レオナルドがピンチさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)
Q: 納豆やカップ焼きそばのタレの袋に書かれた「こちら側からならどこからでも開きます」は、誤表示に当たらないのでしょうか?
太古の昔から多くの先人とその食卓を混乱に陥れてきた問題のひとつですね。ここではより一般的な文言とおもわれる「こちら側のどこからでも切れます」で考えてみましょう。僕もこれまでこの問題には幾度となく煮え湯をのまされています。袋より先に僕がキレることもしばしばです。
しかしもちろん、これは誤表示にはあたりません。なんとなればここには「手で」とはどこにも書かれていないからです。「歯で」なのか「はさみで」なのか「レーザーで」なのかはたまた「気合いで」なのか、個人的には最後のが好きですが、どうあれその可能性は無数にあります。それどころかことによるとそもそも省略されているのは「○○で」という修飾語ではなく、たとえば「指が」という主語のほうかもしれないのです。
→「こちら側のどこからでも(指が)切れます」
この可能性において、いまだかつてタレの袋で指を切った例がないとすればそれは単なる結果論にすぎません。切れるとあるのに(指が)切れていないのだからむしろその幸運、もしくは袋の慈悲深さに感謝すべきです。食事のたびにしたたる鮮血で食卓が真っ赤に染まっていたかもしれないことを考えると、背筋が凍ります。袋がサディスティックでなくて本当によかったとおもう。
また、当初のシンプルな可能性に戻って仮に「はさみで」が省略されていたとしましょう。この場合問題になってくるのは、道具の使用が前提ならどこからだって切れそうなものなのに、なぜ「こちら側」に限定されているのかという点です。
ところがこれも単にそう見えるというだけであって、実際には限定されているわけではありません。ここで言及されているのはあくまで「こちら側についての話」であり、あちら側やそちら側がどうかということについてはいっさい触れられていないのです。そしてもちろん、こちら側が切れるからといって、イコール「あちら側が切れない」ことにはならない。ですよね?したがって本当はあっちでもそっちでもかまわないんだけれども、じゃあどこから切ったらいいんだと迷うのも気の毒なので、じゃあこっちにしておきなよというひとつの目安としてこの文言は書かれている、と僕はおもいます。
親切と言うよりは余計なお世話にちかいし、だとしたらわざわざ書いておくほどのことでもないような気がするけど、言わなくていいことを言ったり書かなくていいことを書いたりなんて、SNSの例を挙げるまでもなく世の中にはそれこそ腐るほどあるものです。気にする必要はありません。
A: 曖昧な言葉に惑わされないようにしましょう。
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dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)
その212につづく!
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