2014年12月2日火曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その195


マリンブルーのハゼに抱かれてさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)僕らの世代で矢沢あいと言えばこれです。これじゃないですけど。


Q: コタツから抜け出す画期的な方法はご存知でしょうか?


コタツを持ち出すにはまだちょっと時季的に早い気がするし、抜け出すとなるともっと早い、とおもわれましょうがこれには大人の事情があるのです。どのみちイヤでも冬はやってくるのだし、なんなら今ご覧のディスプレイをちょきちょきと切り抜いてトイレの壁かなんかにピンで留めといたりするとよいかとおもいます。ウチにもそういう、役に立ったのか立たなかったのか、そもそもいつから貼られているのかわからないメモが貼ってあって折々にハッとさせられるものです。

冬に質問を募集するとこれに類するものが必ず3つは入っているので、すでに何度かお答えしているかもしれません。5年以上かけて200回ちかくもこんなことをつづけていれば、そりゃまあそういうこともありましょう。なかには回答の前に「解決しました!」とお便りくださる方もおられるくらいだし、もうスルーでいいかとおもわなくもないのですが、ここまで書き出しておいて今さら「しまった他のにすりゃよかった」と悔いても詮無いことです。あきらめてこのまま参ります。次こそは事前に気づいてスルーしたい。

もうだいぶ昔のことですが、電気代を滞納して数日間、原始的な暮らしを余儀なくされたことがありました。それも冬です。真っ暗な部屋のなか、ガスコンロで手を炙ったりしながら暖をとったことをよくおぼえています。

このときに得た教訓のひとつは、「電気の通っていないコタツほど薄情なものはない」ということです。バラ色だった楽園が急激にその色彩を失ってモノクロに沈みゆくあの感じ、マッチ売りの少女から買ったマッチが燃え尽きたかのようなあの感じは、忘れたくても忘れることができません。

ここに至るともはや抜け出すべきはコタツではなく、逼迫したこの暮らしそのものです。何しろ暗くなったら寝るしかないし、寒かったら寒かったでやっぱり布団をかぶるしかないし、布団をかぶったらかぶったで知らぬ間にこぼれて枕を濡らす涙の温かさがまた身に応えます。画期的かどうかはちょっと判断に悩むところですが、否が応でも強制的に優先順位が入れ替わるという点で、その効果はまず劇的であると申せましょう。


A: 電気代を滞納すると、コタツが不用になります。


なんかでも最近はコタツ、あんまり使われてないみたいですね。そういえばウチもありません。またそれに伴ってミカンの消費量がいちじるしく減っていると聞いたのですが、ことほどさようにミカンが特定の家具に依存する果物だったのだとしたら、僕ら日本人は本来そこまで欲していない果物をほとんど惰性で、しかもさんざん腹に詰めこんできたことになります。なりませんか。僕がミカンだったら「愛されてると信じてたのに実はそうでもなかったと知る」不倫の末路みたいな心情で、国民相手に最高裁まで争わずにはいられない話です。みんな一度ミカンに謝っておいたほうがいいとおもう。




質問はいまも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その196につづく!

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