ラスト天ぷらさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士が適当につけています)盛り合わせの最後に残って誰も手をつけないやつですね。
Q. とても気に入ってくれてしょっちゅう家に呼んでくれるが回数が多くてめんどうくさい義実家との付き合い方。
さて、義実家です。
ありがたくも戸惑いを隠せないその悩ましさが質問の一文に端的すぎるほどよく表れています。すっぱり言い切るその姿勢にも気っぷの良さがにじみ出ていて清々しいかぎりです。うれしいけどめんどくさい。結婚生活においてはある意味もっともアンビバレントな問題のひとつかもしれません。
ただ、僕に言わせるとこれはわりとシンプルな話でもあります。なんとなれば義実家とは配偶者の実家であり、そこにちょっとでも悩ましい何かがあるならそれは同時に、配偶者の問題でもあるからです。夫婦であることによって生じたあれこれは、どちらか一方ではなく常に夫婦ふたりのあれこれであると認識しましょう。
したがってまずは配偶者が「うれしいんだけどちょっと多い」という口にしづらい悩ましい心を汲んでくれるかどうかがひとつのカギになります。「うちにはうちの日々があるんだからあんまり気軽に呼んでくれるな」とさりげなく伝えてもらえるのが理想的ですね。
しかし理想はあくまで理想にすぎません。僕が知るかぎり、こうしたケースで最も多いリアクションは「まあ大目に見ようよ、気に入ってくれてんだし」という、まったく、何の、まじでクソの役にも立たないものです。んなこたあわかってんだよ、ありがたいっつってんだろ、嬉しいしありがたいことが前提で、でもちょっとアレだっつってんだよ、都合のいい部分だけ拾ってスルーしてんじゃねえよ人の話聞いてんのかこのすっとこどっこい、と言うほかありません。
おわかりだとおもいますが、この何気ない、ともすればすぐに忘れ去られてしまいそうなちょっとしたやりとりは、今後の日々においてかなり重要な意味を持っています。
「自分は気にしないけど、相手が気にするならそれを尊重しよう」と考えるか、「自分が気にならないんだから相手も気にしないでいられるはずだ」と考えるか、ということですね。じぶんで書いていて何かこう、べつに剥がさなくてよかった皮をバリバリと全力で剥いでしまったような気がしないでもありません。
まあよろしい。どっちが良いとかそういうことではなくて、それによって向き合い方が変わってくる、というただそれだけのことです。でも長い目で見るなら早いうちにはっきりさせておいたほうが、たぶんいろいろ楽になる、と個人的にはおもいます。
ここでは配偶者が自身の問題でもあるにもかかわらずそれを認識しないまま放棄を選んだ場合を考えましょう。
手っ取り早いのは、逆説的に聞こえるかもしれませんが、より義実家と親密になることです。具体的には配偶者を介さずダイレクトに「うるさい」と言えるくらい密に、ということですね。あえて今、何もすることなく、やむをえまいと受け入れつづけていれば自然とそうなっていく可能性は大いにあります。仮にそれを聞いた配偶者が「そりゃさすがにちょっと」と諭すようなら、肝心なときに何の役にも立たなかったやつが今さらうんこみたいな良識ぶっこいてしゃしゃり出てくんじゃないよ、と斬り捨てましょう。
もしくは真逆に、負けじと家に呼びまくることです。「ありがたいけど、ちょっとトゥーマッチかも…」と思わせるか、配偶者に「向こうも年だし、ほどほどにしといてやれよ」と言わせることができれば言うことありません。誰も見ていないところでニヤリとほくそ笑みましょう。深謀遠慮の極みここにありです。向こうがバツの悪そうな顔をして波のようにサーッと引いていくほどの勝利がほかにあるだろうか?
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いずれにしてもひとつだけ、確かなことがあります。誰かと日々を共にするシチュエーションにおいて、ものすごく大きく功を奏するのは、相手を変えようとするときではなく、じぶんが変わろうとするときです。
アイデンティティに通じることでもあるし、そう簡単に変えられるものでもないけれど、ただそう胸に刻んでおくだけでも、本当に、びっくりするほど、のちのち大きく違ってきます。またそれによって思いもよらなかった新たなじぶんを発見することもあるのです。
結婚とはまじで、直面した事態とどう折り合いをつけていくかの連続であり、ベターはあってもベストはほとんどありません。なるべく痛みの少ない痛み分けなら上出来です。健闘を祈ります。
A. 負けじと家に呼びまくりましょう。
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質問はいつでも24時間無責任に受け付けています。
dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)
その310につづく!
こちらのご質問を拝見して あー なんかわかるー、って思いました。確かにお気持ちは本当にありがたいですけど…ですね^ ^;
返信削除好きのものこそ上手なれと言いますが
仕事の中に、好きでもないのに上手く出来てしまう厄介なものがあります。(初めは好きか嫌いかも分からずとりあえずやってみようと受けたら大好評)
つい最近、相手の喜びとやり遂げた時の達成感を、この仕事に関しては年々面倒くささが上回ってきている自分の心に気付きました。
今年から全部断ろうと思ってます。
> 某さん
返信削除こんにちは。
「今年から全部断ろうと思ってます」
という最後の一言が最高です。
パーン!と手で払いのけるように
片っ端から全部断ってやりましょう。
KBDG