ここしばらくこまかい話がつづいたので、もうすこしどうでもいいような話に戻りましょう。ある日ふと1本のヤマザクラを見上げると、そこに蛇がいたのです。
巻きつくというよりは這うような格好で、ぬるぬると上に登っていきます。ただのたくっているようにしか見えないのに、気がつくとどんどん遠ざかっているのだから、そりゃ誰だって目が釘付けになるというものです。なぜその動きで前進できるのかさっぱりわからない。見た目の動きと実際の動きに違和感があるという意味ではムーンウォークにも近いものがあります。僕も蛇のきもちを想像しながら実際に寝そべってはみたものの、木に登るどころか動く気にもなれず、そのまますやすやと寝入ってしまう始末です。
創世記によれば蛇は神に呪われてすべてを奪われたことになっているけれど、端から観察するかぎりではとてもそうは見えません。むしろ僕らの一歩先を行く生物のような印象さえあります。仮にすべてを奪われてなお爬虫類界のマイケルジャクソン的立ち位置を勝ち得たのだとすれば、これはもう涙なくして語れない驚異のサクセスストーリーと言わねばならないし、映画化権の奪い合いにならないのが不思議なくらいです。
タイトルは「日はまた昇る、ぬるぬると」でどうだろうか?
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くるまにポピーさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)
Q: パンツとパンティの違いってなんでしょう?かつて同級生(クレヨンしんちゃんがそのまま成人したようなアホ男子)に訊かれた質問です。私は彼のおばかな質問には大方答えていたのですが、このときばかりは絶句してしまいました。そのとき私に言えたのは「女性は、“パンティ”という単語をほとんど使わない。」ということだけでした。
いい質問です。クレヨンしんちゃんがそのまま成人したようなアホ男子、というのがまたいいですよね。本来誰のものでもないはずの島が誰のものだとか、過ぎ去った日々を蒸し返してあったとかなかったとかで喧々諤々するより、どうせならこういうことを真剣に考えたいとつくづくおもいます。おい、みんなこっち来いよ!そんなことよりパンツについて考えようぜ!と拡声器で盛大に呼びかけたい。
それはまあそれとして、まず最初にひとつ言えそうなのは、男性もパンティという単語をほとんど使わない、ということです。というかそもそも、いかに男性と言えどパンツについて意見を交わし合う機会はそんなにありません。ネット上なら24時間365日その話でもちきりのハートウォーミングな集いもあるでしょうが、日常生活においてはやはりそれほど一般的なトピックでもないのです。
僕の場合はかつて身を粉にして働いていた職場に無類のパンツ好きがいたので、その手の話題はわりと頻繁に持ち出されました。目をキラキラさせながらさわやかな笑顔で「いいよな!」と言われると、こっちもつい笑顔で「いいっすよね!」と返したものです。10年もたてば他のもろもろより却ってそんな思い出ばかりが真っ先によみがえります。そういえば「パンツには夢がある」というような話をした記憶がある。マーティン・ルーサー・キングばりに言い換えるなら "Pants have a dream." ということになりましょう。
しかしそんな特殊な状況下に身を置いていた僕らでさえ、やはりパンティとは呼んでいなかった気がします。パンツの3文字が老若男女を問わず、それさえあれば事足りるマスターキーのような言葉であるのに比べると、パンティはそれほどのマジョリティを獲得してはいません。もちろんその意味するところがひどく限定的なせいもあります。ただそれを差し引いてもあまり発音されない単語であることは先の例からも明らかです。そりゃそうだろうの一言で済ませてしまいたい気もするけれど、しかしそうなると解せない点がひとつあります。誰に聞いてもその意味が通じる高い認知度です。ほとんど誰も口にしないような単語を、なぜ大多数の人が知っているのか?
考えられる理由はひとつしかありません。パンツが口語であるのに対し、パンティは文語だからです。なかには素材や意匠がちがうんだ!と言い張る向きもありそうだけど(そしてたぶんここにはかなり具体的なイメージがある)、昭和ならいざ知らず平成においてはまずこの点に尽きると言って差し支えありますまい。
またそれとは別に、なぜだかわからないけれども、パンティには何となくむずむずしていたたまれなくなるような、あるいはこう言ってよければギクリとさせられるような語感があります。下穿きという意味ではパンツとちっとも変わらないのに、語尾を変えたとたんイヤンでウフンなムードがそこはかとなく漂い始めるのです。セクシーというよりはエロスに傾きがあるように感じられるし、デリケートな領域を保護する本来の機能よりも「秘密を隠し持っている、あるいはそれ自体がひとつの秘密である」ことに重点が移されているようにも見受けられます。すくなくとも僕と同じ世代なら概ね頷いてもらえるんじゃないかとおもうけど、言葉の持つイメージがなんというか、全体に男性視点なんですよね。僕が女性でもやっぱり憚るだろうなとおもう。
しかしパンティって今も変わらずどの世代にも通じる単語なんだろうか?通じるとしたらいったい誰がどうやって語り継いでるんだ?
A: 口語と文語の違いです。
ちなみに英国ではパンティを "knickers" と言うそうですよ。なんかかっこいい!
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その153につづく!
蛇を見ていると不気味な気持ちと共にエロティックな気持ちを得ます。
返信削除「パンティー」という言葉をみると私の世代だと、あの、ドラゴンボールの豚のキャラクターが連呼していた記憶が御座います。
ちょー分かりやすい御回答、ありがとうございます!
返信削除そういえば、当時の副担任は「例の豚のキャラクターが好きなのがパンティーで、それ以外がパンツだ」と主張していました。
ドラゴンボールを知らない私にはチンプンカンプンでした。
素材や意匠については件の同級生とも話し合いましたが、
「ナイロンのは全部パンティーでよくない?」
「フリルの有無はどうなるんだ。」
「フリル付いててもパンツにしか見えないのもあるよ。」
という具合で、埒があかなかったのです。
もしパンティーに付随する「イヤンでウフンなムード」が、どうしても理解できない方がいるならば、参考資料としてタモリ倶楽部のオープニングを見せれば事足りるよな、と最近思ってます。
口語と文語という分け方に、こんなに納得したのは久々だというくらい納得しました。
返信削除でも僕はパンツが嫌いです。邪魔なので…。
そういえば、パンチラというものに、生まれてこのかた出会したことがない。
まさかPantiesを辞書でひくはめになるとは。。
返信削除> ケイジローさん
返信削除お茶の名前をした彼ですよね。富永一郎画伯なんかは実際に連呼してたような気もするんですけど…
> くるまにポピーさん
タモリ倶楽部のオープニングは僕も思い浮かべてました。あれもひとつの典型例ですよね、たしかに。時代性からしても。
> 赤舌さん
「パンツが嫌いです。邪魔なので…」に腹を抱えました。パンチラって興味ないとホント出くわさないらしいですよ。
> mioさん
そんなmioさんが好きです。僕は。