日曜の夕方、水駒(みずこま:原付の名前)にのってプルプル走っていたら、何か妙なものとすれちがったような気がしたのです。減速しながら振り返ってみると、たしかにそこには妙なものというか、老人と並んで洗面器みたいな生物がのしのしと歩いている。あれは…
リクガメじゃないか…
椿山荘の裏手を流れる神田川に沿って、どこから来てどこへ行くのか、老人とリクガメが連れ立って闊歩している。まさかそんなとは僕もおもうけれど、生きるということはつまりいろいろなものとすれちがうということだし、本当だからといって困ることもべつに何もありません。カメは後ろ足に靴をはいていた。
【日曜日のできごと1】早稲田鶴巻町にカシオペイアをみた。
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その後、外苑東通りから青山通りに折れて赤坂はTBSラジオのスタジオへ。日ごろ裏方としてもお手伝いしている「高橋芳朗 HAPPY SAD」に、今回はゲストでお呼ばれしてきたのです。
この日は「HAPPYSAD恐怖の館~呼び出せ!幽霊ソング」と題して幽霊感のある曲を流す、たいへんユニークな納涼企画がありました。そのせいというか何というか、よもやあんな恐ろしいものに出くわそうとは…
化けて出る川瀬さん↓
そのころ僕はスタジオの外で待機しながら、ヒンヤリした幽霊ソングをBGMにせっせと「しゃべることリスト」をまとめていたのだけれど、ふともよおしてトイレに立ったときの驚きと言ったら、いやまったく、言語に絶するものがあったと告白しなくてはなりません。
何しろ用を足したあと手を洗おうとして洗面台に手を伸ばしたら、洗面台が真っ赤な鮮血にまみれているのです。
※残念ながら本当です。
そんな冗談にもならない光景を目にするなんてそうそうあることではないし、フロアには今まさに幽霊ソングがヒュードロドロと流れています。全身が一瞬にしてガチンと凍りつき、冷たい汗がみぞおちを滑り落ちたとしても、ムリはありますまい。
とはいえ目にしてしまった以上はそのままにして脱兎のごとくその場を離れるのも冥利がわるいし、不運な役回りにブツクサ言いながら洗面台をジャブジャブと水で洗い流す本日のゲスト。(しかも却ってそのためにヨシアキさんからは信じてもらえない羽目に)
だいたい、床ならともかく洗面台なのにどうして洗い流していかないんだ!用を足して流さないやつの気持ちを理解してやる義理なんて、こっちにはこれっぽっちもないんだよ!
そしてなぜ僕が誰とも知れない他人の血を洗い流さなくちゃいけないんだ?マフィアの手下じゃないんだぞ!
そもそも幽霊ソングなんかかけるから僕がこんな目に(八つ当たり)
と
オンエアの影でひとりホラー映画の主人公を演じていたことなどおくびにも出さず、つとめて明るく出番を終えた(つもり)のだけれど、豈図らんや、話はそこで終わらないのだから困ります。抜け殻になってグッタリしたまま喫煙所に向かうとそこでまた血痕が目に飛びこみ、ふたたび凍りつく本日のゲスト。
ワーン!
※決定的な証拠をとらえた瞬間(画像にはモザイクがかかっています)
【日曜日のできごと2】赤坂で猟奇的な何かを体験してきた。
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そんな夏の夜の微笑ましいエピソードもはさみつつ、HAPPY SADクルーとお別れしてさあ帰ろうと水駒にまたがると、今度は背後から「すみません…」とかぼそい女性の呼び止める声がするのです。一度は気のせいかともおもったんだけれど、二度呼ばれればさすがに振り返らないわけにもいきません。おそるおそる背後をうかがえば見目の麗しい女性がふたり立っていて「写真をとってもらえませんか?」
写真?
丑三つ時もせまる午前0時の赤坂の路上で、写真?
「あ、いいですよ」
「このボタンを押してもらうだけでいいので」
「でも、真っ暗ですよ」
「フラッシュ設定してあるからだいじょぶです、たぶん」
「そうですか、じゃ撮りますよー」
パチリ
「どうですか?」
「あ、すごいキレイに撮れてますよ」
「よかったー」
「よかったですね」
「ありがとうございました」
「いーえ、じゃお気をつけて」
「お気をつけて」
すこし離れたところから「いい人でよかったねー」という声が聞こえて、凍りついた心が雪融け水のようにさらさらと流れ出す本日のゲスト。ふたりが幽霊だったとしても、あんなに可憐ならむしろすすんで祟られたい。
【日曜日のできごと3】美しい幽霊の記念撮影に協力した。
ピンカートン先生のおかげでラジオ聴けました!ありがとうございます、とお伝えください。
返信削除お話もとても興味深く、感心しながら聴きました。へー、ほー!おもしろいですねタイトルって。続き、また聴きたいです!
亀って言ったらカシオペイアですね。放し飼いとか憧れてるので、そのおじいさんうらやましいです。いいなあ!靴はかせてるあたりに愛を感じますね。
> みわさん
返信削除聴いてくださったんですね。いつもありがとう!
亀はあのあとまた見かけました。すごく大きいんだけれど、どうもワニガメなんじゃないかという気がし始めているのです。