2016年10月14日金曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その255

安田タイル工業の思い出

ちょっとうっちゃっている間に人の気配がまったく感じられないブログになってしまったので、閑古鳥に餌をまきながら久しぶりの愛らしいさえずりに耳を傾けております。

おまえの母ちゃんデビッドソンさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がなんとなくつけています)


Q: 田舎住まいなので野生のサルに悩まされています。一匹ならばシャイニングウィザードでも喰らわせてやるのですが、なにせ奴ら数十匹の集団で行動しているので…なにかいい対処法はありませんでしょうか⁈ちなみに、サルを駆除して市役所に(耳を)持っていくと、一匹5万円もらえるらしいです。


なんならこちらも徒党を組んで一斉にシャイニングウィザードでいいんじゃないかとおもいますが、どうでしょうか。それにしても1匹5万円というのはなかなか聞き捨てならない額ですね。耳か……。

大好きなGang Starrの "Moment of Truth" という曲に "Every dog has its day." というラインがありますが、同じようにサルにはサルの日々があり、おそらく彼らなりの言い分というものがあります。僕らには厄介なことこの上ない害獣かもしれませんが、彼らからすると僕らこそ勝手に土地を占拠して元々いた連中を追い払う征服者みたいなものです。語弊を気にせずに言ってしまえば、イスラエルみたいなものですね。


しかし経緯はどうあれ現実にこういうものとして定着してしまっている以上、すべてをゼロにリセットして仕切り直すのは簡単なことではありません。現実的でもないでしょう。

もちろん人道や倫理をものともしない圧倒的な武力による殲滅も、ひとつの手です。100年もすれば残るのは記録と、どういうわけだかあまり活かされた試しのない教訓だけになります。世界の歴史とはおおむねそういうものです。

ただし、殲滅の場合は文字どおり、100%でなければなりません。1匹でも残せば水をかけようと踏みつけようと決して消えない憎悪の導火線に火をつけることになります。1匹や2匹とおもうかもしれませんが、コロンビアの対ゲリラ戦だってまさか50年以上もつづくとは当時誰ひとり想像もしていなかったはずです。

こうしたリスクを考え合わせると、やはり現実的なのは粘り強い地道な交渉だけであると言わねばなりません。幸いなことに、先に挙げたコロンビアはケーススタディとして格好の対象になるでしょう。なんとなれば政府と革命軍が和平交渉のテーブルにつき、半世紀もの時を経て少なくとも代表同士では包括的な合意にこぎつけた結果、現大統領がノーベル平和賞を受賞するまでに至ったからです。

サルに悩まされる地域で多数決をとったら「条件がいささかサルに有利すぎるのではないか」と言って否決される可能性もあります。しかし重要なのは対立する双方が交渉のテーブルにつくことです。すべてはそこから始まります。純粋に生物学的な理由から対話それ自体に多くの時間を費やすことになるとおもいますが、僕らも服を着てしっぽがないことを除けばほぼサルです。人智を尽くせば彼らとツーカーの関係を築くことも夢ではありません。

個人的にはサルの群れに政治参加を認めること、いたずらや農作物強奪なんかの罪を減免すること、市民権の保障といった提案には、未来に向けた共存共栄を考える上で大きな意義があるのではないかとおもいます。

サルとゲリラを一緒にするなとお怒りの向きもあるかもしれませんが、それはサルのセリフであると念のため申し添えておきましょう。

がんばってください。ノーベル平和賞はともかく、イグノーベル平和賞ならおそらく余裕で射程距離内です。


A. まず群れのボスを交渉のテーブルにつかせることです。




質問はいまも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その256につづく!

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