2014年7月25日金曜日

鰻、穴子に次ぐ第3の選択肢を再発見する話



来週、7月29日の火曜は土用の丑の日です。

と書けばアルバムを出したばかりなので何かの告知におもわれますがもちろんさにあらず、来週火曜は土用の丑の日だよというだけの話です。よその人気者ならいざ知らず、リリース直後だからといって種々のアナウンスが次から次へと波のように押し寄せたりはしないので、というかまあこのブログは基本どんなときであっても大体こんな温度感なので、いつもどおり何の役にも立たないお話でもするほか場の保ちようがないのです。

なぜ土用の丑の日なんぞを持ち出すのかといえば、この時期スーパーのチラシがウナギの蒲焼きで埋め尽くされているからです。とにかくウナギを食わせようとあの手この手で食欲を刺激してきます。蒲焼きはもちろん、長焼き、白焼き、肝串ときて、しまいには「蒲焼きのたれで豚丼をつくろう」というウナギ不在のレシピまで掲載する始末です。

でも海で生まれて川に暮らすこの奇妙な淡水魚、今年はとうとう絶滅危惧IB類としてIUCNのレッドリストに載ったんですよね。IBというのは近い将来における絶滅の危険性が高い種を指しており、その上位カテゴリであるIA類(超ヤバい)ほどではないけれども、それにしたって相当ヤバいということを示しています。

にもかかわらずスーパーのチラシでは意にも介さずどーんと「いいからウナギ食おうぜ!」みたいなことになっているので、このぶんだとまずまちがいなくきれいさっぱりいなくなるでしょう。いなくなってから「えらいことになった!」と右往左往するようすが今から目に映るようです。人はじぶん以外の存在をただ純粋に思いやるきわめて高度な博愛精神を持っているけれど、既得権益をあっさり手放すほどには博愛でもないので、そういう事態が往々にして起こります。

問題はウナギ去りしあとのことです。ウナギに取って代わるものがあるとしたら、それはやっぱりアナゴなんだろうか?アナゴはウナギとくらべてかなり身分が低いように受け止められているふしもあるけれど、ルパン三世における山田康雄/栗田貫一みたいな美しい世代交代劇は望めるだろうか?

農林水産省のホームページには両者のちがいについてこう書いてあります。

…食品としてみた場合の違いは、アナゴの脂質含有量はウナギの半分程度であることです。

意訳:ほぼ同じです。

それはまあそれとして、アナゴ以外にも別にもうひとつ、僕には心当たりがあります。本日のお話の主旨はここです。多くの音楽ファンがフジロックフジロックと盛り上がるなか、アルバムをリリースしたばかりの男がひとりウナギの今後に思いを馳せていることについてはまたあらためて自分と話し合う席を設けなくてはいけない気がしなくもないけれど、それはまあそれとして、蒲焼きフィーバーともいうべきスーパーのチラシを見るともなく眺めながらふと、井伏鱒二の随筆にこんなことが書かれていたのを思い出したのです。

戦争後、末さんはいったん閉じていた店を荻窪駅北口のところに出した。やはりおかめという名前だが、戦争中に鰻の蒲焼と言って売っていたのは、雷魚の蒲焼であったと言った。雷魚なら水郷地帯に行けば都合がつく。(中略)私は末さんのところの蒲焼が、雷魚であったと思ったことは一度もなかった。お土産として買って来ても、家の者は誰も気がつかなかった。(井伏鱒二「荻窪」)




養殖事業に乗り出すなら今だという気がする。

2 件のコメント:

  1. タマフルを聞いてからファンになったばかりの者ですが、アルバムをリリースしたばかりのタイミングでうなぎに想いを馳せている小林大吾さんがとても心配、かつさらに好きになりました(笑)

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  2. > 匿名さん

    ふふふ、どうもありがとう!
    でもここは今も昔も、そしてたぶんこの先も
    ずっとこんなかんじです。またいらしてね。

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