明日9月3日は僕も大いに関わっている(が音楽的には1ミリも関わってない)タケウチカズタケの新譜 "UNDER THE WILLOW -BLEND-" の発売日です。お店によっては今日から手に入ることもあって彼の周辺はその話題で持ちきりのようだし、そういえばアルバム以外にもお話すべきことがあったと今になって思い出したのだけれど、それを気にしだすと先送り先送りにしてきたことがまたさらに先送りになってしまうので、ひとまず忘れましょう。
ちなみにタケウチカズタケとは、前作オーディオビジュアルに収録されている「処方箋/sounds like a lovesong」で切ないメロディを奏でているキーボーディストです。
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ぶっちぎりの国のアリスさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)ウサギより足、早そうですね。
Q: ご自分の詩を『文字』で覚えてらっしゃいますか?それとも『音』で覚えてらっしゃいますか?
タマフルやHello Worldでもすこしそんな話になった気がするけれど、初めての人には「あれだけの言葉数をよくおぼえていられるなあ!」という印象を持たれることが多いようです。ここだけの話、僕も他人事のように「よくこれだけの言葉数をおぼえたもんだなあ」とおもったりしています。
実際のところ、おぼえるのはそれほど特殊な技能ではありません。個人的にはものすごーく苦手ではっきりそう言ってもいるから「やっぱりたいへんなんだ」とおもわれがちなのは確かです。でもスポークンワーズの世界でこれくらいの量はとりたてて珍しくもないし、それを言ったら役者さんのほうがよほど難儀だろうと僕なんかはおもいます。たいへんなのはあくまで記憶を司る僕の海馬がその程度の資質しか持ち合わせていないからです。もっとハイスペックだったらよかったのに、ざんねんなことですね、返す返すも。
また、100%ばっちりおぼえていても、それをそのとおりにきちんとやれるかどうかはまた別の話です。そらでならいくらでも言えるし、とちることもないし、それこそ溢れるように言葉が流れ出すのに、マイクを前にすると急にある単語だけ霞がかってどうしても出てこなかったりすることがあります。というか、だいたいいつもそうです。僕にとってはこっちのほうがはるかに重大かもしれません。つまり、おぼえているのに出てこないということ。
言葉だけならしっかり頭に叩きこまれています。でもそれだけでは一文字こぼれ落ちた時点ですべてが泡と消えかねません。それをカバーする際に、「文字」か「音」かといった質問にもあるようなことが大事なポイントになってくるわけですね。
結論から言うと、「両方」です。さいしょは音からなんとなく掴むようにしている気もしますが、最終的には脳裏にカンペが貼り出されています。1枚の紙にプリントアウトしたものだったり、ブックレットの見開きだったりとどういうわけか詩によってちがってはいるものの、紙の上に文字が印刷された状態をイメージとして浮かべているのはたしかです。どちらかといえば「今このへん」という位置関係を把握するのに使っているかんじ。
というのも、似たフレーズの繰り返しがあり、かつ文言が必ずしも順を追っていないような場合、音だけの記憶に頼るとそれらが入れ替わっても気づかなかったりするからです。「七つ下り拾遺」なんかがその典型ですね。ビートに展開があればまたちがうのだけど、僕は基本ワンループが大好きなので、その弊害がこんなところに表れてきます。順を追ってはいるものの音だけだと多少入れ替わっても気づかない、という意味ではひと昔前の「アンジェリカ」もそうです。「聖母はトンプソンがお好き」にもすこしそんなところがあるかもしれません。
また音としての記憶は、とりわけ「言葉が飛んだあと正しい位置に戻る」のに絶大な威力を発揮してくれます。いったん踏み外した文字は後から追っても絶対に追いつかないし、ビートから先回りしたほうが手っ取り早いのです。脳裏のカンペでだいたいの箇所をとらえつつ、音から流れゆく文字の現在位置を絞りこみ……待てよ、なぜ失敗前提で話をしてるんだ?
それからもうひとつ、カンペとはべつに「情景」も思い浮かべています。レイヤーというか、半透明のカンペの後ろにひとつひとつの場面がでーんと映し出されているとおもってください。ただこれはおぼえるためというよりは自然と浮かんでくるものだし、リーディングにかぎらずどんな身体表現にもデフォルトで伴う感覚なんじゃないかなとおもいます。
いずれにしてもひとつ言えそうなのは、文字や字面といった言葉それ自体の視覚的な要素がパフォーマンスの上でかなり大きな割合を占めている、ということです。歌やラップと決定的に異なる点があるとすれば、このあたりのような気がしないでもありません。
あくまで僕個人の場合は、という特大の但し書き付きですけども。
A: 使えるものはぜんぶ使って必死に刻みこんでいます。
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その184につづく!
小林大吾さんの曲はすごく情景が浮かんできます。
返信削除「アンジェリカ」や「テアトルパピヨンと遅れてきた客」など大好きです。
ストーリーテリング的と言うんでしょうか
> ソノトーリさん
返信削除そうですね、ひょっとしたら視点が三人称であるとか、
単純に情報量が多いことなんかも関係しているかもしれません。
楽しんでもらえて何よりです。どうもありがとう!
視覚と音が大きな割合をしめてるんですか…!
返信削除ちょっと意外でした。
というのも、私は趣味でトロンボーンを吹くのですが、ライブにおいてもっとも頼りにしているのが、スライドを操作する右腕や倍音列を駆け抜ける呼吸器系〜口腔内といった、身体的感覚の記憶だからです。
でも「使えるものはぜんぶ使って必死に刻みこむ」というのは、とても共感できます。
そしてダイゴさんは、どのライブでもミスしないのが凄いです!
> いくらのよしは。さん
返信削除トロンボーンをされてるんですね!
いただいたのは詩についての質問だったので触れませんでしたが、
発声や呼吸ならもちろん、仰るような身体的記憶の話になってきます。
とくに僕の場合はブレスコントロールに一瞬たりとも気が抜けないし
実際これなくしては言葉の暗記も形無しです。
ほんとはミスのほうがずっと多いんですよ。
ここだけの話ですけども。