごろりと横になって頬杖をつきながらぽりぽりお尻をかいている真っ最中かもしれないのです。ことによると鼻をほじったり屁をひるような暴挙に出ていないともかぎりません。とにかく前に立つ僕らの姿を写しておけばよいのだから、裏で何をしているかなんてわかったものではない。ふわっとしてどことなくメルヘンチックだったはずの話がいつの間にか目を覆いたくなるような現実とクロスオーバーしてきて業腹です。鏡の野郎……!

とふくらむ空想に地団駄を踏んでも詮無いことです。ね?だから牛丼食いにいこうぜ。


A: 松屋でもいいです。





アスコルビンさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q: 大晦日は何しますか?or何食べますか?


本当は夜まで何もせずにただ空を眺めていたりしたいのですが、元旦に料理を持ってこいと実家から厳命されているため、たぶん朝から台所にはりついて、揚げたり煮たり蒸したりしているはずです。5年くらい前まではもうすこしのんびりしていたような気がするのに、ちかごろは意に反してあわただしいから困ります。せめて甘栗は食べたいです。


A: 台所に釘付けの予定です。




グリチルリチンさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q: 1)「手漕ぎボート」で唄っているのは誰ですか?歌詞も知りたいです。 2)アンジェリカはスナークを捕まえてどうするつもりなんですか? 3)ぴかぴかに研いだ死神の鎌をかついだアンジェリカのお供をしていた奇特な方は誰ですか?大吾さんですか? 4)大吾さんの作品は、詩と音楽とジャケットイラストなどが同時に作られているんでしょうか? 5)ライブの予定はありますか?ぜひ生で聴きたいです。


A: 1) 歌っているのは50年ちかく前のすばらしいシンガーです。"Don't be afraid, do as I say, baby."と歌っています。 2) 何か頭にくることがあったようなので、ひどい折檻をくわえるんじゃないかとおもいます。 3) 僕ですね。 4) これは別々です。回路が異なるのか、同時に進行することはたぶんできません。もうちょっと厳密に言うと、完全に切り離されているわけではなくて、脳内に色のちがう椅子がいくつかあって、そのときどきで少しずつ配置が変わる、というイメージです。陣形、と言い換えてもいいとおもいます。同時に複数の陣形をとることはできないのです。 5) 予定はありませんが、まったくやらないというわけではないので、いずれお会いできたらうれしいです、僕も。どうもありがとう!




デオキシリボ核さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q: 2011年で5番目に衝撃だったニュースは何ですか?


これにお答えするにはまず2011年にあったできごとをどうにかして思い出さないといけないわけですが、1番や2番なら格別、5番目となるとそうですね…ちいさいころときどき境内で遊んでいた神楽坂の赤城神社の目をうたがうような変貌ぶりでしょうか。

古色蒼然たる往年のたたずまいは今や影もありません。隈研吾(!)の手によって、本殿がガラス張りで境内には草木が一本も生えていない、シンプルに洗練された清潔感ある超モダンなつくりに一新されています。「歴史のことなんてキレイさっぱり忘れようぜ!」という熱く前向きな意気込みがひしひしと伝わってきて、おごそかなきもちも豪快に洗い流されました。狛犬よりヨークシャーテリア、二拝二拍手一拝よりハンドクラップ、雅楽よりクラブミュージックがよく似合う神社です。


A: 赤城神社@神楽坂の改築




ドコサヘキサエンさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q: 好きな色があれば教えてください。


A: これも以前にお答えしたことがあります。菜の花色(やや緑みのある黄色)も好きです。




エイコサペンタエンさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q: もしも羆に生まれ変わるとしたらどんなマタギに撃たれてみたいですか?


