そんなわけでひとまず区切りとなる今年最後のオントローロも大盛況すぎて万雷の拍手が鳴りやまず、手だけでは足りないと足までどしどし踏み鳴らした結果2階の床がまるごと抜け落ち、ガレキと共に折り重なる出演者と聴衆の小競り合いからやがてアウト・オブ・コントロールな暴動に発展、タイヤを軋ませながら大慌てで駆けつけたパトカーと消防車と救急車とうっかり通りがかった帰省中の乗用車も容赦なく標的にされ、踏んづけられたり転がされたり胴上げよろしく担ぎ上げられたりしながら年の瀬の熱気も相まって徐々にその規模を拡大、広がりゆく破壊の爪痕を尻目に「いい夜だったね」「また来たいね」と微笑み合う大団円にてぶじその幕を閉じることができました。
本当にどうもありがとう!
「05」と「06」の目玉はやはり、一連のカッコいい靴シリーズということになりましょう。もちろん
1. 手漕ぎボート/helmsman says(2007)
2. 象を一撃で倒す文章の書き方/giant leap method(2010)
3. ダイヤモンド鉱/hot water pressure washer (2014)
の足掛け8年もの月日を要した3編です。今回はここにプロローグとして「歩く/stray sheep」が加わっています。
「ダイヤモンド鉱」がシリーズに連なる一編であることをこの日初めて知ったという人もちらほらといたようです。言われてみればシリーズと言っても本編とはまったく関係のない部分のことでしかありません。でもそれぞれ独立している3編を1本の線で結んだとき、それまでとは別の景色が浮かんでくる、そんなところにこそ僕の真骨頂はあります。というかそう受け止めてもらえるとうれしいです。
あとはおそるおそる、「犯人/paradox oh no」というごく短い、それでいてしょうもない、なので当然あとには何ものこらない詩を読みました。「06」でいちばん湧いたのはこのときだったかもしれません。僕にとってはこの一編、こうありたいと考える詩の完成形のひとつなので、楽しんでもらえてよかった。言葉と読むことのおもしろさを音源以外でお届けできたとしたら、それこそオントローロの甲斐あったというものです。
おかげさまで1年、どうにかこうにか遣り果せたと申せましょう……。2015年は僕にとってまさしくオントローロの年であり、10年以上にわたって避けつづけてきたライブアクトに自ら臨んだおそるべき年でもありました。CDを出してるんだからふつうのことじゃないのと言われそうだし、僕もまったく仰るとおりだとおもいますが、「撮ってもいいけど水着はNG、水着ならいいけど全裸はNG、全裸はいいけど顔出しはNG」みたいな線引きが僕にもあるのです。人にはできることとできないことがあるし、僕はどちらかというと着ぐるみに包まれるほうを好みます。
もちろんそれだけでもないんだけど、でもやると決めたし、ご満足いただけたかどうかはさておきやってよかったと心からおもいます。
「詩をとくに気に留めない人でもちょっとそそられる詩のかたち」というのは、僕がペンと紙を手にしたときから追い求めているもののひとつです。今も昔も、そればかりをずっと考えています。詩を善だとおもったことは一度もないけれど、このフォーマットにはまだそれほど開かれていない娯楽としての可能性がたしかにある。「オーディオビジュアル」とくらべてある程度賛否が分かれるのを承知の上で、「小数点花手鑑」はそれまで思い描いていた解にいちばん近かったと今でもおもいます。僕が伝えたいのはメッセージというよりも、むしろ純粋に言葉が描き出す世界のおもしろさのほうなのです。そしてオントローロはそれがまちがいではなかったと実感させてくれました。
そしてリーディングの世界が、思っていたよりもはるかに広大だったということ。声にはやっぱりとんでもない力があるということ。1年やりとおして誰より僕がいちばんわかってなかったと痛感させられました。それにしたって遅々たる歩みすぎるな、もう10年早くできたらよかったのにとおもうけど、何度考えても「小数点〜」のあとでなければできなかったとおもうし、まあしかたがないと受け入れるほかありません。
地図にも載らないようなこんな離れ小島を、忘れずにいてくれてありがとう。温かく寄り添ってくれてありがとう。オントローロの閉演後にひとりひとりとお話するのは、人によっては迷惑だろうなとわかってはいるんだけれど、そんな身勝手にも付き合ってくれてありがとう。お目にかかれて、うれしかったです、本当に。どっさりといただいたお気持ちにお応えすることはできたのかどうか、今はそれだけが気がかりです。お応えできていますように!
あと忘れられてそうだけど、今年は、TRINCH!春あたりからは声のことばかり考えていたので、オントローロ前にグラフィックサイドをごそっと切り分けてまとめることができてよかった!ほんとは今の倍くらい用意するつもりだったんだけどぜんぜんできませんでした。オントローロでは身につけてきてくれた人がいっぱいいて、感涙です。ありがとう!ありがとう!僕がおもう最高傑作は「芥川鼻店の鼻トート」なんだけど(ウチでもめっちゃ使ってる)、ズッキュンの数がすごいことになってるわりにほとんど売れてません。なぜだろう。
ともあれ、個人的には例年にましてずいぶん実のある1年でした。考えようによっては出るはずのないアルバムが出た去年よりも実りが多かったような気さえします。何度でも言いますが、本当に本当にありがとう。お付き合いくださったみなさまが朗らかな新年を迎えられますように!そして願わくば来年も、ときどきこの寂れた離れ小島に足をお運びくださいますように。
よいお年を!!!!
あと、案の定というかなんというか、蟹江ウエスト商会の新製品、今のところ倍率はキャンペーン史上、圧倒的に最低です。さるまた、あったかいよ。
あけましておめでとうございます^_^
返信削除いつかオントローロに行ける日を楽しみに今年も頑張ります!鼻トートは私も愛用して使ってますよ。
> チムチムチェリーさん
返信削除あけましておめでとうございます。
わ、鼻トート、使ってくださってるんですね。
今年はそれを互いに見せ合える機会が巡ってきますように。
いつもありがとう!