2022年11月18日金曜日

「アグロー案内」の奥行きが変わる細部について、その2


とまあそんなわけで先週はものすごく久しぶりに「バニーズへようこそ!」に触れたわけですけれども、そういえばこのときふと「バニーズ」のテキストファイルを読み返してひとつ小さなことを思い出しました。

完成したブックレットはこうです。



でも直前のデータではこうなっています。



自分でもすっかり忘れていたけれど、最初のテキストは日本語表記で、ここに「バニーズ」とルビを振る予定だったのです。

最終的にこれを採用しなかった理由はぜんぜん覚えていません。たぶんこれだと昭和の喫茶店とかスナックみたいな印象が強くなるからで、それはそれでわるくないけど自分ではもうちょいこう、廃れたダイナーのイメージだったからじゃないかな…とおもうけど、何しろ覚えていないのでわからない。いずれにせよブックレットも自分でこつこつ作っていたので、聴く分には何の影響もない言葉の表記にまで心を砕いていたという、格好の例ですね。


聴く分には何の影響もない言葉のことで言うと、アグロー案内 VOL.3に収録された「名探偵、走る/jump the gun」にもそんな裏話があります。しかもこの曲の場合は、できた曲に付与した言葉が再度曲へとフィードバックされる、ちょっと珍しいケースでした。

お聴きのとおり、この曲からなんとなくわかるのは何か事件らしきものが発生し、山本和男が自転車(たぶんママチャリ)にまたがって捜査を開始する、という状況です。まず僕が「追跡」とか「行動開始」みたいなテーマを挙げ、それを受けてタケウチカズタケが曲をつくり、要望のあったセリフを僕が吹きこんでいます。

タイトルをつけたのはその後です。

英題の「jump the gun」とはピストルが鳴る前に飛び出すこと、つまりフライングとか早まるとか勇み足、という意味ですが、このタイトル、1フレーズによって全体の印象が反転します。なんとなれば「事件の始まり」を描いているように見えて、実は何も始まっていないかもしれないことになるからです。空騒ぎと言ってもよろしい。

名探偵と銘打たれながらどのへんが名探偵なのかいまいちよくわからない山本和男にとって、これほどしっくりくるタイトルもありません。めちゃめちゃクールで颯爽と駆け出すイメージだけがそこにあるなら、なおさらです。言葉の印象と意味の落差がすごくいい。

となるとこれは曲中にもフレーズとしてぶちこむべきではないのか…

ということでどんな形でもいいからぜひ入れてほしい…!とお願いした結果、完成したのがこれです。jump the gunという成句が、この曲にとっての画竜点睛だったわけですね。

こう書くとまるでじぶんが作ったみたいな気がしてくるけど、もちろんぜんぜん違います。作ったのはタケウチカズタケです!僕は曲中で「加藤くん…」とか言ってるだけの人です。いつもすみません。

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