鉄砲に撃たれること前提の転生ならむしろ誰か他の人に快くお譲りしたいところですが、そうも言っていられないとなるとやはりマタギを厳選しなくてはならないでしょうね。

クマたる僕がマタギに望む条件を、いくつか挙げるとしたら以下のとおりです。

1. 射撃スキルがゴルゴ13並み
2. 趣味はモンハン
3. クマ語がしゃべれる
4. 前世がクマ
5. じつは女子高生

1はやっぱり、一発で息の根を止めてほしいからです。撃たれたことに気づかないくらいの腕前が望ましい。むかし知人が注射の苦手な看護士に当たって腕を穴だらけにされていたのですが、そういう事態は痛いし怖いしかなしいのでなるべく避けたい。

2には、獲物を見つけて昂る気持ちはそちらで解消していただきたいという願いが込められています。うっかり仕留め損ねても「まあいいや、今日はもう帰ってモンハンでもやろ」ときもちを切り替えてもらえたらうれしい。

3は、ひょっとしたら交渉の余地があるかもしれないというむなしい願望のあらわれです。

4も重要です。マタギに撃たれて亡くなったクマならなお良いでしょう。これから撃たれるクマのきもちは、かつて撃たれたことのあるクマにしかわかりません。そんな前世をもつマタギになら、よろこんでこの身を捧げようという気にもなろうというものです。うまいこといけば「おれには撃てねえ」的なハッピーエンドも期待できます。

5は単純に「え、女子高生?まじかよ」みたいな驚きに目をみはって息絶えるのもわるくないな、という話です。わるくないですよね?


A: 前世がクマの女子高生







まだまだ残ってるとかそういうちいさなことにこだわらず、質問はいまも24時間365日年中無休でバリバリと受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)



 その112につづく!




例によって今年もとくに何をしたでもないのですが、そのせいもあってかどうか、音楽を求めてではなくデザインや古書、土木(!)といった別のカテゴリからここに辿り着き、そのまま今もお付き合いくださる方がちらほらといてうれしくおもいました。それもこれもかりんとうとか正直いらないスペイン土産とかどうにもならないような話をこりずに延々とつづけてきたおかげです。ちがうか。ちがう気もするな。でもそういう遠く隔たった点と点をむすんでいくような広がりほど僕にとって冥利に尽きることはないし、音楽にかぎらずゆるやかな世界観を全体としてたのしんでもらえているのだとすれば、それはやっぱり感無量であると言わないわけにはいきますまい。どうもありがとう!晦日はいかがおすごしですか!

(手を振っています)

去年の今ごろも書きましたが、これだけのろい足取りだと、やめる区切りもありません。閑古鳥をやたらいっぱい飼うことになってもあんまり気にしないで細々とつづけているだろうし、すくなくとも僕自身はそうしていきたいと望んでいます。もともとちっぽけな無人島で始めたようなことを、大陸規模にするつもりは毛頭ありません。それは誰か別の人の役目です。この島は大海原をひとり漂流して自然と辿り着いた人のためにこそありたい。

ときどきはメリハリもありつつ、でも基本的にはずっとこんな感じです。島はここにあります。もちろん、来年も。

今年も本当にありがとう!みなさま、よいお年を!



長い!


