2023年5月12日金曜日

扉を開いた先に広がる未知の景色とは

サクッと作ったわりに良いロゴ

かの名探偵、山本和男が人知れず第四の壁を突き破って現実世界で暗躍していた話はまた改めてするとして、アグロー案内 VOL.5に収録された新作、「前日譚/no news is good news」についてすこし書き留めておきましょう。

これは僕にとってリーディングのフェーズが明確に変わった最初の一編です。

そのきっかけとなった「ジョシュア/fishing ghost revamped」アグロー案内 VOL.4に収録)で、何がどう変わったのかをここでかなり興奮気味に書き散らしましたけれども、いま読み返したら微に入り細を穿ちすぎてちんぷんかんぷんな気がしないでもないので、あれはひとまず忘れましょう。

要は言葉の乗せ方がそれまでの小節単位からフレーズ単位に変わったことで、リーディングの自由度が大きく変わったのです。音読のステップ、もしくはラップで言うところのフロウがより自在かつ緻密になっています。

その結果、何をどう書いてもあとから好きに乗せられるようになり、それまで良くも悪くリーディングに特化していたテキストも、その制約がなくなりました。大リーグボール養成ギプスを外したかのような清々しさです。

本当に思い浮かぶまま書けるので、テキスト上で韻を踏んでいてもビートのどこで踏むことになるのかさっぱりわからない。ちまちまと根気よくワンフレーズずつ乗せていった結果、「あ、これここに来るんだ」と書いた本人が驚く始末です。ラップと異なる言葉の乗せ方としてはある種のブレークスルーになっていると個人的には感じます。本来はリーディングに当てはめるような概念ではないかもだけど、どなたかが仰っていた「譜割り」はまさに言い得て妙だとおもう。こんなことができるならもっと早く気づきたかった…。

徹頭徹尾スポークンでありながらステップも多彩なので、深く考えずとも聴き流せて楽しい(はず)。これまで自らをそれほど喧伝してこなかった僕が、初めての人に聴いてほしいと望む所以です。

だからもしこれから辿り着いてくれる人がもしいるならまず「前日譚」「棘2023」「新ジョシュア」あたりをワンセットで強くおすすめしたい。実際のところそんな人が今もまだいるかどうかはちょっと微妙な気もしますけど。


内容的には太宰治「走れメロス」とサミュエル・ベケット「ゴドーを待ちながら」のごった煮です。そこにむりやりRUN DMC feat. Aerosmith「Walk This Way」へのオマージュをぶちこんでいます。


それ以上にどうということはありません。来ない何かをそわそわと妄想しながら待っているだけです。とくにメッセージ性はない…とツイッターでも言いつつ、作中に出てくる白い鳩には淡い希望を込めています。それが言いたかったわけでもないので気づかれなくても全然いいんだけど、ここにピントを合わせると全体の意味合いが違って聴こえるかもしれません。

彼は何を待っているのか?

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