2019年9月14日土曜日

ミス・スパンコールと「アルスクモノイ」の愉快な濫觴


ミス・スパンコールの話をしましょう。

ついこないだ「わたしはいったいいつまでミス・スパンコールでいればよいのか」と抗議されたばかりなのでいささか気が引けますが、かつてこのブログでとりあえず便宜上つけただけだったはずの仮名のまま、気づけば10年以上の年月がたち、その間そこかしこでちょいちょいその名を持ち出してきたことでもあるので、やはり便宜上そう呼んでおくことにします。

ミス・スパンコールはかれこれ20年ちかく、僕が人前で声を出すようになるよりもずっと前から、いつも隣にいてたぶんこれからもいる至近距離の人です。パスワードを忘れてしまったので本人もアクセスできなくなってしまった「手漕ぎボート/helmsmam says」のMVを、こつこつと深夜のファミレスでつくってくれた人でもあります。あと、なぜかよくわからないけど、バナナに造詣が深い

そんな彼女が、新宿区西五軒町に「アルスクモノイ」というちょっと変わった名前の古書店を開くことになりました。最寄り駅は東京メトロの神楽坂、もしくは江戸川橋になります。決してひろくはないけれど、棚に並んだ本に思いを馳せながら、カウンターでお茶やちょっとしたアルコールも飲める、居心地のよいお店です。



アルスクモノイ
東京都新宿区西五軒町10-1
03-6265-0849
営業時間 12:00〜20:00
定休日 月・火
HP
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いつも至近距離にいる僕としては、こうして書いている今もすこし胸にこみ上げるものがあります。

何しろ内装の工事が始まったのは今年の2月です。本来であれば春先にはオープンしていたはずの店であり、なぜそれが叶わなかったかといえば、よりによって内装工事が始まる当日、店へと向かう途中に原付で派手に転倒したからであり、救急車で運ばれたその晩に折れて骨が飛び出した右足の緊急手術、数週間の入院をへてどうにか退院したものの、のんびりしてはいられないと松葉杖でせっせと歩行中にふたたび転倒、さらに手首を骨折した結果、自力では完全に歩行不能となり、こりゃ買ったほうが早いと買ったオレンジ色のかっこいい車椅子でひと月以上生活していたからです。おかげで町を歩いていてもバリアフリーのことをよく考えるようになりました。町は本当に段差が多い。

ちなみにその事故と前後して僕も原付のチェーンが走行中に切れたり、バイク屋に預けて直してもらったその帰り道に車と接触事故を起こしたりして、2週間くらいの間に彼女の分と合わせて都合3回レッカーを呼ぶ悪夢みたいな日々でしたが、それも今となっては笑い話です。

もちろん彼女の足と手も今ではすっかり完治しています。あの時期にかけられた呪いは何だったんだろうと未だにおもう。


そして本当にたまたま、偶然としか言いようがないのだけれど、アルスクモノイがある町とその周辺は、僕にとって馴染みの深い土地でもあります。

というのも、最寄り駅のひとつである江戸川橋から歩いて数分のところに、亡き祖母の家があったからです。今ではきれいにリニューアルされた神楽坂の赤城神社がまだ鬱蒼として昼でも薄暗いひなびた神社だったころを知っているし、江戸川橋の地蔵通り商店街にかつてあって今はないおもちゃ屋にも思い出があります。

1枚目のアルバムに収録した「棘/tweezers」「営団地下鉄エドガー橋駅」というフレーズが出てくるのは、そんな背景があったのです。

ただただぴったりくる物件を探して、あちこちの町を歩き回り、彼女が「何度たしかめてもやっぱりここが気になる」と決めたその最寄り駅のひとつが「エドガー橋」だったのだから、いちばん驚いたのは僕です。感慨深くなるのもそりゃむべなるかなと申せましょう。

お店のすぐそばには小学校があるのだけれど、これが父の通っていた小学校であったことも、つい最近知りました。アルスクモノイがなかったら、父の小学校がどこかなんて今も知らずにいたはずです。縁というほかありません。はるか昔から、こうなることがあらかじめ決まっていたような気さえしてきます。


また、同時にというかついでにというか、アルスクモノイのオープンに伴い、店内のどこか数センチ四方を間借りした安田タイル工業の東京支社、夢にまでみた自社ビルが、いよいよ落成となります。(安田タイル工業についてはこちらをご覧ください)(LINEスタンプもあります)

店内のどこかに建っています

7月中のオープンを目指していたので、先日まで京都市内の地下鉄駅構内に掲示されていたタイル月報を東京支社でも掲示する予定でしたが、もう9月なので、7月号でよければ自由にお持ちいただけます。お気軽にお声がけくださいませ。


ともあれいろいろあって明らかに遠回りをしすぎたアルスクモノイ(と安田タイル工業東京支社)の、いま足下にあるのがスタートラインです。どうかどうか、末永くご愛顧賜りますようお願い申し上げます。

もちろん僕も自動的にここが拠点になります。というか、ちょいちょい店にいるとおもいます。アルスクモノイを検索してここに辿り着いた方は「そんで結局おまえは誰なんだ」とお思いでしょうが、気にせず遊びにいらしてね。


