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飛んで火に入るナスの牛さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がなんとなくつけています)
Q: 生まれつきなので全く長所と思っていない肌の白さを他人から言われたとき、なんて返せばいいのかいまだに分かりません。褒められても疎まれても生まれつきだから以外言いようがないのですが、なにか上手い返しはありませんでしょうか?
おそらく太古の昔から、人はわかりきっていることをなぜか言わずにはおれない奇妙な生き物です。この時期なら「さむい」がその筆頭に挙げられましょう。似たような例としては「背が高いね」「髪が伸びたね」「人がめっちゃ並んでる」「(道が遠くて)まだ着かないのか……」などがあります。感嘆符みたいなものだから意味があるかといったらないんだけど、考えてみればわざわざ口に出して言わなくても見ればわかるようなことばかりです。でもなぜか口をついて出ます。人にはそもそもそういう習性があるということをまず心に留めておきましょう。要するに言う側はそこまで深く考えていない、ということですね。
僕もはじめてパフォーマンスをご覧になった方から、声の良さをお誉めに与ることがありますが、これも言われた本人が何ひとつそれに寄与していないという点では「肌が白い」と同じです。個人的な印象で言えば「日本は湿度が高いですね」と言われた日本列島それ自体のきもちに近いものがあります。
単なる体質のひとつであってべつに努力の成果でも何でもないから、謙遜もできません。といって、いただいた好意に「はあ、どうもそのようで」と他人事みたいなお返事をするわけにもいきません。なので好意であれば答えは自然と「ありがとうございます」一択にしぼられます。何かが目減りするでなし、もらえる好意はどうあれ素直に頂戴しておくのがいちばんです。
もちろん、ご質問にもあるように疎まれるケースもあるでしょう。望んで得たものでもないんだから正直「知るかよ」の一言でばっさり片付けてしまいたいところですが、無用な遺恨を残してもいけません。ここはひとつ、相手のチャームポイントをひとつ挙げることで相殺することにしましょう。目が大きいでもいいし、足が長いでもいいし、それこそ背が高くてうらやましいとかちっちゃくてかわいいとか何でもよろしい。お中元とかお歳暮のやりとりみたいなものです。
あるいはもっと単純に、冒頭で挙げた感嘆符のひとつにすぎない場合もあります。この場合はひとまず「そうなんですよね」と返しておきましょう。日本列島も湿度の高さを指摘されたら、たぶん同じように言うはずです。
もっとこう破壊力のある一打はないのかという向きには、もうすこしテクニカルな返し方もあります。なんと返していいのかわからないことを言われるのだから、同じようになんと返したらいいのかわからなくなるような返し方をすればいいのです。肌が白いことを言われるなら、たとえば「豆腐みたいですよね」と返すのもよいでしょう。もしかしたらふつうに肯定されたあげく殴り合いのケンカに発展するかもしれませんが、それはもうしようがないといえばしようがないので、後遺症がのこらない程度に加減してあげてください。
A: 「豆腐みたいですよね。」
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その260につづく!
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