やぶからぼうに何ですが、創元社「やさしく知りたい先端科学シリーズ」のカバーデザインとイラストを昨年から担当させてもらっているのです。
なぜそんな大事なことをこれまでここで触れてこなかったかといえばもちろん、うっかりしていたからとかそういうさもありなんな理由ではなく、いえそういう側面が絶対にないとはたしかに自信を持って言い切れない、というかだいたいいつもそうじゃないかと言われればまったくもってそのとおりで返す言葉もないですが、ともあれそのシリーズ3作目となる「シンギュラリティ」がこのたび11月14日にめでたく上梓の運びと相成りました。
「シンギュラリティ(技術的特異点)」とは、人工知能の驚異的な発達によって人類がその手綱を捌けなくなり、文明の発展を担う主体が人類から人工知能に取って代わられる、そのタイミングのことを言います。具体的には2045年ごろがひとつの境目になると考えられているようです。
本書では世界がシンギュラリティに至るまでの道筋と、その結果もたらされると考えられる未来の在り方についてとてもわかりやすく解きほぐしてくれています。そしてまた、全世界に数百億もの熱狂的なファンを持つ、あるいはそうだったらいいなと夢見ている安田タイル工業の専務と主任が、音もなくひっそりと全国流通デビューを果たしています。
箸でつままれた餃子らしき物体も含めて、ここにあるのはかつてたしかに描かれ、今も根気よく探せばみつかるものばかりですが、言ってみればなくても大勢に影響はない刺身のつまみたいなものであり、多くを語ることでもありません。なんといってもこれはシンギュラリティという高度な概念からわたしたちヒューマンビーイングがこの先どうあるべきかを改めて考えさせられる人類必携にして必読の一冊であって、安田がどうとかタイルがどうとか、そんなちまちまとした些細なことはきれいさっぱり脇にうっちゃり、ご一読をおすすめする次第です。
さらに世界への理解を深めてくれるシリーズ1作目「ベイズ統計学」、2作目「ディープラーニング」もよろしくおねがいします。