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2008年12月3日水曜日
崖っぷちで威力を発揮するスイミーメソッド
ときは12月1日の夜にさかのぼります。
*
ふと気がつくと、着信履歴があるのです。おや、フラインスピンのボスじゃないか。ああ、メールも来ている。
「大ピンチ!至急連絡乞う」
まるで電報のようです。しかし多忙すぎる彼の場合、毎日がピンチみたいなものなので(口癖は「今日まじエグい」)、逆にストレートにピンチと言うことがほとんどありません。とてもイヤな予感がする。
ジリリリン
ガチャ
「いかがいたした」
「じつはかくかくしかじか…」
「かくかくしかじかではわからん!」
「ICHIGOの話にござる」
「いちごというとあのパンツの模様になったりする…」
「タケウチカズタケの新譜でござるよ!」
「そういえば明日納品でござるな」
「急遽渋谷タワレコの1階で大きく展開することが決まりもうした」
「そいつァ吉報だ!めでたい」
「ついては90センチ×60センチの店頭用POPを大至急いただきたい」
「え?」
「あの看板みたいな大きなPOPでござる」
「ああ、あれね…え?」
「期限は夜中の1時でござる」
「ちょっと待っていま22時でしょ」
「22時でござるな」
(ようやく事態がのみこめてきた)
「3時間後!?」
「いかにも」
「90センチ×60センチを!?」
「夢はでっかくド派手にまいろう」
「だってこれから我が家はゴハンでござるよ」
「むむ、なんと」
「"Savage!" の真っ黒いサントラ聴きながら食べるの」
「悠長でござるな」
「むむ、しかしまたとない好機、あいわかった。なんとかいたそう」
「ではよろしくたのむ」
「ゴハン食べてからね」
「なおこの電話は自動的に消滅する」
「あれ?うわッなんか電話が…熱ッ」
ボカン
もくもくもく
ゲホンゲホン
しかし正味2時間でいったい何ができるのか?たしかにタワレコのPOPはどれもド派手だし、それに負けないくらいインパクトの強いものをデザインするとなるとこれはひじょうにむずかしい問題です。
いや、待てよ
インパクトというのは、派手であることとはまったく別の話じゃないか。
みんながみんなデコトラのようにがっつり飾りつけているならむしろ…
スイミーメソッド(注1)だ!
バリバリバリ(働く音)
みんながド派手に着飾っているなら、いっそ服など脱いでしまえ、という思い切った方針によって、情報を極限までシンプルに削ぎ落とし、ただ人の視線を誘導するためだけに特化したまるでポスターのようなPOPのデザインがコレだ!
真ん中の空白にはCDの実物をペタッと貼りつけてやるのです。
そういうわけでタケウチカズタケの「UNDER THE WILLOW -ICHIGO-」、いよいよ明日はつばいです。ちがった、今日だ!渋谷での展開がどんなことになっているのか、晴れたらこの目でたしかめてきます。(雨だと外に出たくない)うまいこと目立ってますように!
それにしても発注が22時で納期が1時ってまったく、正気の沙汰ではない。
*
注1:スイミーメソッド.....劣勢を好機ととらえる考えかた。ベクトルを真逆に向けることで、却って引き立たせるやりかたを言う。転じて、裏をかくこと。
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