2021年6月4日金曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その329


ジュラシック・パクッさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)食べられちゃったんでしょうね。


Q. ムール貝博士言行録を見ていると、「○○だとおもう」など「思う」を「おもう」「おもいます」などひらがなで表記していることに気がつきました。特に意味はないのかもしれませんが、何をおもってそうされているのですか?ちなみに僕は「宜しくお願いします」を「よろしくおねがいします」とすべてひらがなで書くのが好きです。かわいいので。


いい質問です。と言って得意げにお話しできるようなことなどありゃしないのですが、たしかに僕は日ごろから意識してそうしているところがあります。

何より、それまでぜんぜん意識していなかった女子に「ダイゴくんの字って丸っこいよね」と言われたときのような、そんな親も知らないようなちょっとした癖とか指摘されて急に意識し始めちゃうみたいな、それは以前から僕のことをちょいちょい見てたってことですよね!?みたいな、甘酸っぱいきもちに鼻息を荒くせずにはいられません。

それで言うと、「よろしくおねがいします」もかなりの頻度で使います。すこし堅い場合でも「よろしくお願いいたします」が多いですね。「宜しく」も「致す」も漢字としてはほぼ使いません。

面と向かって訊かれたことがないので(あったかな……)あまり深く考えてもこなかったけれど、どうも漢字にする必要があるかどうかで選択しているようです。

たとえば「たべる」は高確率で「食べる」と変換します。漢字があるのとないのとでは印象が変わるし、この場合はむしろ漢字のほうが印象として優位だからです。文字として明らかに表意である、と言い換えてもよろしい。

「思う」も漢字のほうが優位だとおもうんだけど、明確な思念としてアクセントを置きたいというよりは使い方が単なる語尾に近い……のでたぶん、一文の印象を平らにならすために漢字を避けています。

ただし「あれこれ思いを馳せる」と文の間に入るようなときは、まず100%漢字です。「おもいを馳せる」ではパッと見たときに文意を把握しづらい気がするし、視覚的なアクセントとして漢字を含むほうが読みやすくなることもあるからです。

同じ理由で、いくつかの漢字が重なってしまうようなときも、一部をひらく傾向があります。ひらくというのは漢字をひらがなにする僕個人の造語ですが、たとえば「大抵独りです」みたいな場合は「たいてい独りです」「大抵ひとりです」のどちらかにひらくわけですね。ここで「ひらく」を「開く」と漢字にしないのは、「あく」と「ひらく」2つの読み方があるのと、文字の組み合わせが別の言葉と混同されにくい言葉だからです。

なのでおそらく、漢字でないとわかりづらい言葉は漢字、そうでないときはひらがな優先、ひらがなが並びすぎて読みづらいなら漢字を混ぜ、逆に漢字が続くようなら一部をひらく、という使い分けが基本になっています。

微妙なニュアンスの話をすると、「そうしないと読みにくい」よりは「そうすると少し読みやすいかな」くらいの向き合い方ですね。

あと、漢語より大和言葉のほうに惹かれる僕自身の習性も少なからず影響してそうな気がするんだけど、そこまで踏み入ってしまうとさすがに収集がつかなくなる気もするので、このへんですっきり畳んでしまいましょう。


A. 必要性と可読性とそのときの気分に応じて使い分けています。




質問はいつでも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その330につづく! 


3 件のコメント:

  1. 7年前、ダイゴさんの記事を読んで、
    僕も「ひらく」という表現をするようになりました。
    「言葉と仲がよくって、本当に素敵だなぁ」とおもったのを覚えています。

    http://diagostini.blogspot.com/2014/11/192.html?m=1

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  2. ダイゴさんの字の丸っこさは年賀状頂いた時に確かに感じたし、字体が自分とかなり似ていて不思議な気分になれました。ありがとうございます。

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  3. > 某さん

    7年前の記事は本当に、すっかり忘れておりました。
    その頃からずっとお付き合いいただいてるんですね。
    うれしいです、いつもありがとう!

    > SHOさん
    人の書く字はなんかちょっと裸体に近いものがあって
    「あ、こんな字書くんだ」って思わされること多いですよね。
    こちらこそありがとう!

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