2008年5月18日日曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 (特別編 2)


では前回のつづきで古川プロデューサー、通称ダンプカーさんからのしつもんです。(この別名の由来はじつは僕も知りません。こないだの質問できいとけばよかったな)



Q: 『詩人の刻印』の中で一番気に入っている一節ってなに?その理由も教えて



しかし発売から半年以上たって今やほとぼりもすっかり冷めているというのに、いまだに自分たちの作品について語り合っているのだから、つくづくおめでたい連中です(もちろん僕を中心に)。見ようによっては「君ってすてきだ」「いいえ、あなたこそすてき」「こいつゥ」「ウフフ」という気持ちのわるいなれ合いに見えなくもない。しかし今のところ僕の存在理由はほとんどこの一点のみにかかっていると言っても過言ではないので、アイデンティティ保護のためにもまだまだアピールしていく所存であります。この世の終わりが来るまでガンバレ!

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こないだもすこしふれた気がするけれど、僕がいちばん気に入っているのは「女と紙屑」の最後をしめくくる、「風呂場では飼いならされたシーラカンスが/口から出る泡の数をかぞえている」という一節です。

じつはこの曲、アルバム制作の最後の最後でトラックを差し替えた唯一の曲だったのだけれど、差し替える前のバージョンは詩もその構成も今とはだいぶ異なるものでした。先に挙げた一節も、元々のバージョンにはたしか含まれていなかったはずです。どうしてそれを作り直そうと思ったのかはもうおぼえていないけれど、とにかくこの一節が出てきたときにやっと「できた!」という実感が湧いたのをおぼえています。

ラップで言うパンチラインとちがって、とくべつインパクトのあるフレーズではないし、目に見えてつかみやすい教訓や皮肉が含まれているわけでもありません。けれどもこの一節には、僕がつねに描きたいと思っているところのものがかなりコンパクトにすっきりとまとまっているのですよね。

言葉を扱っておいてこう言うのもなんだけれど、僕は言葉をそれほど信用していないし、百聞は一見に如かずであることを経験上身にしみて感じています。視覚や嗅覚、聴覚といった直接的な感覚から得られる情報量にくらべたら、1000の言葉もゼロにひとしい。その代わり、かぎられた言葉で情景を描けば、言葉それ自体のもつ意味よりも視覚的な印象が優位に立つぶん、じぶんで想定するよりもはるかに多くの情報をそこにおさめることができるのです。

だからなんというか、思ってた絵が上手に描けた、という感慨がいちばんちかいんだと思います。

でもそんな大きなことを言っておいて、ひとりよがりだったら意味ないし困るな、だれにも伝わらなかったらどうしよう、じっさい誰もここに触れないし…と気弱にもなっていたのも事実です。スペードのAを叩きつけたつもりが、よく見たらハートの2でした、というようなことになっていたら目も当てられない。だから御大ロバート・ハリスに「あの部分、いいね」と言ってもらえて、こないだは心底ホッとしたのでした。(だいたいこの曲、あんまり人気ないし)



A: 「女と紙屑」の最後の一節(思ってた絵が上手に描けたから)



しかし、じぶんのどこが好き?みたいな質問をしれっと投げかける、これが通称ダンプカー先生のこわいところです。5月20日に「FREEDOM フットマークデイズ3」が出たら、僕も同じことを聞き返そうとおもいます。(宣伝)



質問、もうひとつありましたね。前の質問に精気をごっそり吸い取られて、へとへとです。



Q: 好きな野菜はなに?



あっコレ前にも答えた!よかった、じゃあくわしくはそっちを参照してください。ちなみに僕も里芋は好きです。正月の食卓に八ツ頭とか出てくると大きくてとてもうれしい。ていうかせめて古川さんはブログ読んでよ!他に読者がいなくなったとしても!世界を敵に回しても!私がオバサンになっても!



A: ズッキーニです。(2回目)



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2回に分けてお送りした特別編、"古川耕のフライングサーカス"はおたのしみいただけましたか。次回からは通常どおりの質問箱に戻ります。

そういえば「ハムスターの回が好きです」という感想をいくつかいただきました。どうもありがとう!照れくさそうに笑う藤吉郎さんの姿が目に浮かびます。



dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)



その51 につづく!

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