2012年12月26日水曜日

ムール貝博士が扉を爆破しなかった希有な日のこと



何ひとつ思い入れがないこともあって、ひとり部屋でこつこつと仕事をしていたクリスマスの日に、その人物はあろうことか音もなくやってきたのです。


カチリ

ガチャ

「ふーさむさむ」
「あれッ」
「うわッ」
「博士!」
「たまげたな。なんてことだ」
博士が音もなく入ってきた!
「なぜ君がここにいるんだ」
「ここは僕の部屋ですよ!」
「今日はほぼ全世界的にクリスマスだぞ」
「知ってます、それくらい」
「毎年この日は慰安旅行かなんかじゃなかったのか」
「いやいや、そんなことより、あれ?」
「なんだ。あッ靴脱いでなかった」
「ちょっと!靴は脱いでくださいよ!ふつうに!」
「ど忘れしただけだ。うるさいやつだな」
「博士いま鍵あけて入ってきましたよね?」
「つとめて紳士的にな」
「たしかにそこも突っ込みたい点ではありますけど」
「いないとおもったんだよ」
「鍵は?」
「もってるよ、もちろん」
「何で?」
「何でって…つくったからに決まってるだろう」
「合鍵を?」
「合鍵をだ」
「いつの間に!」
「備えあれば憂いなしだ」
「何の憂いです、いったい?」
「鍵がかかってたときの憂いだよ」
「空き巣じゃあるまいし!」
「どこの世界に鍵をあけて入る空き巣がいるんだ」
「それはそうですけど…でも僕が知らない間に」
「君が知ってるかどうかはまたべつの話だよ」
「別どころかむしろ問題はそこだけです」
「わたしだっていつも扉を爆破するわけではない」
「たしかに壊されずに済んだのはありがたいですけど」
「鍵がなかったら爆破するしかないだろ」
「ふつうはあきらめて帰るんですよ」
「ここに鍵があるのはつまりそういうわけだ」
「あれ?」
「鍵があって良かったとよろこぶべきなんだ」
「そうかしら」
「そうとも。だいいち、家主が在宅なんだぞ」
「そうですよ。だから?」
「いったい何を心配してるんだ」
「何って…何だっけな」
「こまかいことにいちいち騒ぎすぎなんだ、君は」
「だってそりゃ…」
「あッ、ストーブが点いてないじゃないか」
「節約してるんです」
「客がいるのに節約もへったくれもあるか。とっとと点けて茶を入れろ」
「そんないっぺんに言わないでくださいよ」
「年寄りを凍死させる気か」
「それが叶うなら僕の日々もずっと安らかになるんですけどね」
「レスト・イン・ピースというやつだな」
「道連れみたいになってますけど」
「まあいい。茶はどうした!」
「わかりました。わかりましたよ」

シュンシュンシュン

コポコポコポ

ズズー

「ああ、生き返った」
ピクニック気分で地獄から帰ってきた人のせりふとは思えない」
「茶葉は安いがあたたまる」
「それ、わざわざ言う必要あります?」
「慰安旅行はどうしたんだ」
「今年は見送られたんです」
「そりゃガッカリだな」
「ガッカリです」
「留守だったらもうちょっとマシな茶を戸棚から漁ってたのに」
「そっちかよ!」
「ひとりでも行きゃいいじゃないか」
「え?」
「ひとりで行ったらいいんだ」
「ひとりで行ったってたのしくないですよ」
「ハッハッハ!」
「え、なんで笑うの」
「いつだってひとりじゃないか」
「またそうやって傷口に塩を塗る!」
砂糖を塗れば治るとでも言うのか!
「そういう話じゃないですよ」
「要は君に主体性がないって話だろ」
「そんなことないですよ。むしろ僕が主体です」
「そうかそうか」
「憐れむような目で見るのはやめてください」
「だったら計画立てて実行すればいいだけの話じゃないか」
「専務が…」
「専務?」
「今年は専務に恋人ができたんです」
「ふーん」
「興味なさそうですね」
「ないよ」
「じつは僕もそんなにないんですけど」
「それで?」
「クリスマスはその人と過ごすって」
「何で?」
「何でって…それは僕もかねてから疑問におもっていたところです」
「なぜクリスマスに恋人が出てくるんだ」
「たぶんユーミンのせいです」
「ユーミン?」
「毎年こんなことを言ってる気がするからこの話はもうやめましょう」
「なんだ、もう終わりか」
「大多数の日本人を敵に回すことになるんです」
「日本人がなんだ。わたしなんか世界中が敵だぞ」
「博士が言うと説得力あるなあ」
「遠慮なくつづきを語るといい」
「あれ?そういえば博士は何しにきたんですか?」
「む?あ、そうだ忘れていた。じつは君にクリスマスプレゼントを…

