2021年7月23日金曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その336


昨日の敵は今日のトムさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q. 5分間で息抜きをできる方法はあるでしょうか。


息抜き、それは生き馬の目を抜くの略……ではなく生き馬の目を抜く現代社会において欠くこと能わざる心理的メンテナンスのひとつです。息というのは何かと詰まるものであり、詰まるなら窒息する前にとっとと抜かねばなりません。

しかしその方法は多種多様であり、ぶっちゃけ人それぞれです。一ヶ月ほどの休暇をとって世界一周のクルーズに出る人もいれば、鼻くそをほじる人もいます。

後者なんかは5分もかからずに済む可能性大ですが、人目を忍んでほじるだけの甲斐がある大きな成果を常に得られるとは限らないのが難と言えば難です。鼻に指を突っ込むだけで息抜きになるほどわれわれは単純ではない、というかたとえ息抜きになったとしても自分がそこまで簡単な人間だとはさすがに思いたくありません。

だんだん鼻をほじる僕の話みたいなことになってきましたが、もちろん例え話です。そこをそう受け止めるなら世界一周のクルーズに出る人の話も同じように僕のことだと大いに誤解していただきたい。

しかしいかんせん、5分というのはとても短い。ファミレスなら席に案内されておしぼりで手をふいてお冷や飲んでメニュー見て注文する前に帰らなくてはなりません。

また一方で、5分というのはそこそこ長い。ファミレスなら席に案内されておしぼりで手をふいてお冷や飲んでメニュー見て注文してさんざん食ったあと追加注文したデザートに舌鼓を打ち、ドリンクバーのコーヒーを手に窓の外の景色を眺めながらたっぷり1時間は楽しんだ、と想像できるくらいには長い。

もうお気づきですね。カギを握るのは、想像力です。

想像力は時間を拡張します。5分を1時間に引き延ばすくらいならすぐにでもできるわけだから、熟練の拡張者ともなればそれこそ数年を要する世界一周のクルーズを5分で想像しきることも可能です。そもそも想像による時間の拡張に限度はありません。理論的には1000年どころか宇宙の年齢である137億年すら5分に圧縮できるでしょう。

その領域にあってもはや5分という時間の縛りは何の意味も持ちません。そして想像力が許すかぎりありとあらゆることが選択肢に入ります。金も時間も、何なら肉体すら自由に分裂可能です。自分が同時多発的に存在できる以上、不可能なことなどまずありません。何もかもが無限の世界を手にしたあとでは、むしろままならない現実こそが馬鹿馬鹿しい夢に思えてくるでしょう。世界を征服するもよし、何万回と結婚を繰り返すもよし、人類未踏の地を片っ端から踏み倒すもよし、全人類のすね毛を剃って地球からすね毛という概念をなかったことにするもよし、五輪を中止するもよし、ほぼ神です。

ところがこれで終わりではありません。

時空を超えてすべてが可能になるということは、この星に暮らす数十億の人間と対話が可能になる、ということでもあります。今さらそんなことでいったい何が息抜きになるんだとお思いかもしれませんが、チッチッチッ(得意げに指を振っています)。何か肝心なことをお忘れではありませんか?

地球上の対話可能なすべての人に5分で息抜きができる方法を訊ねればよいのです。


A. 想像力を駆使しましょう。




質問はいつでも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その337につづく! 


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