2010年12月25日土曜日

安田タイル工業のホワイトクリスマス2010




世界に向けて遠吠えを!

あるかなきかの零細企業、あの安田タイル工業の慰安旅行が数年ぶりに帰ってきた!

2008年5月以来となる今回は、ひとり1万円でなるべく遠くまで行き、かつ宿泊して帰ってくるというたいへん羽振りのよい旅行に専務と社員、総勢2名の大所帯でくりだします。

ローカル線の終点に行きたい、というタカツキ専務の意向によって白羽の矢が立てられたのは、群馬県は信越本線の端っこにある横川駅です。厳密に言うと終点ではないのだけれど、線路がそこで途切れているのはたしかだし、何より横川といえば駅弁「峠の釜めし」発祥の地として全国的に名の知れた駅でもあるので、期せずして目的ができたと満場一致で可決されたのです。よし、峠の釜めしを食べにいこう!


ただし、他に選択肢がなかったという絶望的な理由で、出発は12月24日の朝です。365日のうち、男ふたりで1泊するならこの日だけはなんとしても避けたいと誰もがおそれ、ことによると心がポキンと折れかねない危険な日取りだけれども、こればっかりはどうにもできません。この日しかないとなったらそれはもう、矢が降ろうと火の粉が舞おうとこの日しかないのです。メリークリスマス!


待ち合わせ場所に向かう途中の新宿駅構内



これからそれを食べにいこうというのに、集合する前からいきなり旅の目的を失う安田タイル工業


今しがた目にした重大な事実からは目をそらし、何ごともなかったかのように出発です。旅の予算としてひとり1万円の入った封筒が手わたされます。費用はすべて、ここからまかなわなくてはいけません。


新宿駅→横川駅 2,210円×2 残金15,580円(2人分)


乗りました。


着きました。


食べました。

峠の釜めし 900円 + 玄米弁当 500円 残金14,180円(2人分)


目的を果たしたあとはこれといってすることもないので、道すがら目にした柚子や金柑や柘榴を電光石火で口の中へと放りこみ、河原に降り立つカワセミを愛で、猛ダッシュで逃げるサルを追い、コウモリの変な鳴き声に驚きながら、地図もないままてくてくとあたりをうろついて回ります。


「む、あのカッコいい山は何だ」
「あれは妙義山です、専務」
「なんてカッコいいんだ。近くまでいこう」

道中見かけた看板(宿泊するのはここではありません)



(何の関係もないニューヨークを持ち出してきたばかりか、わざわざ和訳してあることに立腹して罵倒し始める安田タイル工業の面々)


山の中腹にある妙義神社



「おや、登山道入り口がある」
「いま15時半ですから、これから登ると下山は不可能です」
「うむ…」
「その証拠に僕ら以外誰も見当たりません」
「誰もいないな」
「夜は氷点下になるので野宿は死を意味します」
「うむ、死だ」
「でも登りましょう」
「登ろう」

装備と呼べる装備はほぼ皆無にかかわらず、何のためらいもなく上級者コースを行こうとする安田タイル工業(専務にいたっては家からここまでパーフェクトに手ぶらで来ています)


上級者コースは傾斜が急すぎるため、あちこちに鉄の鎖が打ちつけられているのです。

「専務」
「何だ」
「ちらほら降ってくるこの白いものは何ですか」
ケセランパサランだろう」
「専務は物知りだなあ」


この鎖を登ると




この状況からするとあんまり信じたくないので必死に現実から目を背けていたのだけれど、残念ながらここまで来てとうとう、さっきからちらほらしていた白いものが雪であると認めざるを得なくなりました。しかもみるみるうちに吹雪いてきて人生のカラータイマーがピコンピコンと点滅を始めています。果たしてぶじ下山できるのか、頼んでもいないホワイトクリスマスに文字どおり凍りつく安田タイル工業の面々。

(お忘れかもしれませんが、この日はクリスマスイブです)

それではここで、ふりしきる雪のなかタカツキ専務が世界に向けて放つ渾身の遠吠えをご覧ください。



このあと逃げるようにして山を降りたらいつの間にか雪もやんでいたので、ホッとして神社近くの道の駅に立ち寄り、おいしいおやつを買いました。

おやき(3個入) 130円 残金14,050円(2人分)

とは言うものの、この時点ですでに日はとっぷりと暮れており、道の駅の従業員にも「この時間になるとバスはありません」と気の毒そうに言われてしまったため、しかたなく街灯すらない真っ暗な山奥の国道を麓の駅に向かって約5キロ、ひたすらてくてく歩きつづけることになります。

松井田駅→北高崎駅(宿の最寄り駅) 400円×2
寒すぎて飲んだ缶コーヒーと缶スープ 120×2 残金13,010円

北高崎から宿に向かうとちゅうのマクドナルドでビッグマック 200円×2 残金12,610円(2人分)


 *


ようやくたどり着いたこの日の宿もまた、驚異的なコストパフォーマンスを誇るハイライトのひとつと言えましょう。何しろコーヒー飲み放題、天然温泉付き、朝食付きでひとり2,400円です。なぜそんなに安いのかというと


シングルベッドがひとつしかない、いかにもクリスマスのために設定されたカップル専用直球プランだからです


宿泊代 2,400円×2 残金7,810円(2人分)


しかし安田タイル工業の社員はみな恋人同士のように仲が良いので、そんなことは気にしません。温泉までついてそれ以上何を望むというのだ。

さっそくフロントに赴いて温泉のことを聞くと、地図を指で指しながら「こちらの国道を南にまっすぐですね、お車で10分ほど…」



車で10分?



隣接しているとばかり思いこんでいた温泉は2駅先、およそ5キロ南にあることが判明、徒歩なんですとは言えずに平静を装いながら「ありがとう」と礼を述べてホテルを後にする安田タイル工業の面々。15キロ以上歩いてヘトヘトにも関わらず、風呂のためにさらに5キロの道のりを歩く羽目になるとは誰に予想できたでしょう。(節約のため、おいそれと電車にのることもできないのです)


でもさすがに帰りは電車にのりました。

夕食(屋台のラーメン) 900円+870円
電車賃 140円×2
缶ビール2本、ワイン、肴3種 950円 残金4,810円(2人分)


このあとのことはあんまりおぼえていないのです。


クリスマス当日の朝、ホテルの部屋からみた景色


この日はとくにハイライトもないので、電車にのって下車せずにひたすら遠回りをして帰りました。(もうこのへんで書くのがいいかげんめんどくさくなっています)

群馬に行ったはずなのに、帰りの車窓から千葉にあるディズニーランドを眺めているのはなぜなのか…


立ち食いそば(昼食) 480円×2 
菓子パン(おやつ) 70円 残金3,780円(2人分)

高崎駅→新宿駅 1,890円×2 残金0円(2人分)

歩いた距離 約25km


そして新宿着


♪パ〜パラララ〜(エンディングテーマ)


飽くなき探究心と情熱を胸に、安田タイル工業は今後も逆風に向かって力強く邁進してまいります。ご期待ください。


安田タイル工業プレゼンツ「聖夜の正しい過ごしかた」 終わり

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