2009年5月13日水曜日

彼、あるいはスマートボールの行く末 その2





カタン
ジャラジャラジャラ

「やった!15点入った!」

ポカリ

「痛い。あれ?」
「何をやっとるんだキミは」
「博士!」
「2週間もブログをほったらかしてパチンコとはいい身分だな」
「パチンコじゃないですよ!」
「どう見てもパチンコじゃないか」
「ちがうってば!よく見てよ」




「このガキんちょが何だ」
「まちがえた!」




「ホラ。ね?」
「どうみてもパチンコじゃないか」
スマートボールですよ!」
「何に見える、ピス田?」
「パチンコです」
「この宿六ども!あのですね…」
「やどろく?」
「よくみてよ!ビー玉でしょ」
「そう見えなくもないきらいもなきにしもあらずだな」
「これをこう…はじくんですよ、ピコンて」

ピコン

コン
コン
ポコ

「…でこうやって点数の書かれた穴に入ると…」

ジャラジャラジャラ

「なぜかガラス板の上に点数分のビー玉が払い出されるんです」



「それだけか?」
「それだけですよ」
「それを延々とくりかえすだけ?」
「それを延々とくりかえすだけです」
「景品の交換もなし?」
「ないですね」
いったい何がたのしいんだ!
今の僕にとってこれ以上の娯楽はないんです!
「馬鹿げとる!」
「これ、何回か当たるだけで盤がビー玉で見えなくなっちゃうね」
「隣の人はほとんどビー玉で埋まって見えなくなってました」
「見えなくなったらどうするの?」
「見えないまま続行です」
いったい何がたのしいんだ!
「どのみちじぶんの意志で入れることはできないんだから同じことですよ」
「常人の理解をこえとる」
「博士に言われたくないです」
「こんなことに延々と2週間も…」
「500円あれば半日つぶせますよ」
「それにしたって他にもっとできることがありそうなものだ」
「ここは21世紀の東京に残された唯一のスマートボール専門店なんです」
「だからなんだ?」
「いま使ってるのは青いビー玉だけど、ホントは白いんです」
「…」
「白い玉をつくってた工場もすでにないし、なくしたら最後二度と手に入らないから、ビー玉で代用してるんです」
「…」
「この店じたいがシーラカンスみたいなものなんですよ!」
「だからなんだ!」
いっぱい遊ばなくてどうするんですか!
「うまいこと使命感と大義にすりかえたな」
「僕らにはスマートボールを文化として存続させる義務があるはずです」
スマートボール文化を支える前に、自分の存続を気にかけたらどうだ
「僕らはそれを忠告に来たんだよ、ダイゴくん」
「ご心配いたみいります」
「で、どうなのダイゴくん」
「何がですピス田さん?」
「アルバムだよ、進んでるの?」
「はるばる?」
「アルバムだってば」
「ああ、アレね、そりゃあ、す…」
「す?」
「進んでますとも!進みすぎちゃってもう…」
「…」
「今や空の彼方です」
「お星さまになってるじゃないか!」
「だからいまUターンしてるとこです」
「いっそそのまま宇宙の塵になってしまえ」
「いやはや、先を行き過ぎるのも考えものですよ」
「口先だけは大物だな」
「まあみててください」
「…」
「この『連勝』って穴に入れば一気に勝ち越しですよ」
「…」
「それいけ!」
「それでいいならもういいけどね、べつに」

ポコン
ジャラジャラジャラ

「ホラ!みてみて!やった!痛ッちょっといたた」
「…」
「ちょっビー玉投げないで!お店の人に…あッすみませんすみません」


 *


カァ! カァ!


「カラスか…」
「きっぷのいい鳴きっぷりですね」
「天丼食って帰ろう」
「そうしましょう」
「しかしここまでひどいとはおもわなかったな」
「どう見ても負け犬なのに、なんであんなに楽しそうなんでしょうね」
「本人にとっちゃ負けに気づかないのも勝ちのひとつさ」
「同情すべきですかね?」
「とっととくたばりゃいいんだ、あんなの」

 

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