バタン

むくり

「なんだ今のは」
「びっくりしすぎて心臓が止まったんです」
「ナイーブな心臓だな」
「博士がクリスマスプレゼント!?」
「ホントはこっそり置いていくつもりだったんだ」
「話が意外すぎる方向にねじ曲がってきた」
「サンタっぽいだろ」
「誰がですか?」
「わたしがだよ」
「どのへんが?」
「全体的に」
「まあ、おじいさんではありますものね…」
「失敬なことを言うな!」
「だって他には別に…」
「まあいい。メリークリスマス」
「こんな白々しいメリークリスマス聞いたことない。…何ですかこれ」
化粧水だ
「け…」
「毛じゃない」
「化粧水!?」
「ありがたく受け取るがいい」
「よりにもよって化粧水…?」
「そう言ったろうが!」
「いくら何でも僕らには無用の長物すぎませんか」
「何を言う。男子もお肌に気を配る時代だよ」
「なんかそれっぽいことを言い出した」
「何しろ売るほどあるんだ」
「たしか去年もそんなことを言っていたような気がしますけど」
「新品だぞ」
「誇らしげに言ってるけどそれは当たり前の前提です」
「旧家の蔵から出てきたデッドストックだ」
「それは古物というんですよ!」
「でも未使用だぜ」
「だってこれ何年前のですか」
「四の五の言うな!ぜんぶ置いていくから好きに使え」
「ひとつだって多すぎますよ!」
「わたしもピス田も使わないとなったら、あとはダイゴくんしかあるまいよ」
「体のいい厄介払いだ!」
「ほうぼうで売って歩いたらいいだろう」
「行商をしろと?」
「元手がタダなんだからぼろもうけだぞ」
「だれが買うんです、こんなものを?」
「だからこっそり置いていくつもりだったのに、まったく」
「僕のせいみたいになってる」
「部屋にいるほうがわるい」
「何度だって言いますけどここは僕の部屋なんです」
「用も済んだし、そろそろ帰るよ」
「こんな大量に化粧水を置いていかれても困ります」
「わたしは困らない」
「僕が困るんです」
「それは君の問題だな」
「元凶は博士ですよ!」
「同情する」
「してほしくないです」
「じゃあ撤回する」
「同情する前に持って帰ってくださいって意味です!」
「よいお年を」
「ちょっと。ちょっと!」



いうわけで気づけば今年で5回目を数えるひとり相撲キャンペーンの時期がやってまいりました。

初手から廃れているのでこれ以上廃れようがない、あるかなきかの霞がかった活動に今もゆるやかにお付き合いくださるみなさまにいつもありがとうの気持ちをこめて、ムール貝博士が置いていったゴルゴンの超絶美白化粧水「蛇女房を例によって10名くらいの方に贈ります。モノがモノだけにアレですが、性別は問いません、もちろん。









ご希望のかたは件名にゴルゴンの化粧水」係と入れ、

1. 氏名
2. 住所
3. わりとどうでもいい質問をひとつ

上記の3点をもれなくお書き添えの上、dr.moulegmail.com(*を@に替えてね)までメールでご応募くださいませ。競争率の低さについてはあえて言及するまでもありますまい。

締め切りは例によって12月31日の大晦日が目安です。が、応募がほとんどないこともすごくありうるし、実際のとこ毎年そのへんはボンヤリしているので、うっかり年を越しても大丈夫です。(仮に抽選となった場合でも、いただいたメールには必ず返信しています)


あと、まだ答えていない質問が放置されているのにさらに募集する不義理な点については、僕も気にしないので気にしないでください。


いつもいつも、本当にどうもありがとう。



2012年12月4日火曜日

「甘酸っぱいこどもたち」と呼ぶべき時代の話



秋に色づく桜の葉が好きなのです。赤でもなく黄でもなく、そのどちらもがほどよい塩梅で混じり合って人肌みたいに温かくまろやかな色合いは目にもやさしい、と寒気が来るたびにいつもおもう。桜は咲かない秋もいい。そう感慨にひたっていたのもしかしちょっと前の話で、どちらかといえばもう年の瀬です。梢にわさわさと賑わっていた桜の葉もすでに心許ない。声ばかりが聞こえていた鵯の姿も今やすっかり丸見えです。小春日和に登った木をおりた途端に冬なのだから、これはもうちょっとした浦島効果と言わざるを得ますまい。

