2011年12月14日水曜日

重くて固い上に、表面もゴツゴツしていて岩みたいな、たぶん乾燥した無花果を押し固めたようなものを好きだとおもわれていることについて



スペインの土産だといって、半月状の何だかよくわからないものをもらったのです。重くて固い上に、表面もゴツゴツしていて岩みたいな、しかしどうやら食料の一種ではあるらしい。まさか鈍器を土産に買ってくることはないだろうし、乾燥した無花果を押し固めたもののように見えるので、たぶん乾燥した無花果を固めたものだとおもう。でもどうして固めてあるのかよくわからない。元々は丸かったものをどうして半分に割ったのかもわからない。はじめから小さいのをつくればいいのにとおもう。

 「これ何?」と訊くと、「さァ…」と首をかしげながら「アンタこういうの好きだとおもって」と言うのです。重くて固い上に、表面もゴツゴツしていて岩みたいな、たぶん乾燥した無花果を押し固めたようなものを好きだとおもわれていることについては異議を唱えたいような気もするけれど、好意は好意だし無碍にもできません。

 ためつすがめつしていると、半分に割った断面の中心部にアーモンドらしきものがぎっしり詰まっているのが目に入ったので、「アーモンドはさまってるね」と言ったら「そうそう、だからアンタ好きそうだとおもって」としたり顔で同じことを言うのです。ふむ…たしかにアーモンドは好物のひとつです。その指摘は正しい。でも重くて固い上に、表面もゴツゴツしていて岩みたいな、たぶん乾燥した無花果を押し固めたようなものの中にアーモンドが入っているからといってどうしてそれが僕の好きなものということになるのかはよくわからない。そんならアーモンド買ってくりゃいいじゃないかとおもう。

いえ、それを言うならドライフルーツだってわりと好きなもののひとつです。一部苦手なものもあるとはいえ、全体としては好きカテゴリに入れていいとおもう。はっきりそう伝えた記憶はないけれど、彼女はたぶんそのことを知っている。アーモンドだし、ドライフルーツだし、最高じゃないですか!(@高野政所)ということなのかもしれません。その理屈でいったらまったくそのとおりです。グウの音も出ない。

でもだからといって、重くて固い上に、表面もゴツゴツしていて岩みたいな、たぶん乾燥した無花果を押し固めたようなものの中にアーモンドが入っている何かを僕が好むかどうかは別の問題です。誰の話だったか、メロンとおむすびが大好物の少年が「すごいイイことおもいついた!」と目を輝かせて、炊きたてのゴハンにメロンをのせたのをひとくち頬張ったら泣き出してしまった、というたいへん痛ましいエピソードを聞いたことがあるけれど、そういうことだってあるのです。もちろん、無花果とアーモンドの相性がわるいとは言いません。むしろお似合いのカップルです。でもそれにしてはくっつけ方にいささかムードが不足しているように見受けられるし、僕ならこんな結婚はごめんこうむります。どうせ合体するならもうすこしロマンチックにお願いしたい。

だいたい、重くて固い上に表面もゴツゴツしている岩みたいな外見からして途方に暮れます。素人目にみてもハードルが高くて攻略しづらい。目の前にドスンと置いて腕組みをしながら考えれば考えるほど、「さて、誰を殴ろう」と鈍器的な印象がつよまるばかりです。何だって乾燥した無花果とアーモンドをこんなにまでがっちり押し固めなくちゃいけないのか?徹底した省スペース設計ではあるけれど、だからどうという話でもあんまりない。どのタイミングでどうやって食えばいいんだこれは?使う道具は包丁なのか?それともノコギリなのか?


そういうわけでそれは今もテーブルの上にドスンと鎮座しているのです。


世界にはいろんな食べ物があるものだとおもう。

3 件のコメント:

  1. 鈍器じゃないのに鈍器にしか見えない。
    まさにニュースで聞く「鈍器のようなもの」じゃないですか

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  2. とりあえず、一部を引き千切って煮てみてはいかがでしょう?

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  3. > 匿名さん

    ポン!(ひざを叩いています)


    > 匿名さん

    同じ方かどうかわからないので分けて書きますが、つまり証拠隠滅ということですね?

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