2015年9月1日火曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その224


ダルマさんが胡乱ださんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士が適当につけています)


Q: 当方理系の大学院の研究室に所属していますが、イメージ通り女性が少ないのです。そのコミュニティの中では先輩後輩同期からギャグで研究室のアイドル、姫として扱われているのですが、自分がそんな扱いを受けるほどに顔面が優れていないことは自覚しています。モテるって一体何なんですかね?とりあえずまだこの状況を楽しんでていいんでしょうか?


これがもし男性からの質問だったら、雪見だいふくをしこたま投げつけてふて寝するところですが、女性ということでいくらか客観的に考えられそうな気もするのでお答えしましょう。

まず先に「この状況を楽しんでいてよいのか」について言うと、「もちろん大いに楽しんでください、このすっとこどっこい」がファイナルアンサーになります。はっきり申し上げておきますけれども、どんな理由であれ周囲からちやほやされる環境はどんぐりみたいにそこら中ころころ転がっているようなものではありません。世の中には舞踏会に行けずじまいのシンデレラ的日々を送る人だってすごく多いことを、ここは胸に留めておくべきです。

また、これはあくまで個人的な印象ですがこのモテには、女性が少ないことを踏まえたうえで自らその道を進むと決めたことへの敬意と感謝が含まれているような気もします。「砂漠に潤いをもたらしてくれてありがとう」というようなことですね。女性はどうか知りませんが、一般的な男性にとって女性とはやはり花であり、オアシスであり、下手をすると神です。ただそこにいるだけで、ご自身がおもうよりもはるかに多くのものを彼らに与えている、と考えてまずまちがいありません。したがってそもそもこれは、姫のほうから遠慮するような話ではないのです。

一方でひとつ考えたいのは、「なぜ優れた顔面を持ち出さねばならんのか」という点です。なるべく忘れるよう日ごろからせっせと努めていたのに、そんなこと言われたら僕だってイヤでもじぶんの優れていない残念な顔面を思い出してしまうじゃないですか?思い出したら思い出したでくよくよするし、すごろくで振り出しに戻されたような気になります。もはやサイコロを振る気にもなれません。

優れた顔面はそれほどモテに必須な要素なんだろうか?

そんなことはありません。なんとなれば、僕でさえライブ後にちやほやされてびっくりしたことがあるからです。過去形なのが事例の少なさを如実に表して切ない気もしますが、それはさておき彼らは僕の顔面を観にきたわけではない。ですよね?でも複数の好意を受け取ることがモテだとすれば、明らかにこのケースもその一例です。

誰か別の人にまちがわれていたのかもしれませんが、それだと僕も立つ瀬がないので、ここでは仮に「声だけならイケメンなのにね」とある種の含みを持ってよく言われる地声のためだったとしましょう。いずれにしてもここには優れた顔面と同じく、モテを考える上で見逃せないポイントがひとつあります。それはモテの対象となる部分が、文字どおりその人の「部分」にすぎない、ということです。当たり前と言えば当たり前だけど、すべてを知り尽くしたうえで受け入れてもらっているわけではまったくない。もてはやす人にとって重要なのはあくまでその部分であり、全体ではありません。そればかりかその部分は、女子力高いとかステータスとか、計算や受け取る人の解釈によって生み出されたものの可能性さえあるのです。極論するなら、その人がその人であることすら、モテにとってはあまり関係がないということになります。

ゆえにこう結論づけることができましょう。モテとは、人が思い描く虚像への好意を「代わりに受け取る」ことである、と。受け取れるときは受け取ったらいいし、受け取れないからといって嘆くようなことでもない。街頭で配られるポケットティッシュと同じです。

すくなくとも僕はこの理屈によって、「あ、それならそんなになくてもいいや。ふー」くらいにはきもちを落ち着かせられるようになりました。何と言ってもそうおもえることが重要なので、理屈が正しいかどうかはこの際問題ではありません。

そしてお断りしておかなくてはいけないとおもいますが、もちろん僕はダルマさんが胡乱ださんがシンプルに人から愛されるチャーミングな女性であることを疑いません。にもかかわらずこうした着地になっているのは、ここがパンドラ的質問箱だからです。僕に訊いたのが運の尽きとおもってあきらめてください。


A: 街頭でティッシュを人よりも多くもらうようなことです。




質問はいまも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その225につづく!

2 件のコメント:

  1. ソノトーリ2015年9月1日 2:25

    優れた顔面はさほど重要な事ではない、と僕も思いますが、それを例えば好意を寄せている人に伝えるのはなんと難しい事かとも思います。
    言う方も言われる方もどんな顔をしたらいいのかわかったもんじゃありません。

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  2. > ソノトーリさん

    わざわざ負の側面を否定しなくても
    ふつうにいいとこ褒めたらいいんじゃないですかね?

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