思い出したようにひょっこり更新したからといって格別「聞いてー!」というほどのニュースがあるわけでもありません。それはもう、例によって例のごとくです。忘れたころにやってくるという意味では災いと同じだし、かえって更新されないほうが心安らかと言うこともできましょう。うっちゃれば忘れられるというだけで、そもそも人の記憶にのこるような身空でもなし、ときどき息災のしるしをぺたりと残しておけば…


(めんどくさくなってきた)


更新されなかったひと月ふた月の間にもあれやこれやとあったような気がしないでもないけれど、過ぎたことは忘れてかりんとうの話でもしましょうか




このブログをさかのぼること4年以上前(!)、甘鯛のポワレ教授がムール貝博士を訪ねた折に、みやげとして山脇製菓の「レーズン&かりんとう」を持参したことがありました。この投稿に書かれた「今後の予定」が今もそれほど変わっていないことにはひとまず目をつぶっていただきたい。

初めて口にふくんだときのおどろきは今でもよくおぼえているけれど、この「レーズン&かりんとう」はそれまで「甘い」か「そんなに甘くない」のどちらかでしかなかった(←暴論)かりんとうのありように「甘酸っぱい」という概念をもちこんだエポックメイキンな一品でした。

ここにその秘密があるよ!)

何より感心したのは、目新しさ偏重でレーズンという舶来の食材におもねるのではなく、あくまでかりんとうという本来の立ち位置をきっちりキープしていたことです。見た目も味も誰が食べたってかりんとうなのに、かつてこんなフルーティな味わいがあったろうか?レーズンとシナモンも脇役であることをわきまえているだけでなく、主役のさらなる魅力を引き出しています。そもそも僕はかりんとうを好んでカリポリかじるほうではなかったのです(←重要)。新しきを取り入れつつも頑なほど伝統に則っている、それでいて新規のファンを獲得するほどのおいしさに仕上げてしまう…これが新世紀のかりんとうでなくてなんだというのだ!

…という、他にもそんな例があるかどうかたしかめてもいない超局所的ラブコールから数年……。スーパーではあまりみかけることのなかった「レーズン&かりんとう」も最近ではわりとあちこちで見かけるようになりました。すくなくとも池袋界隈では今やハイブリッドなかりんとうとして新たにクラシック認定されたと言ってよいでしょう。


しかし伝説はまだつづいていたのです。


「レーズン&かりんとう」が次世代のかりんとう界を担う気高きプリンスとするならば、その麗しきプリンセス候補として今秋にお目見えしたのがこれだ!




温州みかんかりんとう」…!

もはや「甘酸っぱいこどもたち」とでも呼ぶべきかりんとうの新時代到来を確信しないわけにはいきますまい。

期待を裏切らないブレンドの塩梅もさることながら、ときどきフワッと口中に満ちる蜜柑の爽やかな香りといったらないのです。数ある果実のなかから温州みかんを選ぶあたりが和に寄らず洋に媚びずでまたうまいじゃありませんか。包装のデザインも洗練の度合いがさりげなくて可愛いし、この存在を知った翌日に直営店まで行って2袋買ったさらに翌日また買いに走る始末です。すごいぞ山脇製菓!

考え方とその結実ぶりで言ったら東洋水産のマルちゃん正麺にだってひけをとらない画期的かつ庶民的でハッピーなブレイクスルーだとおもう。ホントに。

ちょっと目先を変えただけで「新しい!」と言い張る安直な向きにはこのかりんとうをベシッと袋ごと投げつけてやりたい。焼きドーナツなんて、揚げずに焼いた時点でドーナツじゃないんだよ!



そういうわけで、年明けのお年賀にはこいつを方々にばらまこうと企んでいるのです。冷えますねしかし。