2019年9月3日火曜日

そういえば開幕することをブログで言わなかったSoloSoloSoloTOUR2019がぶじ閉幕したこと


この半年間、これから迎えるごくごく私的な新しい局面のために木材を切ったりオイルを塗ったりペンキを塗ったりビスを打ち込んだりとDIY作業に追われていたこともあり、てっきり済ませたとばかり思いこんでいたブログでの告知を最後までし忘れていたことにたった今気づいて言葉を失い、それならむしろ始めからなかったことにしておいたほうがいろいろと都合がよいのではないかと土壇場で逡巡したあげく「いや、たしかにここで告知はしたのだ、したのだがその後何らかの手違いでその告知エントリを削除してしまった、もしくは何かそういう質のウィルスにそこだけピンポイントできれいに消されてしまったのだ」というスマートな結論で落着したツアーが一昨日ぶじ幕を閉じたのです。


考えてみればふしぎな縁でお相伴させてもらうことになった純平さん(@junpeishiina)、カズタケさん(@KaztakeTakeuchi)との SoloSoloSoloTOUR も今年で3年目になります。

発信力に欠けたきわめて微弱な告知を敏感にキャッチしてご来場いただいた皆々さまにはなんとお礼を申し上げてよいのか、我ながら伝えられる言葉の少なさに呆れ果てるばかりですが、本当に本当にありがとう!おかげさまで今回も最後までたのしい時間をすごすことができました。



今年巡ったのはPOWERS2@川崎元住吉THE GOOD THING aka グッシン@大阪南船場、そして初めて訪れたLUGGAGE@名古屋栄の3箇所です。

それぞれすこしずつ趣が異なる、それでいてどこもファットな雰囲気に満ちた居心地のよい空間なのだけど、とりわけPOWERS2とグッシンはろくすっぽライブ活動を行わない僕のような男を、いつも「おかえり」と両手を広げて心から迎えてくれるかけがえのないお店でもあるので、幸せここに極まれりと言うほかありません。ここでやらせてもらえて、ここで観てもらえてよかった!



忘れたころにポロッと訪れる天災みたいなスパンでライブをしていると、すこしでも耳馴染みのあるものをという気持ちが働いてしまうのでどうしても偏りがちになるセットリストはドタンバタンともんどり打って考え抜いた結果、今回こんなかんじでした。

1. コード四〇四/page cannot be found
2. 二度ふれる前に消えてなくなれ/disappear like this word
3. Interluders(working title)
4. 象を一撃で倒す文章の書き方/giant leap method
5. 手漕ぎボート/helmsman says

w/ タケウチカズタケ
1. 忘れられた処刑人
2. 注射器とカセットテープと公魚釣り
3. 棘/tweezers

the 3
1. 36th stratagem REMIX
2. 時巫女ノ森
3. Hot Water Pressure Washer


"Interluders"と仮タイトルのついた一遍は、このツアーに合わせて書き下ろしたものです。言ってみればインタールードの住人というような意味であり、いつかは形にしてみたいとつねづねおもっていたところの概念が元になっています。とくに公言していなかった気もするけれど、「小数点花手鑑」の英題として控えてあったくらいです。

ひとつの作品として完結させるというより、この先も書き足したり入れ替えたりしながらいつまでも終わらずにつづいていくような、そんなイメージで書いています。コンセプトをキープしたまま、聴くたびに言葉と情景がちょっとずつ遷移していく、そんな一遍があってもいいとおもうのです。あくまで理想なので、言うほど変わらない可能性もありますけども。


「手漕ぎボート」「象を一撃で倒す文章の書き方」「Hot Water Pressure Washer(exダイヤモンド鉱)」は、"角の店で見たカッコいい靴"でつながる靴シリーズ三部作ですね。たしかオントローロでは一度やったことがあったとおもいますが、このツアーで初めて三部作だったことを知った人もいたみたいなので、やってよかったです。よかったよかった。


ともあれ、現時点ではこれが今年のライブ納めということになります。東名阪でありながら仙台、福井、長野、三重、広島からいつも変わらずに来てくれる人がいたり、かとおもえば青森や島根から初めて足を運んでくれた人もいて、そのよろこびはちょっと言葉に尽くせません。

それから今回は、5年以上前に仕事で「万年塀」を検索していたらなぜか僕のブログがヒットしたという人や、LINEスタンプ「鶏肋印」から僕を知った人が、巡り巡ってとうとうライブにまで辿り着いてくれたという、紆余曲折すぎるうれしい邂逅もありました。

そんなことがあったらいいのにと淡い夢を抱いていた気はするけれど、本当にあった……!と感慨もひとしおです。僕のライブ頻度からして、これを奇跡と呼ばずに何と呼びましょう。

あらためて、本当に本当にありがとう。お目にかかれて幸せです。じゃあもっとライブやれよと言われそうですが、それはまた別の話なのでほとぼりが冷めたころに別途相談させてください。

そしてこんな僕がこうしていられるのも、カズタケさんと純平さんのおかげです。観た人はみんな例外なく実感しているとおもいますが、このお二人と並んでイベントの一端を担わせてもらえる僥倖もやはり、筆舌に尽くしがたいものがあります。あ、あり……(感極まっています)、ありがとうございました……!

SoloSoloSoloTOUR 2019、これにて閉幕です。写真がどれも中途半端だなとかそういうことを言ってはいけません。

またいずれ、そう遠くない未来に同じかたちでご挨拶できることを心から願って!

よいお年を!

味仙