2009年9月18日金曜日

人生におけるアウト・オブ・バウンズ



1年くらい前の話ですけども

どういうわけか球をうまくフェアウェイにのせることができず、いまや人生のラウンドにおいて堂々たるOB(out of bounds)が確定している僕にとって、その建物はいささか敷居が高すぎるのです。「たまにはメシでも食いにこい」とめずらしく父親が誘うので足を運びはしたけれど、だからといっていつでもTシャツにジーンズで「こんちは」と気楽に顔を出せるような場所ではない。

でも会食におもむいたその日、いちばん印象にのこっているのは、じぶんと不釣り合いなその空間や、そわそわしてなんだか落ち着かない会食それ自体ではなく、むしろそのあと、つつがなく終えてホッと手洗いに寄ったときの一幕……扉をあけると、ホロ酔いで気持ちよさそうな顔をした初老の男性が、明らかに不自然な体勢で用を足していたのです。本来の位置からすると僕は正面にその人の横顔を目にするはずなのに、顔どころか体までがなぜか僕のほうを向いている。体をひねっているというか、ねじっているようにみえるわけですね。何もそんなおもしろい格好で用を足さなくたっていいとおもうけど、それまでの緊張がいっぺんにとけて、微笑ましいきもちになりました。整った身なりに品格もあるひとりの紳士がこれだけくつろいでいるのに、僕ときたらいったい何をそんなナキウサギみたいにびくびくしていたんだろう?気楽にやれよダイゴくん、緩急自在にふるまうこの大らかな紳士を見習ったらどうだ!


とおもったらあとから父親が入ってきて言うのです。「あ、支配人。ちょうどよかった、これウチの息子。DVD出してんだ


それまでの和やかな心持ちを一撃で粉砕するあまりにも率直なこの発言に対して、僕はどう向き合うべきか?

何しろそのとき、支配人と呼ばれた紳士はまだ用を足している途中だったのだ。自己紹介においてこれほど奇妙なシチュエーションが他にあるだろうか?これがコントの一場面でないとするなら何だ?だいたいそんな状況を気にもせずに「やあこんちは」と笑顔で返すこのユニークな紳士がまさかそんな


ここではっきりさせておくべき事実は3つです。

1. 支配人はたいへんな好人物である。
2. 僕はDVDなんか出していない。
3. 父親もまた対外的には気さくな男である。


 *


それでまあ、どうしてこんな話をとつぜんしたかというと、昨日おこなわれた元スーパーアイドルによる歴史的記者会見の会場がまさにこの建物だったからです。まったく人生にはいろいろな交錯があるものだとおもう。もちろんアウト・オブ・バウンズにも…いろいろある。

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