2024年1月26日金曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その413


ポンコツ脱退さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)換骨奪胎をもじったつもりなんだけど、変に生々しくて気づいてもらえる気がしないですね…。


Q. 「これはちょっとラッキーだったな」と思ったことはなんですか?


「ちょっとラッキー」というサイズ感がいいですね。人生にはその有無で未来が変わるような得難いラッキーもあるけれど、それは「ちょっと」ではないし、突き詰めると運の強弱みたいなことになりかねないので、話がそれだけで完結してしまいます。できれば河原で拾った変な石くらい他人にとってどうでもいいほうが、語りがいもあるというものです。そういう縛りでみんなとちまちまシェアしながら「最高のちょっとラッキー」を決めたりしたい。

それでいうと、何だろうなあ…

真夜中に職務質問をされた挙句、パトカーでアパートまで送ってもらったことがあります。

当時の僕は風貌のせいかちょいちょい職務質問をされていたのでそれ自体はわりと日常というかどうということもないんだけれど、ふつうは何らかの事件に関わりがないかぎりパトカーなんかに乗ることはないと思うので、何ひとつ事件性がないにも関わらずパトカーに乗ったという点ではちょっとラッキーだったと思います。それをラッキーと呼ぶかどうかは人による気もしますけど、少なくとも僕にとってはいい思い出です。

ただし、警官の善意ではありません。というのも僕はこのとき、カッターナイフを持っていたからです。もちろんそこには明確な理由があるんだけれど、それはあくまで僕にとって明確というだけで、赤の他人、とりわけ警官にとっては不審なことこの上ありません。というか、僕だって客観的に考えたらそんなやつを野放しにするなとおもう。

真夜中にカッターナイフを所持する男があてどなくうろうろしているように見える極めて剣呑な状況をどう釈明してどう乗り切ったのかは覚えていないけれども、「とにかく用がないなら帰りなさい、家はどこなの、送ってあげるから」みたいな流れだったような気がします。僕としては、えっうそ乗せてくれるの、やった!というかんじだったのでいそいそと乗りこんだ次第です。警官にとっては念のために住所を特定しておこうという思惑だったのかもしれません。

僕がそのときそこで何をしていたのかはまた別の話だし、長くなるので割愛しますが、ここで言いたいのは「パトカーでアパートまで送ってもらったことがある」ということです。めちゃめちゃ不審というだけで悪いことをしたわけではないし、する予定も当然なかったことだけは明記しておきましょう。

それで思い出したけど、そのアパートから引っ越すことになって荷物を運び出すためにうちの人がレンタカーで2tトラックを借りてぶいぶい迎えに来てくれたときの話があります。ハンドルがデカくて、ギアもサイドブレーキも普通車とは違う位置にあって、車高が高い、いかにもトラックという感じのトラックです。たぶん普通免許で運転できるいちばん大きな車だったとおもう。

何から何まで勝手が違うのにぶじ荷物を運び終えてすげーなと感心していたら、渋谷の駅前で坂道発進に失敗して後続車にガションと接触してしまいました。軽微とはいえ、はっきりと事故です。

相手の方はたいそうお怒りで、というかそりゃそうなんだけど、レンタカーでよそ様の愛車を傷つけてしまうなんてこれはえらいことになったとハラハラしていたら、ここでちょっとした奇跡が起こります。

というのは、接触した相手の車もまたレンタカーだったのです。

それは一体どれくらいの確率なんだ…。

もちろん相手にとってどう考えても不要な時間を強いてしまったことは確かだしレンタカー会社にも本当に申し訳ないかぎりなんだけれども、事故処理としてはびっくりするほどあっさり済みました。

厳密には僕個人のラッキーではないので忘れていましたが、僕の人生におけるベストオブちょっとラッキーという意味ではたぶんこれになると思います。


A. パトカーでアパートまで送ってもらったことがあります。




質問はいつでも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その414につづく!


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