2024年7月19日金曜日

アグロー案内 VOL.7解説「ある昼行灯の問題/still on the table」



各地で話題が沸騰したあげく吹きこぼれて空焚きして炎上して焼け落ちてもなお鎮火せずに延焼中!とかじゃなくてよかったじゃないか、火の気がないのが一番だよ、と夜中にひとりアンニュイな面持ちでグラスを傾けながらしんみり夢みる人生をみごとに体現した噂の アグロー案内 VOL.7、今週は2曲目「ある昼行灯の問題/still on the table」について語ります。DON’T MISS IT!!!!

♪ズッチャッズッチャッ(ジングル)

この番組は、いつも心にぷくぷく泡を、泡ぷくぷくコーポレーションの提供でお送りします。


さて、というわけで今回は神奈川県町田市にお住まいのペンネームたらちゃんから前回いただいた「グレープフルーツからフルーツを取るとなぜブドウになってしまうのですか」という質問について、ひょっとしたら何かのヒントになるかもしれないので、まずは「ある昼行灯の問題/still on the table」のお話をしてみましょう。

(間)

失礼しました。町田市は東京都です。訂正の上、つつしんでお詫び申し上げます。

お伝えし忘れていましたが、アグロー案内の片割れであるタケウチカズタケからみた VOL.7 徹底解説がすでに全曲分、まとめて公開されております。僕自身も知らなかったことがてんこ盛りなのでぜひそちらも併せてお楽しみください。


ある昼行灯の問題/still on the table」は、これはもう、完全にタケウチカズタケのビートを活かすつもりで書いた一編です。一聴するとリーディングに合わせてビートを構成したようにも思われるかもしれませんが、実際には逆で、テキストは100%、初めから組まれていた構成に沿って書いています。

たとえば「ピンポーン」というインターホンの音から始まる緩やかなパートは、テキストに合わせて音を足してもらったわけではなく、僕が元からビートにあったその音をインターホンみたいだな、と解釈してテキストをこしらえたわけですね。

なのでカズタケさんの解説にもあったように「うわっ音に合わせてきた!」と気づいてもらえたのはすごくうれしかった。聴くぶんには気にもならないと思うけど、この部分はこのプロジェクトがお互いに全力の応酬であることを明確に象徴する、ささやかなハイライトのひとつです。

また、この曲ではメッセージ性やストーリー性よりも、言葉遊びに重点が置かれています。というのも、届いたビートを聴いてまず思い浮かべたのが「永遠に繰り返されるある一日」だったからです。あれこれ考えて、さんざん悩み抜いた結果、振り出しに戻る感じ。どのみちこの先も懲りず繰り返されるわけだから、生半なパンチラインよりもむしろ言葉遊びにうってつけのテーマと言えるでしょう。

言葉の置き方としてぼんやりイメージしていたのは Common の “Come Close” ですが、できてみると全然ちがいますね。ただなんというか、テーマと同じように言葉も同じ音を繰り返して、歩くというよりはその場で足踏みをするような形にしたかったので、それはクリアできてよかった。

英題の「still on the table」は、もちろんテキストの「まだテーブルの上にある」に対応しているわけですが、on the table はそのまま検討中という意味の慣用句でもあります。裏を返せば本当にテーブルの上に置いてあるわけではないことを、このフレーズが示しているのです。英題を添えているのはこういう、視点としてのちょっとしたギミックを仕込めるからでもあります。われながら野暮な気もするけど、このブログもこの先はすべてが遺言みたいなものなので、遺言じゃ仕方ねーなと大らかに受け止めてください。

次回はVOL.7に収録された曲のうち最も難解だが書いた当人含めてべつに誰も解く気はない「フィボナッチは鳳梨を食べたか?/pineapple as a depreciable asset」についてです。


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